26.暗躍
短いので、もう1話更新します。
職人はそうそう引き抜けないし、後の処理も面倒だ。だから、見習いでいい。金を積めば、簡単に引き抜けるだろう。糸が用意できれば、それを染めて、織るだけだ。染色の職人はすでに用意している。その者からは、秘匿されている技術も聞き出している。だからお前は、織物職人の見習いを引き抜き、隣国に連れてこい。
そう命じられ、言われるがまま遂行した。
引き抜いた見習いたちを隣国に送り届け、後は知らぬ振り──。
胸は、僅かに痛んだ。大切に育まれている技術を流出させるのだから。
その技術は尊敬に値するもので、憧憬とも言える感情も持っていたから、躊躇いもあった。
しかし、これは必要なことだった。自身の望みを叶えるために、この命令にあえて従ったのだ。
このことが露見すれば、ただでは済まない。
それでも、手を染めた。
もう、後には引けない。前に突き進むだけである。
「我が世の春を謳歌できるのも……あと少し」
さぁ、荷造りを始めなければ。
命じられたことではあるけれど、仕掛けたことでもある。
仕掛けたのならば、それがどう作用するのかを確かめずにはいられない。
外は真っ暗闇だ。月は厚い雲に覆い隠されている。
それがまるで自身の闇を示しているかのように思え、震えながらそっと目を伏せた。
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