09.ポーリーンの輿入れ
ポーリーンの性格は、高位貴族たちにはすでに知れ渡っている。
ポーリーンに目をつけられそうな令息たちは、彼女の毒牙にかからないようできるだけ距離を取り、皆早々に婚姻を済ませた。なので、エイベラル国内に彼女が降嫁できそうな家はもう残されていない。
しかし、彼女もそろそろ年頃である。
婚姻相手を探そうにも、国内は難しい。ならば、他国の王族、もしくは公爵家。
様々な国、家に打診するも、なかなか色よい返事がもらえない。もらえても、絵姿を確認したポーリーンが首を横に振る。彼女は相手の容姿について、絶対に妥協を許さなかった。
頭を抱えた国王夫妻に救いの手を差し伸べたのは、王太子である第一王子だった。
彼が持ってきた縁談は、隣国であるグランデ王国の第三王子とのもの。
グランデ王国に留学経験のある彼は、第三王子と懇意にしていたのだ。
「そうそう、シリル殿下への贈り物も用意しなきゃ! この間送られてきた宝石は、本当に素晴らしかったわ……」
シリル=グランデの絵姿を見た瞬間、ポーリーンは輿入れを快諾した。彼は、銀髪碧眼の見目麗しい男性だったのだ。
第三王子ではあるが、王家に残り、未来の王を支える立場にあるという。これにも満足した。
「臣下に下るよりも、王族でいたいもの! 偶にはお兄様もいいことをしてくれるわ。それに、シリル殿下は寛容なのよね~。護衛騎士も、好きなだけ連れてきていいなんて言ってくださるのだもの!」
ポーリーンは、誰を連れて行くかすでに決めている。
「さすがに全員だと周りがうるさそうだし、選りすぐりの五人を連れて行くわ」
このことは、すでに彼らには話してある。
こればかりはポーリーンの思うとおりにはいかず、この打診は辞退可能だ。本人が希望した場合のみ、彼女の伴をするということになっている。
「お姉様ったら、優秀な騎士を私に取られてしまうことを妬んでいるんだわ。でも無駄よ。皆、私についてきてくれるはずだもの!」
フランシス、ジェイク、ミハイル、ユージーン、ライル。
彼らは、専属騎士たちの中でも特に容姿が整っている。ポーリーンにつき従い、尽くしてくれる。ポーリーンを蝶よ、花よと甘やかし、崇め奉る。
彼らといると、ポーリーンはいつだって幸せだ。
「五人のうち、婚約者がいるのは二人。フランシスとジェイク。たった二人だけにしてあげたんだから、私ってばなんて優しいの!」
フランシスとジェイクは、婚約者をこの国に置いていくことになる。彼らの婚約者は、待つか別れるか、決断を迫られるのだ。
「ジェイクの婚約者は、なんだかんだいって待つんじゃないかしら。ジェイクに首ったけだものねぇ。ふふ、なんて惨めなのかしら! フランシスの婚約者……あの忌々しい二コラ=オマリーはどうするかしら。フランシスは婚約を破棄、もしくは解消するつもりはないみたいだし、結局待つ羽目になるのかしらね。ふふふふ、いい気味だわ!」
ポーリーンは、自分に屈しない二コラを大層嫌っている。だから、執拗に二人の邪魔をしていた。
彼女は、二コラの顔が悲しみと怒りと絶望に歪むのを切望している。
「王族も重用する大商会の娘とはいえ、所詮は伯爵令嬢。一国の王女には敵わない。婚約者を奪われても、なーんにもできない無力な女なのよ!」
ポーリーンは大きく肩を震わせ、高笑いする。
ポーリーンの目の前には、昔も今も、これからも、輝かしい道がずっと続いている。
眩い光の裏には、暗い影がある。だが、彼女自身には一生縁のないもの。
──それが覆される未来を、ポーリーンはまだ知らない。
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