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未練なんてありませんが?  作者: 九条 睦月


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42.非情な計画

 その後、夜会については国王ご夫妻に任せ、私たちはとある一室に集められていた。

 私、エヴァン、お父様にお母様、それにグローリア殿下にウィリアム殿下、そしてシリル殿下。

 後始末を任されたのは、王太子殿下である。妃殿下は、国王ご夫妻とともに夜会に戻られている。


 全員が席につき、お茶が配られたところで、王太子殿下が口を開いた。


「さて、シリル。一から説明してもらおうか」


 彼は、シリル殿下をギロリと睨みつける。しかし、シリル殿下はものともせず、肩をひょいと竦めた。

 なかなかの強心臓だ。


「ちょっと待って、兄上。オマリー伯爵令嬢に話を聞くのが先だろう?」

「あれは、お前が仕組んだのでは?」

「誤解だよ! オマリー伯爵令嬢をあんな目に遭わせる気なんて毛頭なかった! 言い合いくらいにはなっているかと思っていたけれど、あの護衛があんな馬鹿な真似をするとは思わなかったんだ。……オマリー伯爵令嬢、本当に申し訳なかった。このとおりだ」


 シリル殿下が、私に向かって深く頭を下げた。


「い、いえっ……あの……ですが、シリル殿下が何か……動かれていたのでしょうか……?」


 私は、恐縮しながらもそう尋ねる。

 危険な目に遭った立場からすると、何か裏があったのならば知りたい。知る権利があると思った。

 すると、シリル殿下は眉尻を下げ、小さく頷く。

 そして、全てを話し始めた。──()()が仕組んだ、ある計画を。


 事の発端は、ポーリーン殿下の奔放すぎる行いだった。

 両親と第二王子に存分に甘やかされていた彼女は、物の道理を弁えないとんでもない我儘王女に育ってしまった。

 王女教育も中途半端なままだし、豪華なドレスに宝石、夜会にお茶会、観劇と、贅沢にしか興味がなかった。

 いや、もう一つある。


「一国の王女ともあろう者が、見目麗しい男性ばかりを侍らせ、得意になっているなど……恥以外の何物でもない」


 そう言ったのは、グローリア殿下だった。隣で、ウィリアム殿下も忌々しげに頷いている。

 ──策略に加担していたのは、シリル殿下だけではなく、彼らもだったのである。


「計画を立てたのは、私と兄のテレンスです。そして、姉のグローリアも力を貸すと請け負ってくれました。そこで、私たちはポーリーンの排除に動いたのです。……といえど、彼女が心を入れ替え、王子妃としてきちんと務めを果たしていれば、この国でそれなりに幸せに暮らせたのでしょうが……」


 ウィリアム殿下が、疲れたように吐息を漏らす。

 後は、シリル殿下が引き取った。


「でも、王族を簡単に排除できるはずもない。彼女は、両親の庇護という強くて大きな傘の下にいた。だから、彼らはポーリーンをそこから引き離すため、他国へ輿入れさせることにしたんだ。私は、それに協力した」

「シリル……」


 王太子殿下が肩を落とす。

 彼には、シリル殿下の意図がすでにわかっているのだろう。

 シリル殿下はそのまま続ける。


「テレンスから相談があった時、これは私にとってもいい機会だと思った。ちょうど、周りから結婚をうるさく迫られていてね、どうしたものかと頭を悩ませていたんだ。……相手は、ポーリーン=エイベラル。これ以上ないと思った。彼女と婚姻すれば、いずれ破綻するのは目に見えていたからね」


 私は、大きく目を見開いた。


 最初から、離縁前提での輿入れだったなんて。

 ちょっと気の毒かも……。


 と思っていたのだけれど、エヴァンに肘でつつかれ、ハッと思い直す。


 ううん。彼女は、王女としての品位に欠けていたわ。婚約者のいる男性までも側に置いて……関係を持っていた……のよね。シリル殿下がそう言っていたもの……。

 それに、彼女はオマリーシルクを貶めた。偽物を買わされたと言っていたけれど、あれは嘘よ。人を使って職人見習いたちを引き抜いて、秘密裏に作らせた。彼女自身が偽造したと言えるわ。そんなの、絶対に許せない。……許せるはずがない。


「ウィリアム殿下の言ったとおり、ポーリーンがおとなしくしていれば、そして、連れてきた専属護衛騎士たちを帰国させていれば、婚姻は継続せざるを得なかった。この場合は、私の負けだね。そうなったら、観念して彼女とそれなりの関係を築けるよう、努めていたよ」

「だが、お前には勝算があったのだろう?」

「はい、兄上」


 話の流れからすると、シリル殿下はどうしても結婚したくなかったのだろう。

 でも、王子がいつまでも独身でいるわけにはいかない。周囲も急かしただろうし、様々な令嬢をあてがっただろう。

 彼は、思い悩んでいた。そんな時、問題児との婚姻話を持ち掛けられたとしたら……

 喜んでその話に乗る。私でもそうする。だって、相手は問題児、何かしらやらかすに決まっているのだから。上手く動けば、それを瑕疵にして離縁することも可能だ。


 シリル殿下は……最初からこれを狙っていたのだ。

 周囲の要望を聞き入れ結婚はしたが、破綻した。この事実があれば、それ以上は何も言えない。永遠ではないだろうけれど、もうしばらくの間、少なくとも数年間は自由でいられる。

 そしてエイベラル側は、この婚姻が継続しようが破綻しようが、どちらでもよかった。ポーリーン殿下を国から出せれば、それでよかったのだ……。


 非情なようだけれど、それだけのことをポーリーン殿下は自国でしていた。

 テレンス殿下にグローリア殿下、それにウィリアム殿下は、これから先のエイベラル王国を考え、彼女を切り捨てたのだ。


 この決断に至るまでには、様々な葛藤があっただろう。問題児とはいえ、血を分けたきょうだいなのだから。

 矯正しようといくら努力しても、彼女は一向に変わらなかった。その度に、両親や第二王子が甘やかしてしまうから。

 こうなってしまったのは、ポーリーン殿下自身と、エイベラル国王陛下に王妃殿下、ヨハン第二王子殿下の自業自得といったところだろうか。

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