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未練なんてありませんが?  作者: 九条 睦月


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04.運命の夜会

 フランシスと交流がほぼ完全に途絶えて、随分経った。

 社交界では、ポーリーン殿下とフランシスの仲は揺るぎないものとされ、婚約者である私がむしろ邪魔者扱いだ。

 ひそひそと陰口は叩かれるけれど、面と向かって何かを言われることはない。何故なら、この国においてオマリー伯爵家を敵に回すことは、社交界での死を意味することだから。オマリー商会から品物が買えないということは、貴族にとってそれほど恐ろしいことなのだ。

 とはいえ、面と向かって言われなければいいという問題でもない。私としては、陰口を叩かれる方が苛々してしまう。


「どうして私が悪者になっちゃうのかしら」

「姉上、彼らの顔と家名は把握しました」

「エヴァン、キリがないわよ?」

「それでも、報復は必要です」


 今夜は、王太子殿下の生誕を祝う夜会が開催されている。が、私に婚約者のエスコートはない。

 フランシスの代わりにエスコートをしてくれているエヴァンは、周りの貴族たちの言動に憤っていた。


 報復は必要という彼の言葉は、決して嘘ではない。具体的な方法は聞かないようにしているけれど、エヴァンは私の悪口を言っている者に対して、これまでもいろいろやっているらしい。


「気分は悪いけど、いちいち目くじらを立ててもしょうがないわ」

「私の気が済まないのです。……大丈夫です、商会の評判を下げるようなことはしませんので」

「そこは信頼しているわ」

「はい」


 エヴァンがにっこりと微笑む。

 彼が笑うと、周囲の令嬢たちからうっとりとした溜息が漏れる。


 艶めく銀の髪に、藍色の瞳。容姿端麗なエヴァンは、年頃の令嬢たちから絶大な人気を誇っている。

 フランシスも金髪碧眼の美丈夫で人気があるけれど、彼がポーリーン殿下の専属騎士になってからは、令嬢たちの興味はエヴァンへと移っていった。エヴァンにはまだ婚約者がいないことがその理由だろう。


 令嬢からの人気が高かったフランシスが婚約者で、現状もっとも注目を集める貴公子が義弟。

 私が諸々悪く言われてしまうのは、これらが原因でもある。要は、やっかまれているのだ。

 あとは、ポーリーン殿下があることないこと言いふらしていることもある。なんだかんだいっても王女だ。彼女の影響力は大きい。


 ポーリーン殿下は、今夜もまるで自分が主役とでもいうような煌びやかな出で立ちである。そして、見目麗しい令息たちに囲まれ、ご満悦のようだ。彼女に侍る令息たちの中に、フランシスはいた。

 こういった夜会の際、フランシスは護衛からは外れている。護衛だと彼女をエスコートできないからだ。彼女は夜会の際、必ずフランシスにエスコートさせていた。


 フランシスに婚約者がいることは、皆が承知している。しかし、ポーリーン殿下に甘い国王夫妻は何も言わない。苦言を呈するのは、王太子殿下と第一王女殿下くらいのようだ。

 王族皆が常識なしでないのは喜ばしいけれど、結局は彼女の好き放題にさせているのだからどうしようもない。


「そろそろ……はっきりさせた方がいいかしら」


 ふと呟くと、エヴァンが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


「姉上……」

「エヴァン、そんな顔しないで。いい加減、こんな状態でいるのもよくないと考えていたのよ」

「この件に関して、私がとやかく言うべきでないのはわかっています。ですが……姉上はもう自由になっていいと思います」

「自由、か」


 今の私にとって、フランシスが足枷になっているのは明白。


 婚約して八年。

 お互いに成人しているし、もう結婚していてもおかしくないというのに、彼がポーリーン殿下の専属になってから話が一向に進まなくなった。会える機会がどんどん減り、ついにはほぼ会えない状況に。

 当初は必死にフランシスを繋ぎとめようとしたけれど、彼の方がのらりくらりとした態度で、どうにもすっきりしない。そのうち王女ばかりを優先し、それがさも当然という顔をするようになって、私の心は限界を迎えた。

 彼にとって、私とはそんな軽い存在だったのだ。それを嫌というほど思い知った。


 以降は、没交渉。一方的に連絡していた私がそれをやめたのだから、そうなるだろう。

 そうなってから、何故かポーリーン殿下からお茶会の誘いを受けるようになった。よくわからないけれど、ろくでもない目的なのは明らかなので、いろんな理由をつけて断っていた。


 伯爵令嬢ごときが王女の誘いを断るなど、本来ならば不敬だろう。でもそこは、家の権力を使わせてもらった。父が国王夫妻と懇意にしているおかげで、なんとか彼女を躱すことができたのだ。


 両親も、娘の婚約者にちょっかいをかける第二王女をよく思っていないから、率先して動いてくれていたのも大きい。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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