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未練なんてありませんが?  作者: 九条 睦月


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54/57

54.結末

 ポーリーンとの対峙から、およそ半年後。

 テレンス王太子殿下は、正式に国王となった。

 これほどの短期間で譲位できたのは、すでに彼がかなりの割合で国政に携わっていたからだそうだ。あと、脇を固める有力貴族たちとも連携が取れていた。

 なので、王が代わった後の混乱などもなく、平和なものである。


 前国王夫妻とポーリーン、フランシスは、離宮へ移った。

 彼らは生涯ここから出られず、慎ましやかに暮らしていくことになる。

 これまで派手な生活をしていた彼らだから、馴染むまでにはまだ時間がかかるだろう。


 両親と同様に、ポーリーンに甘い第二王子のヨハン殿下は、すっかり意気消沈してしまった。

 彼もかなり派手な人物だったけれど、今では影が薄く、王宮に引きこもっていることが多いとのこと。

 ヨハン殿下は、そのうち外国へ婿入りする予定なのだという。彼が早く立ち直るためにも、きっとその方がいいだろう。


 そして驚いたのは、アシュベリー子爵令嬢だ。

 彼女は罪を犯してしまったけれど、情状酌量が認められ、賠償金の支払いと半年ほどの謹慎で済んだ。


 問題はその後だ。

 なんと彼女は、ジェイク=ムーア……いや、すでにムーア伯爵家からは籍を抜かれてしまっている、彼と結婚したのだ。

 彼女のご両親や親戚はかなり反対したというが、彼女が押し切ったのだそう。

 ジェイクは、散々彼女を蔑ろにしてきたにもかかわらず、アシュベリー子爵家に婿入りすることが叶った。


 しかし、これが彼にとっていいこととは限らない。

 ジェイクは、クララ嬢に絡めとられてしまったも同然である。この先、彼に自由はないだろう。

 彼女の執着心に、身震いがした。


 ──そんなこんなで、今夜は、テレンス陛下が開催する初めての夜会である。


 普段は王都に足を運ばない遠方に住む貴族たちも、今夜ばかりは参加していた。

 国王交代後すぐに大きな夜会は開催されたが、これは他国の要人も招いてのもので、国内の貴族の参加は高位の者たちで占められていた。

 けれど、今日の夜会は国内の者に限られている。改めて、国内の貴族たちに向けて挨拶、お披露目という主旨での開催なのだ。


 私は、会場をぐるりと見渡す。

 多くのご婦人、ご令嬢方のドレスにオマリーシルクが使われている。

 鮮やかな赤にピンク、黄色に青、緑……色とりどりのドレスが、まるで華々しく咲き誇る花のようだ。


「たくさんの方が、オマリーシルクを身に着けてくださっているわね」

「そうですね。ようやく、国内では手に入りやすくなりましたから」


 エヴァンも、感慨深げにそう言った。


 大量生産が難しいオマリーシルクだから、爆発的な人気となると、どうしても手に入れることは困難になる。

 それなりに強気の価格設定にもかかわらず、評判が評判を呼び、飛ぶように売れていく。

 それでも、できるだけたくさんの人の手に渡るよう、私もエヴァンも努力してきた。そしてようやっと、皆が手にできるようになったのだ。

 ただし、これはまだエイベラル王国内に限るのだけど。


「でも、オマリーシルクのドレスを一番美しく着こなしているのは、二コラ、あなたです」

「ちょっ……エヴァン!」


 耳元に唇を寄せ、甘い声で囁くエヴァン。

 油断も隙もあったものではない。


「ああ、そんな可愛い顔をしないでください。他の男に見せたくありません」

「~~エヴァンのせいでしょう!」


 私とエヴァンは、あれからすぐに婚約した。

 このことが社交界に広がった時は、驚きと落胆の声で、一時大騒ぎだったらしい。


 以前の婚約は、途中から破綻していたも同然だった。それは皆の知るところで、いつ解消になるか、目を光らせていた家も多かったそうだ。

 解消であれ、破棄であれ、私に瑕疵がないことは明白。そして、私は次期オマリー伯爵家とオマリー商会を継ぐ者。これほどの優良物件を逃すものかと、高位下位問わず、後釜を狙っていたのだ。

 そして婚約解消後は、家に大量に釣書きが届けられた。しかし、その話は私のところに一切入ってこなかった。

 ……エヴァンが、お父様にそう願ったからだ。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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