【第8セクション】
(M:マモル、A:明、Q:クア)
・・・
M「ねぇ。兄貴」
A「な。何だ」
M「今さ。LANケーブルの話…でたじゃん?」
A「あぁ…でたというか…お前がしたんだろう?」
M「…俺。急に、今までの話とはまったく別の解釈の異世界を思いついちゃった」
A「何?…い、言ってみろ!」
M「えぇ~。だって、マモルのくせに…とかまた言うんでしょ?」
A「…かもしれん。が、お前の説が間違っていなければ、俺は研究者としての誇りに誓って、お前の説を尊重しよう」
M「本当だね?」
A「あぁ。というか、純粋に研究者としての興味で、別の説があるなら聞いてみたい」
Q「私も聞いてみたいですわん」
M「じゃぁ…。あのね。実は、まったく今までの兄貴の説明と違うってわけでもなくて…それも一つのヒントになっているんだけれど…。さっき次元とか異次元の話したよね?」
A「あぁ。したな」
M「それによると…次元っていうのは、別に物理的な長さとか大きさとか、そいう位置情報を基本とするような数値に限定されなくて、色々な性質のものが…数値で表せれば次元の要素となりうる…ってことで…いいよね?」
A「そうだな。それで?」
M「で、思い出したんだけどさ。例えば、温度とか圧力とか、風というか粒子の流れの方向…ベクトル…だったけ?…そういうのをコンピュータのプログラミングの学習の時に、グラフに表示するっていう課題があったんだよ」
A「あぁ…なるほど」
・・・
M「さすが兄貴。もう分かっちゃったんだね」
A「うん。つまりマモルは、さっきの1次元には色々ある…っていう話を視覚化して表現できるってことに気が付いたんだな」
M「そう。温度って、本当なら絵に描くことができるようなものじゃないでしょ?」
A「あぁ。だが、その数値を…例えば時間を横軸、温度を縦軸などにとってグラフを作成することで視覚化できるな。一定の時間ごとに一定の温度が上昇すれば…直線の出来上がりだ。温度という1次元世界を直線という位置を表す1次元世界に変換することができたってワケだ」
M「うん。でも、それだけじゃ、兄貴の説明を言い換えただけだから、別の説明なんて言わないよ」
A「そうだな。…ということは、その先があるんだな?」
M「うん。そこから、コンピュータ上のグラフだとかそういうのを、ずっと想像していくとさ…天気予報とかスーパーコンピュータでやったりするってのあるでしょ?」
A「なるほど…シミュレーションか…」
M「そう…あれって、ある意味、現実の世界の様々な要素を、数値化してコンピュータに入力してやって…あるいみ、もう一つの地球を理論的に生み出して…そこで未来の姿をリアルに予測しよう…ってことでしょ?」
A「うむ。今の技術では、まだまだリアル…には届かないようだが…技術が進めば…ほぼ現象をコンピュータの内部で完璧に再現できるようになるかもしれないな」
M「それって…ある意味…世界だよね?」
A「う…うむ…」
・・・
M「あ。そうだ。そうだよ。兄貴はやらないかもしれないけど…コンピュータのゲームとかで、文字通りシミュレーションのゲームもあるけど…ロールプレイングゲームとか、SNS上のアバターだとか…そういうのって、現実の世界ではないけれど…もはや…一つの世界だって言えるんじゃないのかな?」
A「…ふむ。なるほど。今のレベルのRPGやSNSを想像して理解したら駄目なんだっていうことだな?…未来の………なるほど」
M「ね?」
A「そうか。色々な情報、属性、その他を数値で表現できれば…そして、今までの議論と同様に、そこに住む住人のコトを考えれば………そこは、もはや世界だな」
M「でしょ!」
A「あぁ。失念していたが…そういうのを題材にした映画やアニメ…SF小説…様々な作品があるが…俺は、それらを見たり読んだりするときに、もっと稚拙な…いかにもな作りの偽の世界をイメージしていたが………天気予報の未来…天候予測…天候予知…そのレベルにまで作り込まれた気象を忠実に再現できるシミュレータの中に…リアルな海、リアルな大地、リアルな木々…そういうものを、付け足していけば…それは…もうちゃちなゲームの印象を越えて…世界そのもののシミュレータになるな」
M「違うよ。兄貴…。完全に忠実に世界を表現できるなら…それは、そこに住む住人にとっては…兄貴の言う思考実験の答えとしては…『世界』そのもののハズだよ!」
A「・・・」
M「あ。兄貴が固まった」
Q「私も、さっぱりすっぱり、理解できませんですわん。『こんぴゅうた』って何ですにゃん?」
M「あ。そうか。クアたちの世界には無いんだね。コンピュータ。あとで、見せてあげるよ」
Q「わあい。楽しみですにゃん!」
・・・
A「…なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど。なるほど」
M「わぁ…。兄貴がなんか壊れたっぽい!」
A「安心しろ。壊れてはいない」
M「…だ。大丈夫?」
A「あぁ。こ。今回は、お前の勝ちだ。マモル」
M「え?勝ち負けなんてあったの?」
A「何でもいい。俺の中では、お前の評価が急上昇中だということだけ喜んでおけ」
M「あ。ありがとう」
A「確かに、その考え方なら…同時に、幾つもの世界が存在できるし…場合によっては、異なる世界間を行き来することもできる」
M「うん」
A「しかも…」
M「しかも?」
A「悔しいことに…異世界同士が…似通っている理由まで説明できてしまう」
M「え?」
A「俺も親父も、それが最大の疑問だったのだ」
M「親父も?」
A「あぁ。クアさんたちが来た日の夜。親父と俺の話の中に出てきたろう?…親父の異世界人に関する論文さ」
M「あぁ」
・・・
A「俺の考えていた異世界論では、異世界同士は、基本的に互いになんら関係を持たない…だからこその異世界だったんだが…何ら関係がないなら…物理法則は別として…そこに住む人間や言語、呼吸する空気、飲む水、口にする食事…そういったものが…同じだったり似通ったりする必要は何も無いんだ。…だって異世界なんだから…」
M「う。うん。でも、同じでも良いんじゃ無い?」
A「あぁ。それでも良い…が。何故?と考えてしまうのが研究者だ。同じでも良いが、同じである必要はない。なのに何故同じなのか?」
M「う…ん。そうだね」
A「実は、俺は、クアさんちの世界と、こちらの世界の時間の流れる速度だって、異なっていてもおかしくないと考えていた」
M「今は、そうは考えていないの?」
A「あぁ。お前やクアさんの話を総合して考察すると、黒服の暗殺集団やナヴィンがコチラとアチラを行き来するにあたり、時間的な矛盾が生じていないように思われる」
M「す。凄いね兄貴。そんな考察していたんだ」
A「凄くはない。研究者とはそういう生き物だ」
・・・
【第9セクションへ…】へ続きます。
※この作品は一気に書き上げる予定ですので、次の投稿は30分から1時間後です。