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未練なんてありませんが?  作者: 九条 睦月


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44/57

44.残された疑問

「彼女もまた、ポーリーンやあの護衛と同じく貴族牢に入ってもらっているよ。詳しい事情はこれから聞くことになるけど、ポーリーンや婚約者が絡んでいることは確実だろう」


 シリル殿下の言うとおり、無関係であるはずがない。でも、アシュベリー子爵令嬢がどのように絡んでくるのかはわからない。

 私が難しい顔をしていると、王太子殿下が尋ねてきた。


「オマリー伯爵令嬢、聴取に参加されたいか?」

「え……」


 私は目を丸くして、王太子殿下を見つめる。

 できれば、彼女の話を聞きたい。……いいのだろうか。

 王太子殿下は私の気持ちを汲み、首肯した。


「シリル、オマリー伯爵令嬢も同席してもらうとしよう」

「はい」

「あの!」


 すかさず、エヴァンが手を挙げて言った。


「私も同席させていただけないでしょうか」

「貴殿は……オマリー伯爵令嬢の弟御であったか」

「はい。エヴァン=オマリーと申します。姉の補佐として、私にも同席させてください」


 王太子殿下は、しばらくの間エヴァンを熟視し、やがて頷く。


「承知した」

「ありがとうございます」


 エヴァンがホッとしたような顔になる。

 お父様とお母様も同席したそうにしていたけれど、遠慮したようだ。私一人ではなく、エヴァンもいるから信じて任せたという部分もあるだろう。

 両親を窺うと、見守るかのような優しい視線を向けられた。「しっかり見届けてきなさい」、そう言われた気がした。


 そして、シリル殿下の話は最終局面に入る。


「アシュベリー子爵令嬢は、該当の部屋の鍵を手に入れていた。それを私に持たせ、その部屋に向かってほしいと訴えた。それで、私はあの部屋へ向かったんだ。そうしたら、部屋の前でポーリーンが騒いでいた。護衛の行方をあちこちで聞きまわり、辿り着いたようだ。扉が開かないと喚くので、持っていた鍵で開けた。……そして、あの最大のやらかしが繰り広げられた」


 ポーリーン殿下は私たちを見るなり盛大な誤解をして、私を突き飛ばした。それだけでなく、私に殴りかかってきた。

 あれは本当に……とんでもなかった。全てにおいて。

 エヴァンが彼女を止めてくれたから事なきを得たけれど、あのままおとなしく殴られていたら、私もさすがにブチ切れて、彼女に手を出してしまったかもしれない……。


 その後のポーリーン殿下の行動も、私にはとんとわからない。

 突然フランシスに色目を使ってしなだれかかり、キスをしたのだから。


「あそこまでやってくれるとは思わなかったよ。……結果的にオマリー伯爵令嬢を傷つけることになってしまったけれど、私は無事目的を達することができた、というわけだ」


 やはり、シリル殿下は最初から離縁する前提でポーリーン殿下を娶ったのだ。

 彼の告白が終わった後、王太子殿下は疲れたように頭を振った。


「計算高いお前があんな女……失礼、彼女を妻に迎えると言った時、何か企んでいるのだろうと思った。これは私だけじゃなく、王族全員だな。だが、お前はなんだかんだと皆を説得してしまった。これは……なんだろうな、体よく騙されたと言えばいいのか……とにかく、情けない」


 ちょっと王太子殿下が気の毒になってしまった。

 それに「あんな女」って。

 ポーリーン殿下の悪評は、グランデ王国の王族にも知られていたのね……。


 グローリア殿下、テレンス殿下にウィリアム殿下、そしてシリル殿下の計画は完遂され、事情も明かされた。

 わからないのは、あと一つ。

 王太子殿下が私に向かって言った。


「これから、アシュベリー子爵令嬢の聴取を行う。終わるのは夜遅くになるだろうが、明日からの予定が詰まっていてね」

「構いません」

「ありがとう。それでは、行こうか」


 私とエヴァンは両親と別れ、殿下方とともに貴族牢へと向かう。


 アシュベリー子爵令嬢……あなたは今、何を考えているのだろう?

いつも読んでくださってありがとうございます。

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