【第7セクション】
(M:マモル、A:明、Q:クア)
・・・
M「兄貴。ごめん。もう、何言ってるのかわかんない」
A「だから。俺たちの世界は、俺たちがその世界の住人として主観的認識に基づいて観測し、行動しているからこそ、世界として存在し認識されているのだ…ってことだよ」
M「むぅ。もう哲学的すぎて分かんないよ」
A「まぁ。いい。とにかく。並行な世界かもしれないが、そうで無いかもしれない…と言っているんだ。2つの世界で行き来が可能である以上は、そこに何か理由があると」
M「ふむ。じゃぁ並行じゃないってこと?」
A「そうだ」
M「えぇぇぇぇぇぇええええ!?…適当に言ったら正解しちゃった!?」
A「いちいちオーバーなリアクションするな。疲れるだけだぞ?…だが、もし二つの線が交差していたら。その一点においては、どちらの次元に存在しているのか…定義が曖昧になる」
M「あ。あぁ…親父やナヴィンが言っていた、二つの世界の境が曖昧になるって…そういうことだったのか?」
A「どうだろうな。しかし、交差しているその位置は、Aという直線世界にも、Bという直線世界にも存在する場所となり…Aでの位置を表す数字と、Bでの位置を表す数字は…まったく別の数字でありながら…より高位の次元の存在から見れば同じ位置を指し示すという状態だ。これなら、超越的な誰かが、指でつまんで動かす…とかいう意図的な移動を考えなくても良くなる」
・・・
M「でも…それだと、1回しか移動できないね?」
A「それは、その直線の上を時間的に一方向にしか進めないケースだろう?」
M「あ。そうか、自由にどっち方向にも移動できるなら…なんどでも可能か…」
A「しかし、同じ位置でしか移動できない」
M「…どうも、俺たちの世界を直線に喩えた時に、時間の流れを想像しちゃうから1回しか移動できないってイメージになっちゃうんだよね」
A「あぁ。まぁ…時間の流れと考えた方が自然かもしれないな。そうでなければ、その地点は常に異世界と繋がっているってことになって、もはや異世界とは呼べない、いつでも行ける場所になっちゃう気がするもんな?」
M「でしょ?…だと、その場合は、さっきも言ったけど1回しか移動できない…」
A「直線が2本しかないのならばな」
M「え?」
A「3本以上がそれぞれ、異なる点で交わっていればどうだ?
M「むむむ。過去と未来と昨日と今日を行ったり来たりできちゃうってこと?」
A「だから…その想像は3つや4つがぐるっと輪になるように並んだときだろう?」
M「う。うん」
A「お前の中の時間が進むっていう感覚はそういうイメージなのか?」
M「そうか。時間の流れを直線でイメージするなら、ある程度方向は、同じ方向に流れてないとおかしいか」
・・・
A「あぁ。時間に対して方向…と表現するのもおかしいが…。しかし、敢えて方向と表現するならば、少なくとも過去や未来に自由に行けるような方向に交わっていたらおかしいだろ?…そんな世界との交差は、即ち我々の世界の物理法則に全くもって抵触する。下手をすると死人がぞろぞろと生き返ってくるぞ。…まぁ、本当に生き返るなら…もはやホラーやスプラッターな感じではないだろうがな」
M「じゃぁ…編み目のような感じで絡みあっているようなケースを想像すればいいの?」
A「そうだな。それならアミダくじの斜め線バージョンみたいなイメージで、時間の進行があっても、時々、行き来できたり出来なかったりするだろ?」
M「なるほど」
A「もちろん。直線と表現したが、その世界に住む人間からみて直線の性質しかなければ、より高位の次元から眺めた時に曲がっていたり捻れていたりしても問題はないから…2つの世界が紙縒りのように絡み逢っていても良いんだがな」
M「あぁ。LANケーブルのツイストペア…とか、そんな感じだね」
・・・
A「ちっ。マモルのくせに、より近代的な喩えで返しやがって。まぁ、そういうことだ。ヨリ線のように捻られながらも寄り添って伸びている2本の線を思い浮かべると、何度も何度も近づいたり離れたりを繰り返しているイメージが湧くだろうな」
Q「では…『異界送り』という術式は…いったい何なんでしょう?」
A「…う。だ、だからジッと見つめるな。というか『わん』やら『にゃん』はどうした?…ま、真面目に見つめるなと言っているだろう…」
Q「申し訳ありません。お二人の真面目な議論を茶化してはいけないと…」
A「い。いいから。君は…『わん』『にゃん』キャラで通しなさい」
Q「わかりましたわん!」
A「そ、それでいい。…『異界送り』か。…マモルの喩えを借りれば、ツイストペアケーブルの一本一本の結線には線と線を隔てる絶縁の為の皮膜がかぶせてある。皮膜があると、線を流れる電子は、別の線へは移れない。…しかし、何らかの力が働けば…皮膜を飛び越えて別の線へと移ることができる…多少…量子論的な…トンネル効果的な現象が説明として必要になるかもしれないな…」
Q「ちんぷんかんぷんですにゃん」
A「…勘弁してくれ…」
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※この作品は一気に書き上げる予定ですので、次の投稿は30分から1時間後です。