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未練なんてありませんが?  作者: 九条 睦月


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48.帰路

 その後、私たちは帰国の途に就くことになった。

 グランデ王国の国王ご夫妻はもちろん、王太子殿下ご夫妻にシリル殿下からも大いに感謝され、おまけに新規契約まで交わすという上々の結果。

 いろいろあったけれど、とにかく無事に終わってよかった。


 とはいえ、シリル殿下はあれからご両親にこってりと絞られたらしい。

 でも、それほどまでに結婚を厭うていたことも彼らに伝わり、皆はシリル殿下を再び自由の身にさせておくことにしたそうだ。また無理強いすると、今回みたいなことが起こらないとも限らない。


『また結婚を迫るようなら、今度は国を出て行くと脅したんだ』


 別れ際、シリル殿下がこっそりと教えてくれた。

 ここまで言われてしまうと、王家は彼の望みを叶えるしかない。シリル殿下の能力はそれほど高いし、グランデ王国には必要なのだ。


「ねぇ、二コラ」

「はい、お母様」


 行きとは違い、今度は家族揃っての帰路になる。

 本来なら両親と、私、エヴァンとなるところ、何故か強制的にお父様とエヴァン、お母様と私、という風に分けられてしまった。なので、私は今、お母様と一緒に馬車に揺られている。


「お母様に、何か報告することがあるのではなくて?」

「え?」


 きょとんとして首を傾ける。


 報告……あるといえばある。

 けれど、エヴァンと話し合ったのだ。両親に打ち明けるのは、今回のごたごたが落ち着いてからにしようと。

 一旦かたはついたけれど、それはグランデ王国でのこと。エイベラル王国では、ポーリーン殿下や護衛たちの今後が決まるまでは、事情を聞かれたりなど何かとバタバタするだろう。

 これらも全て片付いた後、改めて話そうとなったのだ。だから、私たちはこれまでとは変わらない風を装っている。


「特には……。私は今回の件について全部お話しましたし、商会の仕事の報告も漏れはないと思うのですが……」

「あら、見くびられたものね」


 お母様はそう言って、悪戯っぽく肩を竦めた。そして、企み笑顔になる。


 え? なに? お母様がこういう顔をする時は、必ずこっちが降参する羽目になるんだけど!


 幼い頃からそうだった。

 悪戯や失敗をどれだけ隠そうと、お母様にはバレてしまった。

 あれこれと質問されるうち、あれよあれよと追い詰められ、結局隠し事を白状させられてしまう。

 これは、そんな顔。


「み、見くびってなど……」

「そう? だってあなた、隠していることがあるでしょう?」

「そ、それはっ……私だってそれなりに大人で、隠し事の一つや二つは……」

「確かに、家族にも内緒にしておきたいことはあると思うわ。それを暴こうとは思わない。けれど、あなたが今隠していることは、お父様とお母様にも関係があることよね? なら、さっさと話しておくべきではなくて?」


 ヒィッ! なんだかわからないけれど、お母様にはバレている!

 なんで? どうして? 私たち……いつもどおりだったわよね!?


 あの夜以降の私たちの行動を思い起こす。

 うん、特に変わったことはしていないはず……。

 なのに、どうして……?


「ふふっ、ふふふふっ」

「お母様?」

「だって、本気でわからないって顔をしているんだもの。おかしいったらないわ」


 お母様が、我慢できないといったように笑い声をあげる。

 私は訳がわからなすぎて戸惑うばかりだ。

 そんな私に、お母様は慈愛の眼差しを向けた。


「ごめんなさい。本当にわからないのね。……でも、私とお父様にはバレバレよ」

「お父様にも?」

「ええ」

「……お母様」


 お母様は、馬車のスピード落ちたタイミングで私の隣に移動する。そして、囁いた。


「エヴァンを受け入れたのでしょう?」

「!!!」


 驚きのあまり、飛び上がりそうになった。


 なんでバレてるの!?


 私の反応を見て、お母様がまた笑う。


「どうしてバレないと思うのかしら? 二コラ、あなた鏡は見ている? 顔が全然違うわよ」

「え? え? 嘘!?」

「嘘なものですか。エヴァンだって冷静を装っているけれど、どこか落ち着かないし、視線はあなたを追っているし。って、これはいつものことね」

「いつもの……こと?」


 聞けば、エヴァンは昔からそうだったらしい。

 でも、初めてできた姉を慕ってかと、あまり気に留めないようにした。

 けれど、その視線はいつになっても止むことがなく、熱を帯びるようになった。こうなると、本人に気持ちを確かめなくてはならない。


 何故なら、私には婚約者がいたから。

 フランシスが商会には関わらず、騎士になるというから、私の補佐としてエヴァンを迎え入れた。そのエヴァンが障害になってはならない。


「エヴァンはその時に白状したわ。あなたを一人の女性として想っていると。けれど、同時に私たちに誓ったの。二コラとフランシスの邪魔は絶対にしないと。二人の幸せを願い、陰から支えると。だから、あなたの側にいることを許してほしいって」

「エヴァンったら……」

「私たちは、その健気な気持ちに絆されたのよ。それに、あなたはエヴァンを頼りにしていた。今更引き離すのは酷だと思ったわ。だから、エヴァンを信じることにした」


 エヴァンは、自分の気持ちが報われないのをわかって、私の側にいることを決めた。そう、最初から。


 エヴァンの無償の愛に、心が震える。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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