【第6セクション】
(M:マモル、A:明、Q:クア)
・・・
A「そう。それ。分かってきたようだな。マモルくん。兄は嬉しいぞ」
M「ふぅ。でも、凄く疲れるんだけど…この議論」
A「それは、俺も一緒だ。口にするんじゃ無い。余計に疲れてくるから」
M「…ということは」
A「同様に、温度だけを要素とする世界。熱いとか冷たいとか…って表現すると、それを感じるための生物の存在が前提となるが…まぁ、温度が高いか低いか…ってことだ。そういう世界でも、比較すべき他の感覚がないんだから、温度の上がり下がりを位置の移動と同じように受け止めたとしても何らおかしさは無い」
M「ふぅん。ということは…何次元か…というのは…『状態』を特定するために必要な『数値』の個数…って考えればいいのかな?」
A「まぁ。そうだな。俺もそろそろ、かなり疲労してきたし、それで正解ということにしてやろう」
M「偉そうに!」
A「偉いんだからしょうが無いだろう?…お前は何を怒っている?」
M「くっ…兄貴や親父のそういう反応が苦手だ…」
A「さぁ。異次元に話しを戻そう」
M「あぅ」
A「今までの思考実験からわかるように、一口に1次元といっても、その1次元が、どんな要素によって表現されるかによって、その世界は全く異なる。…が、そこの住人にとっては違いを区別できない」
M「うん。ということなんだね。それが、異次元って感じでいいのかな?」
A「…いいんだが…さて、ところで、仮に要素が同じでも…異次元といえるケースは存在する」
・・・
M「あん。せっかく理解しかけているのに…また別のケース?」
A「まぁ。こっちの方が簡単に理解できるケースだから黙って聴けよ」
M「はぃ。どうぞ」
A「並行して走る2本の直線を考えてみよう」
M「おぉ。平行線だな。確かに、今までよりはずっと想像しやすい」
A「ここで、何処まで続いているんだろう?…とか考えてはいけない」
M「あぁぁあぁあ…考えていなかったのに…考えそうになっちゃう…駄目だ…眠れなくなるぅぅうぅぅ…」
A「駄目だぞマモル!…どこまで続く…とかを考えたら『無限』…という、さらに難解な概念を持ち出さなければならなくなるから…持ちこたえろ!ガンバレ!…負けるな!マモル!」
M「………………うぅぅうう。はぁ…も、持ちこたえました…」
A「よし。でかしたぞ。さぁ、純粋に2本の平行線を思い浮かべるんだ。さて、その片方の『線』の住人は、もう片方の『線』のことを知ることができるだろうか?」
M「???…だって、2本、並行に線を描ける時点で、もう1次元の世界じゃなくて2次元の世界じゃん?」
A「この馬鹿ちんがぁ~~~~。そこで、2次元のことを考えるんじゃない。それは、1次元世界の住人にとっては伺い知りようのないコトなんだから」
M「うぅぅ。そもそも3次元空間に住む俺が想像するんだから…難しいんだよぉ」
A「弱音を吐くな。思考実験の道は遠く険しいのだ!」
M「な、なんか変な道を究めさせられようとしている?」
・・・
A「とにかく、2つの世界は、同一の平面つまり2次元空間世界にある。それは、それで認めよう。だが、しかし…それぞれの1次元世界は、平行して並んでいて、決して交わることがない…」
M「あ。そうか。そうすると…お互いに、全く同じ性質をもった世界として存在していたとしても…お互いの存在を知ることができない…ってこと?」
A「そのとおり!…2次元以上の世界からは、それぞれの1次元世界を覗き見ることができるし、その2つの世界を同時に並べて見ることもできる…しかし…1次元世界の住人には2つの性質が同じであるハズの1次元世界の間は、どうやっても行き来できない!…ということなんだが…わかるか?」
M「むむ…何となく」
Q「…ふんふん。少しだけれど、線の話の方ならわかるですにゃん」
A「あ。起きたのか」
Q「はい。おはようございますにゃん」
A「…く。い、今は、朝じゃない…」
M「あは。兄貴の弱点…めっけ!」
A「マモル…うるさい」
