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【第3セクション】

(M:マモル、A:明、Q:クア)


・・・


A「まぁいい。…漫画について、一つ感じる疑問は…それが異世界であるとすると、しかし、その画の中には『動き』が無いということだ」

M「え?…それなら次のコマ、次のページ、次の巻…っていうように読んでいけばいいんだよ」

A「うん。まぁ…それが、漫画…という異次元の世界…つまり異世界の時間の流れ方…だと…そう認めてしまえば、それで良いのかもしれない」

M「おぉ。兄貴が妙に素直だ」

A「しかし………漫画が答え!…それでこの議論は終了…というのでは、ちょっともったいないから…それ以外の答えも考えてみよう。漫画に似ているが、ちゃんと動くものがあるが…わかるか?」

M「あ。アニメだね?」

A「あぁ。そうだ。アニメに限らず、フィルムに撮影された映画…まぁ、動画全般をもってして、それも異世界と考えられないこともない」

M「え?…でも、アニメはいいとして…動画全般っていうと、俺と兄貴の小さい頃を親父が撮影した記録ビデオ…とかも…異世界になっちゃうよ?」

A「あぁ。そうだな。それは異世界でなくて、あくまでもこの世界の記録だ」

M「???…それ、兄貴、言ってることが矛盾してない?」

A「マモル。この異世界についての議論には、多分に…その議論をしている人間の主観が入り込むのは仕方ないことなんだ」

M「主観が…って、それって、科学なの?…客観的でないのは、人によって答えが違っちゃうってことでしょ?…答えを共有できないじゃん。それじゃ」


・・・


A「うん。お前が同意しそうな説明としては、漫画やアニメは異世界。しかし、記録映像は異世界では無くて…この世界を映したものに過ぎない…と。こういう感じかな?」

M「う…うん。そうだね。そんな感じ」

A「しかし…SF映画や、訪れることが非常に困難な秘境の映像など…普段の生活では目にしないような…しかし、アニメではない…そういう実写映像と…アニメの違いは、何なんだろうな?」

M「うわ。また、難しいことを。俺に訊かないでよ。兄貴の浮かべた疑問なんだから」

A「では、こういう定義を考えてみよう。アニメと記録映像。その違いは、俺たちがアニメや映像を見ているその平面…窓というかスクリーン…それ以外の方法や場所でも、その同じ場所を、この目で見て、実際に訪れることが可能…かどうか…で区別する」

M「なるほど。秘境は、行くのは大変だけど…行くことは不可能じゃないね。漫画やアニメの中には…行けないかぁ………?」

A「何だ?…最後に疑問符を思い浮かべたようだが?」

M「いや。俺が、兄貴が登場する漫画やアニメを描いたら…どうなのかな?…って」

A「それは…俺が、俺自身がそこに行っているわけじゃないだろう?」

M「う~ん」

A「…わかった。否定はしないでおこう。漫画やアニメの世界に入った経験は俺には無いからな。ひょっとしたら、漫画やアニメの世界に行く…とは、そういう状態のことなのかもしれないしな。だが…」

M「そうじゃない…っていうケースも想像しよう?」

A「そうだ。想像じゃなくて、推考だがな。それにな。俺には他にも、アニメや漫画を異世界とは認めたくない理由がある」


・・・


M「あ」

A「…あの、お姫さんたちが我が家に来た時にも、親父との議論の中で言ったが…俺は、人類が何者かによって『創られた』…とする説が嫌いだ。その何者か…が神であったとしてもな。漫画やアニメは、人によって創ることが可能だ」

M「うん。覚えてる。でも…」

A「俺は、クアさんたちが誰かに都合のいいように創られた存在だとは思いたくない。そして、もし仮にクアさんたちが誰かに創られたのであれば…自分自身も誰かに創られたかもしれないという可能性が大きくなってしまう」

M「う~ん。もう主観の問題というか…哲学の問題に近いね」

A「科学と哲学は、完全には切り離せないぞ」

M「ぎ、ギブアップ」

A「まだ赦してはやらん。…続けるぞ。さて、話を少し科学よりに戻そう。『線』『平面』それに『空間』と…1次元、2次元、3次元という考えを進めてきたが…お前は4次元のところで行き詰まったな。それは何故だか分かるか?」

M「えっと。自分に…それ以上の体験が無いからです」

A「うん。そうだな。お前は、この空間についてを次元を考える上での視点としたから、自分が住んでいる実際の空間以上のことは思い浮かべられない…というわけだ」

M「ごめんなさい」

A「謝る必要はない。それも、また人間の主観の限界という意味では、主観の問題だとは思わないか?」

M「そうなの?」


・・・


A「例えばだ。1次元の世界にすむ生物…もとい…生物だと想像の邪魔になるな…1次元の世界に存在する意識…これを例に取って考えてみよう」

M「意識ね。…つまり体は無いってこと?」

A「そうだ。どうしても必要なら有ってもよいが…1次元の世界に存在できる体で無いといけない。…線の上に存在できるのは…その『線』以下の長さの『線』か…まぁ『点』だな」

