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求愛

冗談話の上のことですがボーイズラブ的会話が含まれます。生理的に受け付けない方はブラウザを閉じてください。

「そんな契約、認められるわけがないでしょう!?」

 マリカの申し出に対して声を荒げたのは、当事者のクラウスではなくシーリスだった。

 それまでも友好的だったとは言いがたい視線がさらに厳しくなり、2人に歩み寄るとクラウスの肩を掴んで、突然怒鳴られて挙動不審になるマリカからクラウスを遠ざけた。

 その勢いにクラウスは倒れそうになるのを堪えながら、自分をぐいぐいと引っ張るシーリスの手を掴んでにこりと微笑む。

「まぁまぁ、シーリス。いつも言ってるけど、そんなに怒ってばかりだと、眉間の皺が本当に癖になるよ」

「当事者の癖になんでそんなに落ち着いてるんですか!」

「まだ起こってないことだから?」

「放っておいたら起こるんですよ!」

「だから怒るよりも大陸も俺も無事に済む対策考えよう。怒るのは最後でも出来るし。あ、でも本当にどうしようもなくなった時って、怒る気力もなくて逆に笑えるんだけどね」

 あはは、と笑うクラウスにシーリスが翡翠のような深い色の瞳に傷ついたような光を浮かべる。

「笑う前に怒ってくださいよ」

 力ないシーリスの声にクラウスの眉が下がってちょっと困ったような笑みを浮かべた。

「ごめん」

「……謝ってほしいわけじゃないんですよ」

「うん、だからごめん。大好きだよ、シーリス」

 今度こそにっこりと満面の笑顔で大好きと言われて、シーリスが嫌そうに顔を顰めてクラウスから一歩下がった。

「王とシーリス様は恋人同士なのですか?」

 シーリスの剣幕に押されて2人を見守っていたマリカだったが、堪えきれずに楽しそうに問いかける。

「なに考えたらそうなるんですか!陛下も否定してください!そんなだから陛下は実は衆道だとか噂が立つんですよ!」

 またしても怒ったのはシーリスで、クラウスは腹を抱えて笑っていた。

 そのままひとしきりシーリスに怒られながら笑って、目じりに滲んだ涙を拭うときょとんとしているマリカに向き直る。

「私、何かおかしいことを言いましたか?」

「君にとって同性愛は普通のことなの?」

「その方が私たちの役割に都合がいいので、『花』は基本的に総じて女性体です。そのため花天の座には女性体しかいません」

「なるほど、男にとってはまさに天上の楽園のような場所だね。質問の答えだけど、私は確かにシーリスを撫で回したいくらい大好きで一緒にベッドで休んでもいいとは思うけど……冗談だって、シーリス……シーリスに欲情するかと訊かれれば、それはないね」

 クラウスは顔を引きつらせてさらに逃げようとしたシーリスの腕を掴んで逃走を阻止する。

「なるほど、人間は性衝動が伴わなければ恋愛ではないのですね」

 納得したように頷くマリカに、シーリスがうんざりとしたように溜息をついた。

「それで、だいぶ話がずれたけど、私の望みっていうのは何でもいいのかい?」

 軌道修正を試みるクラウスに、少し申し訳なさそうにマリカが首を横に振る。

「一応約定があって、それに反する行為は叶えられません。人を殺めるべからず、冥府に介入するべからず、盟約を破るべからずの3つが禁止事項です。つまり人間を直接殺す行為と、死した人の魂を操る行為と、『花』と王の盟約を破棄する行為は行えません」

 指を折って数え上げるマリカに少し考えてからクラウスが質問を足していく。

「直接じゃなく殺すっていうのはどういう?」

「例えば戦争を起こして私たちの力で敵を殲滅するのは出来ませんが、戦争のために誰も知らないものすごく強力な兵器を与えて欲しいという願いは叶えられます。私たちが与えるのは力のみであり、その力を行使するかしないかは人間側の判断ですから。あとは、例えば敵対する相手が人間ではない……人外の者と呼ばれているのでしたか……そういう相手であるのなら、私たちも直接に戦うことが出来ます」

「詭弁だな。責任逃れをしているだけじゃないか」

 シーリスが軽蔑の眼差しでマリカを見やる。

 マリカは長い睫毛をぱちぱちと瞬かせて首を傾げた。

「そうでしょうか。私たちは大地の統治者は人間だと思っています。ですから大地をどう治めるかは人間の意志によって決められるものだと考えています。王と私たちの盟約のような例外でない限り、そこに私たちの意志が介入するべきではありません」

 シーリスに少々びくびくしながらもはっきりと自分の意見を述べて引かないマリカを、クラウスは結構がんこだなと思いながら意外そうに眺めた。

 一見すれば儚げで可憐な容貌なのに、芯が強そうなところが単純に面白いと感じる。

 クラウスは自分が相手に興味を引かれていることに気づくと口の端が微かに上がった。

 その間にもまた言い合いを始めようとする2人に、軽くパンと両手を打ち合わせる。

「まぁ、2人ともケンカしない。それでマリカ、お願い事決めたよ」

「はいっ、なんでしょう!?」

「陛下!」

 マリカは目をきらきらと輝かせて、シーリスは真っ青になりながら、両者共に勢いよくクラウスを振り返る。

 そんな2人にニコニコと微笑みながら、クラウスはさらりと望みを口にした。


「うん、私は君が欲しいな」


「「――…は?」」

 マリカとシーリスの声が重なる。

「うん、だから、私はマリカの身体や、心や、知識や、とにかくマリカを形成している全てが欲しいな」

 絶句する2人にクラウスはくすくすとおかしそうに笑い声を立てながら、再びマリカの傍に近づいて傍に膝を付くと、そのほっそりとした手を自分の手に掬い上げるように取ってそっと優雅に指の背に口付ける。

「私のモノになってくれる?」

 悪戯っぽく輝くアイスブルーの瞳が上目遣いにマリカの顔を見上げた。

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