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異世界に転移した俺、なぜかAIも一緒に来てました。  作者: 限界まで足掻いた人生


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第18話:痕跡の逆演算

喉元にナイフを突きつけたまま、女は奪い取った簿記表を乱暴にめくった。パラパラと流れる紙の束が、あるページで止まる。


一番上に記されていたのは、狼人族の少女の記録だった。


【氏名:ミーナ・ヴォルフレッド】


その名を見た瞬間、女の口角が不快そうに歪んだ。かつての「仲間」の顔が脳裏をよぎったのかもしれない。だが、彼女が探しているのはそんな些事ではない。さらに数枚めくったところで、女の指が止まった。


そこには、異世界の言語体系には存在しない、異質な属性が刻まれていた。


【種族:異界人】 【氏名:ユウジ・タドコロ】


「……これだわ」


女の瞳が鋭く細められる。一見すれば、レベル1の無能な男の記録に過ぎない。だが、彼女の視点はその「数値」ではなく、記録の「形式」に向けられていた。


かつて、このギルドの簿記は全て職員による手書きだった。しかし、魔導技術の進歩により、最近では鑑定石の結果をそのまま魔力で紙に定着させる「直接出力ダイレクト・アウトプット」に移行している。


つまり、職員の主観という「ノイズ」が入らない分、そこには鑑定石が捉えた「偽装の痕跡」や「魔力の揺らぎ」が、逆算可能なデータとして残っているのだ。


女は懐から奇妙なレンズを取り出し、紙面をスキャンするように見つめた。すると、かすれた魔力の残滓の中に、隠蔽しきれなかった真実の文字列が浮かび上がる。


【――――AT限定】


「……やっぱり」


女の喉から、歓喜とも吐息ともつかない声が漏れた。


「『AT』……。間違いない。あなたは『あの方』と同じ場所から来た、同じ志の持ち主……」


それ以上の言及を自ら禁じるように、女は簿記表を力任せに閉じ、カウンターへと放り投げた。震える受付嬢を見向きもせず、フードを深く被り直して出口へと歩き出す。


「待っていてください。すぐに見つけ出してあげますから」


その呟きは、誰に聞かせるものでもなかった。 女がギルドの重い扉を蹴り開けて外に出た瞬間、カウンターの裏に隠されていた魔導爆弾の導線が、音もなく最後の一ミリを焼き切った。


――カチッ。


次の瞬間、轟音と共にギルドの一階が膨れ上がる。 爆風が窓ガラスを粉砕し、真実の鑑定石の部屋を飲み込み、膨大な紙のデータが黒い灰となって空へと舞い上がった。


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