表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未練なんてありませんが?  作者: 九条 睦月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/57

51.最後の対峙

 気を引き締めて、テレンス殿下の言葉を待つ。

 私の心臓は激しく脈を打っていた。


「これは、拒否してもらっても構わない」

「……はい」

「その上で聞いてもらいたいのだが……。ポーリーンがあなたと話したいと言っている」

「ポーリーン殿下が、ですか?」


 意味がわからない。

 今更何を話すというのだろう?


「助けろなどとは言わせない。姉上がともに立ち会うし、もしそんなことを言われても、姉上が止めるから心配しなくてもいい。おそらく……理不尽な言になるだろう。だから、断ってくれても構わない。だが、あなたにも言いたいことがあるだろう? この際、ぶちまけてやってはどうかと思ってね。……どうだろうか」


 ポーリーン殿下に再び相まみえるのは、私にとって苦痛を伴うものだ。

 けれど、グローリア殿下が一緒にいてくださるなら。

 そして──言いたいことを言っていいのなら。


 その時、グローリア殿下が苦笑しながら言った。


「オマリー伯爵令息、言いたいことがあるようだな。想像はつくが、言ってみろ」


 エヴァンはグローリア殿下に一礼し、こう願い出る。


「恐悦至極に存じます。……私も、その場に立ち会わせてはいただけないでしょうか」

「そう言うと思っていたよ。構わない。其方がいた方が、二コラも安心できるだろう」

「ありがとうございます」


 グローリア殿下は、エヴァンの行動を予測していたようだ。

 でも、エヴァンも一緒なら私も心強い。

 エヴァンが側にいてくれるなら、ポーリーン殿下に何を言われようと平気……なはず。


「テレンス殿下、承知いたしました。ポーリーン殿下とお話させていただきます」

「感謝する、オマリー伯爵令嬢」


 最初から最後まで驚きどおしの会合だったけれど、とりあえず終わった。

 私たちは心身ともにへとへとになりつつ、邸に戻ったのだった。


 *


 日を改めて、再び呼び出される。

 今度は、私とエヴァンのみが王宮へ向かう。

 お父様もお母様も心配そうな顔をしていたけれど、言いたいことは我慢しなくていいと背中を押してくれたので、遠慮はしない。

 テレンス王太子殿下、いや、もうすぐ陛下となる彼のお墨付きなのだ。思う存分言ってやる!


 王宮に着いて、私たちはグローリア殿下とともに、用意された一室へと案内される。

 中に入ると、相変わらず派手な格好をしたポーリーン殿下がいた。なんと、フランシスまでいる。


「遅いわよ! いつまで待たせるつもりなの?」


 開口一番これだ。

 話がしたいと言ったのはそっちなのに。


「ポーリーン、お前はもう王族ではない。平民ではないが、貴族でもない。そのような口をきくな」


 グローリア殿下に一刀両断にされ、ポーリーン殿下……いや、もう王族ではないならこの敬称は必要ない、ポーリーンは表情を歪める。


「お前の方から二コラと話をしたいと言ったのだろう? 彼女はそれに応えてくれたんだ。礼よりも先に悪態をつくとは何事か。そんな失礼な態度を取るなら、この機会はなしにするが?」

「……っ。申し訳……ございません、お姉様」

「謝るのは、私にではないだろう?」


 ポーリーンは私の方を見るが、睨みつけるばかり。

 けれど、グローリア殿下が私を連れて部屋を出ようとすると、ようやく観念したのか、渋々ながら私に謝罪をした。


「申し訳……なかったわ」


 誠意はあまり感じられないが、別に構わない。

 というか、早く終わらせたい。

 グローリア殿下がどうする? というように私を見るので、コクリと頷いた。


「二コラの寛大さに感謝するのだな。……で、お前の話とはなんだ」


 グローリア殿下が、フランシスを一瞥する。

 こちらにも物申したいようだが、そうするとまた面倒臭そうなので放置、という感じである。


 ポーリーン殿下は私を見据え、不機嫌を露わに言った。


「二コラ、あなたって本当に意地悪だわ。私とフランシスの仲に嫉妬して、新しいオマリーシルクを私の手に入らないようにして。グランデ国王夫妻に献上するなら、私にも当然あるべきじゃない! むしろ、私が優先されるべきよ! 私は、エイベラル王国の王女なのよ? 私が新しいオマリーシルクのドレスを纏えば、とてもいい宣伝になるじゃない。そんなこともわからないなんて、あなた、商人として失格ね。とてもオマリー商会を率いてなんていけないわよ」

「なっ……」


 すぐさまエヴァンが反論しようとするが、私はそれを視線で制止する。

 グローリア殿下は静観していた。

 でも、本当は言い返したいのだ。それを抑えているのは、この機会を設けたのは私のため、私がこれまでの鬱憤を晴らす場だとわかっているから。


 私は、淡々とした口調でポーリーンに言い返す。


「だからといって、偽物を作りますか? エイベラルの王女としても、グランデの第三王子妃としても、ありえない所業だと思いますが」

「うるさいわね! あれは……あれはっ……全部クララのせいよ! あの子が偽物を作って、こちらに寄越したから……っ!」


 アシュベリー子爵令嬢がムーア卿に言われ、そうしたことはわかっている。 

 そして、ムーア卿にそれを強請ったのは、あなただというのに。


「仮に」


 私は一呼吸置いて、ポーリーンに冷めた視線を向ける。

 彼女は私の迫力に圧されたのか、一歩後退った。


 これまでずっと我慢していた。

 どうしようもない最低な女でも、彼女は「王女」だったから。

 だから、言いたいことは胸の内に収めるしかなく、どんなに理不尽なことを言われても、どんなに貶められても、何も言い返さなかったのだ。

 それを、ポーリーンはわかっていない。

いつも読んでくださってありがとうございます。

いいな、面白いな、と感じていただけましたら、ブクマや評価(☆☆☆☆☆)をいただけますととても嬉しいです。皆さまの応援が励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