Q「つまり、お兄様は、私たちの住む世界と、お兄様たちの住むこの世界は、似たような性質を持つっているけれど…自分たちより、より高位の次元にすむ住人から見ると並行して並んでいて…お互いに自由に行き来できないような関係にある…って、そう仰られるわけですのにゃん?」
A「…うぅ。せ、正解…だと…言ってやりたいが…70点だ」
M「お。兄貴は偉いな。色ボケで贔屓とかしないんだ」
A「だ。誰が色ボケだ。変な勘違い発言をするなよマモル」
・・・
M「でも…俺も、クアの解釈で正解だと思ったんだけど…違うの?」
A「い、いや。俺も正解かどうか…不正解かどうか…決めつけることは不可能なんだが…正解の可能性も…ゼロでは無いし…」
M「なんだよ。急にゴニョゴニョと歯切れが悪くなったね?」
A「…く。クアさん。申し訳ないが…その、キラキラした目で、俺を見つめて答えを待つのをやめていただけないでしょうか?…その…答えにくいので」
Q「わん?どうしてにゃん?」
M「うひひひひひ」
A「マモルうるさい。笑うな。ウザい」
Q「では、少し、伏せ目がちな…こんな感じはどうですにゃん?」
A「う…(そ、それは…それで…ありだな…じゃ…なかった。何考えてるんだ俺は?)…そ、それでOKです」
M「ぐへへへへへ」
A「マモルは、一度、きっちり泣かしてやった方がいいか!?」
M「すいません。答えを早く教えて下さい」
A「あぁ。まぁ、二つの世界が並行して存在する為に行き来できない…何ていうのは…俺が思考実験するまでもなく…『パラレルワールド』とか、まんま『平行宇宙論』とかって呼ばれて、SF小説やらファンタジーなんかのテーマとして使われているよな?」
M「あぁ………。さ、最初っから、この話にしてくれれば…分かりやすかったのに…。なんなんだろう…この回り道感…」
A「いや。ここまでの議論がなかったら…お前…タダの空想小説の読み過ぎな人の寝言っぽくなっちゃうだろ?」
M「………うん。確かに、いきなりパラレルワールドって言われたら、なんか騙されてるような気がしたかもしれない」
・・・
A「な。そうだろ。…でな、何で大正解…って言わないかっていうと…」
M「実際に、クアや姫様たちが、こっちの世界に来てるからだろ?」
A「……………………が。がぁん。ま、マモルのくせに気が付いていたのか!?」
M「マモルのくせに…って何度もうるさいな。俺だって考えてるっちゅうの!」
A「そうだ。俺は、俺等より高位の時空の存在はイメージしても、そこに俺たちを自由に移動させるような超越的な存在を想定するのは嫌いだ。誰かに意図的に動かされることがあり得るなんて…想像しただけで吐き気がする」
M「兄貴の神様嫌いは…筋金入りだね」
A「べ…別に神様が嫌いなわけじゃないぞ?…神様が俺たちを創った…とか言われるのが嫌なだけだ。何処か俺の知らないところで、俺とは全然関係なく超越的な行為をしてくれているだけなら…別に神様の存在をとやかくいう気はない」
M「へぇ。何だか…よくわかんないけど…そういうもんなのか」
A「だから、あくまでもクアさんやお姫さんたちの移動は、何らかの偶発的な現象で、しかし、それは世界のあり方として、そういう偶発的な現象が起こりやすい仕組みやら作りやらになっている…そう考えるべきだと…俺は思う」
M「ふうん。とっても主観の入り交じった世界観な気がするけど…まぁ、そういうものなのかねぇ?」
A「だから、主観の入り交じらない科学なんて無い…って言ってるだろう。それこそ、もし神様なんていう超越者がいたとしたら、俺たちの世界なんか見向きもしない…知覚されない…認識外の世界なのかもしれない。そういう超越者のいる世界で、さらに客観的に事象を捉えたら…俺たちの世界は…実は存在しない…のと同じ…なんていうのが正解になっちゃうかもしれないんだから」
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【第7セクションへ…】へ続きます。
※この作品は一気に書き上げる予定ですので、次の投稿は30分から1時間後です。