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異世界に転移した俺、なぜかAIも一緒に来てました。  作者: 限界まで足掻いた人生


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第29話:黒い牙

未知の恐怖であるATの余韻を引きずったまま、一行は森の外縁部へと辿り着いた。木々の隙間から街道が見え始め、ようやく人里の気配に安堵したのも束の間。


「止まりなさい。……囲まれているわ」


エレンの鋭い制止が飛ぶ。同時に、草むらから武装した男たちが次々と姿を現した。


「おいおい、上玉じゃないか。それに高そうな魔導具も持ってやがる」


現れたのは十数人の集団。薄汚れた毛皮の防具を纏い、殺気の籠もった刃を向けてくる。彼らはこの地方を荒らし回る盗賊団、灰狼のグレイファング。狙いは金目の物、特にエレンたちが所持する希少な魔導具だ。


「……ユウジ。さっきの『視線』、こいつらだったのかしら?」


ラナが剣を引き抜き、冷たく問いかける。祐二は脳内のログと、目の前の男たちの配置を照らし合わせた。


「マスター、照合完了。先ほどから継続していた低強度の視線ログは、彼らの偵察行動と一致します。熱源反応および生体ログ、すべて正常な人間です」


AIの無機質な声に、祐二は皮肉な安堵を覚えた。


(なんだ……さっきの不可解な拒絶反応とは違う。こいつらは、ただの『物理的な敵』だ)


「なんだよ、さっきまであんなに怯えてたのに。人間相手だと分かった途端、随分と余裕じゃないか」


祐二が溜息混じりに呟くと、ミーナが「当たり前でしょ!」と鼻を鳴らした。彼女は先ほど掛け違えていたシャツをようやく着直し、野生のしなやかさを取り戻して身構える。


「魔法も爪も通じる相手なら、何も怖くないわ。不潔な視線を送ってたお返し、たっぷりしてあげる!」


「……ユウジ、下がってなさい。これは、私たちの『得意分野』よ」


エレンの瞳に、先ほどまでの困惑は消え、冷徹な魔導師の光が宿る。


姿の見えない、技術的な超越存在。それに対する形のない恐怖は、目の前の「分かりやすい暴力」へと収束していくことで、皮肉にも彼女たちの闘志を再点火させた。


しかし、祐二の脳内のAIだけは、依然として森の深奥へ向けて警告のパルスを発し続けていた。灰狼の牙の背後――彼ら自身も気づいていない「さらに深いレイヤー」に、あのATの残滓がまだへばりついていることを、祐二だけが予感していた。

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