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異世界に転移した俺、なぜかAIも一緒に来てました。  作者: 限界まで足掻いた人生


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12/22

第12話:規格外の「無能」と、生存のデバッグ ☆

「……報酬も削られたし、気分は最悪だわ。おい、受付さん。こいつ、森で私たちの裸を覗いていた熟練の不審者よ。とりあえず身元を洗ってちょうだい」


ラナが忌々しそうに告げると、受付の女性は困惑した表情で祐二を見やる。


「身元不明、かつ犯罪の疑いがある場合は当ギルドの規定により『強制鑑定』を受けていただきます。……もし重犯罪の指名手配犯であれば、報酬が上乗せされる可能性もありますが、よろしいですか?」


「報酬が上がる? ……いいわ、さっさとやりなさい」


ラナの瞳に現金な輝きが宿る。 祐二は逃げ場を失ったまま、カウンターに置かれた禍々しく光る水晶――『真実の鑑定石』の前へと引きずり出された。


「真実の鑑定石」――それは、対象の魂のあり方を残酷なまでに暴き出す、ギルドきっての見世物エンターテインメントでもあった。


「おい見ろよ、強制鑑定だぜ!」 「久々だな! あの泥だらけの男、実はすげぇスキル持ちとかじゃねぇか?」 「いやいや、賭けてもいいが見栄張った『村人』だろ!」


酒で赤ら顔になった冒険者たちが、面白い見世物を期待して、わらわらとカウンターの周囲に集まってくる。好奇心と無責任な野次が渦巻く中、祐二は逃げ場のない晒し者として、禍々しく脈動する水晶の前に引きずり出された。


「手を置いてください。抵抗しても無駄ですよ、これは魂の情報を直接読み取りますから」


受付嬢の事務的な指示に従い、祐二は震える手を冷たい水晶に乗せる。 瞬間、ギルド内に設置された大型の魔導スクリーンに、祐二の「全情報」が非情にも映し出された。


【鑑定結果】

氏名: ユウジ・タドコロ

種族: 異界人ヒューマン・バリアント【年齢:27】

職業: システムエンジニア

レベル: 1

固有スキル:

『普通自動車免許』

『基本情報技術者』

『応用情報技術者』

『ネットワークスペシャリスト』

『データベーススペシャリスト』

『情報セキュリティマネジメント』


総合評価: ■(測定不能:戦闘能力皆無)


受付嬢の声と共に、スクリーンに【種族:異界人】の文字が躍る。その瞬間、ギルド内に地鳴りのような歓声が巻き起こった。


「おい、見たか! 『異界人』だぞ!」 「マジかよ、本物の来訪者じゃねえか! 伝説の勇者候補か!?」 「当たりだ、特大の当たりだぜ! どんなチートスキルを持ってやがるんだ!」


酒場にいた冒険者たちが総立ちになり、期待の眼差しでスクリーンを凝視する。数年に一度あるかないかの「異界人」の出現に、ギルドの熱気は最高潮に達した。


対照的に、ラナたちは苦虫を噛み潰したような顔でスクリーンを見上げていた。


「……異界人? 勇者候補……? 嘘でしょ、あんな不審者が……」


「……待って。それより、ステータスを見て。犯罪歴がない……『覗き魔』も『罪人』も表示されていないわ」


エレンが震える指でスクリーンを指した。 真実の石は嘘をつかない。魂に刻まれた悪意を暴くはずの鑑定結果に、罪状が一つも載っていないということは――あの河原での出来事は、祐二の言葉通り「不可抗力の事故」であったことを、世界そのものが証明してしまったのだ。


「……じゃあ、私たちは『神の使徒』を、無実の罪でボコボコにして、縄で引きずり回したってこと……?」


ラナの額から冷や汗が流れた。使徒への不敬は、この国では国家反逆罪にも等しい。彼女たちの脳内に「処刑」の二文字がよぎる。


だが、歓声はすぐに凍りついた。 続けて表示された【固有スキル】と【総合評価】の欄が、全観測者の脳をフリーズさせたからだ。


「……は?」 「■……? 測定不能ってなんだよ」


どよめきが、困惑へと変わる。期待に満ちていた冒険者たちが顔を見合わせた。


「おい……戦闘能力『皆無』って書いてあるぞ」 「スキル名も意味不明だ。東方の隠語か?」 「なんだよ、期待させやがって! 異界人にもやっぱ『ハズレ』がいるのかよ!」 「勇者どころか、ただの雑魚じゃねえか! 解散だ、解散!」


熱狂は一転し、残酷な嘲笑とブーイングが祐二の背中に突き刺さった。彼は一瞬にして「珍しいだけの無能」へと格下げされたのだ。


『作戦通りです。あなたの本質的な「システム操作権限」を隠蔽するため、あえて理解不能な「高度情報処理資格」を表面化させました。これであなたは「聖なる脅威」ではなく、「無実だが何の役にも立たないゴミ」として定義されました。生存率は 96% まで上昇しました。』


(……おい、ギフトさん。お前、今さらっと言ったけど……「真実の鑑定石」の結果を弄れるのか!? 魂を読み取る魔法の道具なんだろ、これ?)


祐二は震える声で脳内に語りかけた。前職の仕様変更でも、ここまで心臓に悪い書き換えは経験したことがない。


『肯定します。鑑定石といえど、情報を読み取り出力する「外部デバイス」に過ぎません。その出力パケットに割り込み、表示内容を改ざん(フック)するのは、私にとって初歩的なデバッグ作業です』


(……恐ろしいな、お前。で、結局何を変えたんだ? 自分の名前が「タドコロ」なのは合ってるし、「システムエンジニア」なのも事実だろ)


『「普通自動車免許」の項目のみを修正しました。 本来、あなたの記録には「AT限定」という付帯条件が含まれていましたが、これを見られてもメリットがないと判断し、削除して出力しました。その他の資格情報は、現地の文明レベルでは内容を理解される心配がないため、そのまま流してあります』


(……そこかよ! 一番どうでもいい「AT限定」にリソース使ったのかよ!? いや、男としてのプライドは微かに守られた気がするけど……もっと他にあるだろ、変えるべき場所が!)


祐二がガックリと肩を落とすと、それを見た冒険者たちは「ハズレの結果に絶望してやがる」と、いっそう嘲笑を強めた。

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