M「なるほど。だから兄貴は生物だと想像の邪魔になると言ったんだね」

A「あぁ。お前の電車の例は、悪くはないが…しょせん、電車は3次元空間の話だ」

M「3次元空間…。俺は、やっぱり『空間』に縛られているのか…」

A「おっと。そうだ。この後の議論のために、先に『空間』を越える概念のことも教えておこう」

M「わかってるよ。『時空』だろ?」

A「むむ。マモルのくせに生意気な。なぜ、気が付いた?」

M「さっきアニメの話をしてるときに。『動く』ってことは…時間が進んで行くっていうことを考えないといけないもんね」

A「そうだな。話が早くて助かるぞ。では、さっきの1次元の世界は、それに時間の進行というもう一つの要素があると考えてくれ」

M「0次元っていうの?」

A「う~ん。俺はそれでも良いと思ったりもするんだが…一般的には0次元というのは、別の定義だな。『点』を指すという定義が多いかな?」


・・・


M「兄貴の思うのは『点』じゃないの?」

A「理論や数学の世界では、『点』には大きさが無く、『線』には幅が無く、『平面』には厚みが無い。じゃぁ、『空間』には何が無いんだろう?…とか考えると4次元を探す答えなのかもしれないが…時間の流れが無い?ぐらいの想像しかできないな。あぁ…話がそれたな。大きさの無い『点』。しかし…実際には、大きさが無かったら『点』じゃないだろう?どっちかというと、それは座標というか位置をあらわす抽象的な概念だな。…幅が無かったら線に見えないだろうし。厚みがければ透き通るのか?…まぁ…抽象的な概念をもってして『点』と名付けているのかもしれないが…」

M「難しいね」

A「そうだな。しかし、時間の扱いを4番目に持ってくるのかどうかというのは…俺は、本当は一番、最初の0次元に持ってきても良いようなきがするんだよ。…その場合『点』というのは極端に短い…長さが0の『線』だと考える」

M「点の集まりが線だとは考えないってこと?」

A「だってよ。大きさが無いなら、いくつ並べたって『線』のような長さを持つものにはならないだろう?…同様に、幅が無い線を幾つ並べても『平面』にはならず…幅の無い線のままだ。厚みの無い『平面』を何枚重ねたって立方体はできないってのも同じ考え方で…わかるよな?」

M「なるほど」


・・・


A「だから、俺は、『点』を基本要素とは考えず、あくまでも『線』の特殊なケースと考える。それこそ無限の長さを持つという定義の『直線』と同様に。両端があるなら、それは『線分』って表現するんだったな…数学では」

M「な…懐かしいね」

A「お前は予備校生だろう?…現役の学生が数学の基礎を懐かしがってどうする?」

M「面目ない」

A「だから…これは、なかなか共感を得られない考え方かもしれないが…俺は0次元とは、『時間』だけが流れていて、他には大きさも、長さも、厚みも…無い世界。そういうふうに、最初の次元としてイメージしているんだ」

M「…でも、『4次元の時空間』なんて言葉…聞いたことあるよ?」

A「まぁ。相対性理論だとかで時間と空間を扱うときには、そういうふうに考えるほうがスタンダードだな。まず3次元までの空間を考え、それに時間という図面に書き表しにくい次の要素として概念を加える…4つめに加えたと考えるから4次元時空という表現になるんだろうが…それだって主観が混じってるし…哲学の問題だろう?」

M「?」

A「基本的に、物理学を紙の上に座標を描いて表現しようとするから3次元までが図として無理なく表現できる限界になるのさ。それに時間をプラスしようとした図は、あるXYZの3軸座標を小さく書いて置いて、その斜め上あたりに時間が経過したイメージとして同様の3軸座標空間を描く。そして、それぞれの原点や軸の先端同士を点線などで…と繋いでやって、なんとなく時間が流れている…ようなイメージを演出している」

M「あ。なんとなく見たことある。そういう図」


・・・


A「でも、それって、冷静にツッコミを入れるなら、同一空間上に別の原点と軸を勝手に描いただけの図にも見えるだろう?」

M「うん。少なくとも時間の流れ…そのものを表現できているわけじゃないね」

A「だから、紙の上の学問では、なかなか3次元以上を表現し難いのさ」

M「あ。分かった。兄貴の言いたいこと。もっと簡単にアニメが作成できて、その上で物理学の図とかを表現したら…3次元のグラフを動画で動かすことで時間を表現できる…ってことだね?」

A「マモルにしては、中々に的を射た意見だが…念の為に言うぞ。俺は、思考の順番として先に3次元のグラフを描いて…それに時間を加えるために動きをプラスする…というのは違うと思っている」

M「0次元の定義の問題に戻るんだね?」

A「そうだ。あくまでも、学術的には俺の方が間違いだと言われるだろう。しかし、俺の中で事象を表現するためには、時間を最初に持ってきた方が考えやすいんだ。他人の主観の支配下で創られた物理学ではなく。俺様の俺による俺のための物理学だ」

M「おぉ。何か分からないけど、兄貴が凄い大人物に見えてきた」

A「うおっほん。とにかく。静止した状態。これを、『時間』が存在しない状態と考えるのでは無く、極めて短い時間を切り取った特殊な状態に過ぎないと考える。なぜなら、時間が存在しない一瞬、つまり一コマを、どれだけ並べても長さのある時間にはならないからだ。パラパラ漫画の一コマ一コマは、ほんの短い時間であっても確かに時間をもっているから連続してやることで動きのある動画になるんだ」

M「なるほど。兄貴の理屈の中では…筋が通ってるね」


・・・

【第4セクションへ…】続きます。

※この作品は一気に書き上げる予定ですので、次の投稿は30分から1時間後です。

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