第15話:責任と門外の再会
至近距離から浴びせられる、三者三様の熱気と殺気。二十七歳のシステムエンジニアが一生で浴びる以上の「女の圧力」に、祐二の論理思考はついに限界を迎えた。
「……わかった、わかりましたよ! 見ました! 見ましたよ、ええ、しっかりとな!」
祐二が半ば自棄になって叫ぶと、円陣の中に一瞬の静寂が訪れた。 次の瞬間、三人の顔は沸騰したかのようにさらに赤く染まり、それぞれの反応が爆発する。
「このっ……! はっきり認めやがったわね、この変態おじさん!」 「……っ! 視覚情報の不法取得……万死に値するわ……!」 「おじさんのエッチ! 狼の乙女心、ズタズタだよ!」
「……いい加減にしろよ! さっきから『おじさん、おじさん』って、俺はまだ二十七だぞ! お前らと数歳しか変わらないだろ! どんだけ老け役を押し付ければ気が済むんだ!」
罵詈雑言の嵐に、祐二の不満が爆発する。二十一歳のミーナ、二十四歳のエレン、そして二十五歳のラナ。この世界での平均寿命は知らないが、現代日本の感覚では「おじさん」と呼ばれるには早すぎる。
だが、ラナはそんな祐二の抗議を鼻で笑い、真っ赤な顔のまま強引に結論を叩きつける。
「いい? 鑑定石がどう言おうと、あんたが私たちの裸を見て、精神的なダメージを与えた事実は消えない。……責任、取りなさい」
「……責任、って?」
「協力よ。これから森へ素材採集に行くわ。あんたは『データベーススペシャリスト(笑)』として、私たちの荷物持ちをしなさい。死ぬ気で働いて、私たちの心の傷を埋めるのよ!」
法的な無罪を、感情論という名の「超法規的措置」が塗りつぶす。祐二は反論する間もなく、巨大な背負い袋を背負わされ、ギルドの外へと引きずり出された。
自嘲気味に息を吐きながら、祐二は街の北門へと向かう。膝をガクガクさせながら門を抜けようとしたその時、門番の衛兵が目を丸くして声をかけてくる。
「……おい、あんた。さっき引きずられていった『覗き魔』の……。無事だったのか?」
衛兵の記憶の中では、祐二は「氷の処刑人」に処刑場へ連行される寸前の罪人だったはずだ。それが今や、彼女たちの後ろを歩いている。
「……ええ、まあ、どうにか。……死んでないだけ、マシですから」
祐二が力なく笑って答えると、衛兵は「あの氷の女たちに捕まって生きてるなんて、とんだ強運だな」と、同情と畏怖が混ざったような顔で見送る。
「……おじさん、無駄口叩いてないで歩く!」
ミーナの怒声が飛ぶ。 二十七歳の秋。自分を「有罪」に仕立て上げた少女たちの尻を追いかける、過酷な森のパシリが始まった。




