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異世界に転移した俺、なぜかAIも一緒に来てました。  作者: 限界まで足掻いた人生


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第24話:情報漏洩

静寂が戻った森の中で、踏み荒らされた草花だけが異様な存在感を放っていた。エレンは未だに服の合わせが乱れているのも構わず、その場に膝をつく。彼女の瞳には、冷徹なまでの探求心が宿っていた。


「……ありえないわ。これほど鮮明な物理的痕跡を残しながら、魔力の残り香すらしないなんて」


エレンは再び、その高度な技量を見せつける。精密多重詠唱。彼女の周囲に幾重にも重なる魔法陣が展開され、押し潰された草花の一片、土壌の湿度、そして大気の震えをミクロン単位で走査していく。


しかし、結果は非情だった。


「やはり、魔力残滓は皆無。……ユウジ、あなたの言う通り、これは私たちの知る『魔法』の範疇ではないわ」


「そうだろうな。……なあ、エレン。ちょっとその痕跡を、別の角度から見させてくれ」


祐二は、ようやくラナに縄を緩められ(相変わらず監視の目は厳しいが)、その現場を凝視した。彼の脳裏で火を噴いているのは、かつて資格試験のために叩き込んだデータベーススペシャリストとしての思考回路だった。


(物理的に誰かがそこに『いた』のなら、必ず移動の軌跡が残る。だが、ミーナが踏み込んだ瞬間に消失した。これは瞬間移動か? いや、違う。エレンの魔法に反応がないのなら……)


祐二は、押し潰された草とその周辺の「無傷なエリア」との境界線を見つめる。


(これは『差分』だ。直前の状態と、今の状態。その間の連続性が、意図的に書き換えられている)


「マスター、推論を補完します」


脳内のAIが、祐二の思考に冷や水を浴びせるように告げた。


「対象は物理的な侵入を行ったのではなく、この座標における『空間ログの改変』を行ったものと推測されます。本来、そこに存在しないはずの『圧力』というデータだけを上書きし、私たちの反応を試したのです」


「……ログの改変。つまり、あいつは最初からここに体なんて持ってきてなかったってことか」


祐二が呟くと、三人の間に戦慄が走った。実体のない「情報」に、自分たちは翻弄されていたのだ。


「待って。それじゃあ、あいつの目的は何なのよ!」


ラナが、逆さまに着ていた服をようやく正しながら叫ぶ。祐二のAIは、その問いに対して最も残酷な答えを導き出していた。


「警告。周辺ネットワークへのバックドアは既に構築されています。……対象は我々を監視対象リストに登録した可能性が極めて高いです」


「監視対象……? 英雄候補である私たちが、何者かの管理下に置かれたというの?」


エレンの顔から血の気が引く。祐二もまた、冷や汗が止まらなかった。

自分たちの魔法の威力、ミーナの嗅覚、そして何より「異世界人」である祐二の存在そのものが、見えないサーバーへとアップロードされてしまった。


現代社会における「個人情報の流出」とは比較にならない、命に関わる致命的な情報漏洩。


「……とりあえず、ここを離れよう。俺たちの『ログ』がこれ以上抜かれる前に」

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