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58品目 鍋の具材のように放り込まれて


9月11日──

フードイーターが倒されてから約1ヶ月の月日が経った。


「パルフェクトホイップ!」

「ガゲェェッ!!」

チケットから生み出されたフードファイターをパルフェクトが撃破する。


(これでこの辺りの奴らは全て倒したな。)

「はい。」

パルフェクトはステッキからチケットを抜きとり変身解除した。


「ふぅ……事件のことや街の修復などは運営が持っている記憶改変装置でなんとかなったものの……」

完人は才牙が大量の吐瀉物と共にチケットや人間を吐き出す悍ましい光景を思い出し眉を顰める。


「まさか、こんな余計な物まで吐き出していたとはな。ただ皮肉にもキミとまためぐり逢うことも叶ったのだが。」

完人はステッキとパルフェクトのチケットを交互に見やる。


完人の顔には焦燥と安堵が混じり合い複雑な容貌をしていた。

「わたしはまただこうして完人さんと一緒になれて嬉しいですよ!もう今度は絶っ対に離れませんから!」

「…………ありがとう。」

完人は僅かに掠れた声で礼を言う。


(まさかパルフェクトという存在がここまで自分の中で大きくなっていたとは……)

完人は自分自身の理性を超えた感情を疼く胸に手を当てる。

心音が奏でるパルフェクトへの想い。

真摯に耳を澄ませたのち歩き出した。


「なんだ?」

完人は携帯を見る。


「……もしもし。英二、何の用だ?」

「早く事務所来てください完人さん!オレじゃ……オレじゃ無理ですぅ!」

「はぁ?意味が分からん。しっかりと説明しろ馬鹿。」

「いいから早くあっちょっと離して取り込み中だからぁ…………」

勝手に電話が切れてしまった。


「何があったんでしょうか?」

「無視したいところだが、そうも言ってられん。全く慌ただしいことこの上ない毎日だ。」

完人は事務所に向かう。


「入るぞ、完人だ。」

「はあ……助かりました。」

顔パスで事務所に出入りした完人の前には汗だくの英二がいた。


「なんだその汗は?空調の行き届いた部屋で何があった?」

「その……早速なんですがぁ、完人さんて女性の体型はスレンダー派ですか?ムチムチ派ですか?」

「帰るぞ、パルフェクト。」

英二の質問に答えることなく完人は事務所を去ろうとする。


「待ってください!答えてください!」

「悪いがオレはお前の様な低俗な趣味は無い。強いて言えばパルフェクトだ。」

「そ、そんな……完人さぁん………っもう!」

パルフェクトは声をとろけさせる。


「いやそういう事じゃなくて、答えてくれないとオレの命がもたんのですよ!」

「お前は幽霊の身分で死なんだろうが。自分の立場さえ見失ったか。愚かな事……」

「いやそうだけどそうじゃないんですよ!もういい直接来てください!1個一万円の最高級どら焼きもあるんで!」


完人はどら焼きを噛み締めながら階段を登る。

「最初からコレを出せコレを。なんだか……騒々しいな。」

所長室に近づくにつれて騒がしなる事に気づく。

「その……そうです。」


完人はどら焼き最後の一口を頬張りドアを開ける。

「何があった……む?」

完人は所長室に舞味と見知らぬ女性の姿を発見する。


「あって完人君〜!丁度良かった。ねぇ、あの女の格好どう思う?谷間やら太ももやら二の腕やら露わにしちゃって!まぁ〜下品ったらありゃしないでしょ!」

舞味が言った通り、その女性は丈の短いタイトスカートで脚の大部分が露出しておりその上ノースリーブのシャツから胸を曝け出していた。


「興味ない。そんな事を考える暇があったらこのどら焼きの事について一筆記した方がよっぽど有意義だ。」

完人は全く舞味の質問を一蹴する。


「この目…………ホントに興味ないのね?性欲あるの?」

舞味は完人を奇異の目で見つめる。


「ハァ!?完人さんはエッチな事なんて一切かんがえないんです!スイーツに首っ丈なんです!ドSだけどスケベじゃいのが完人さんなんですよわかりますぅ?」

パルフェクトが突然叫びだす。


「まぁ落ち着け。知識はあるし経験もある。だが元々その類の欲求が薄い体質ではあるらしい。実際女性の服をひん剥くよりもホールケーキのラベルを剥がす方が興奮するからな。」

「へぇええ……えぇ……」


「ヤベ……人選ミスったかも。」

完人の異常性に舞味と英二が驚いていると


「へぇ〜そうなんですか?でもそういうのもアリだと思いますよ〜?」

例の女がついに口を開く。


「なっ……」

「カッコいいじゃないですかぁ?スイーツに一直線で真っ直ぐな所。」

女は完人の二の腕に胸を擦りつける。


「やっぱりわたしのところに来る女性はわたしの事だけ見てる人ばかりだから……それは凄く嬉しいんだけど新鮮でぇ〜……」

「ちょっと離れなさいよ!」

舞味が完人から女を引き剥がす。


「さっきからこの女は誰なんだ?」

「F.F.F新所長飾侍優香(かざむらゆうか)です。」

優香ははんなりとした態度でお辞儀をする。


「新所長だって!?掛はどうしたんだ?」

目を見開き完人は尋ねる。


「あの人はぁ……」


完人は優香が告げた住所へ向かっていた。

「ここか。」

完人が立っていたのは『垂尾』という表札のぶら下がったぞ。家の前に来ていた。

「まさか一軒家に住んでいたとは。」

「想像出来ないですよね。」

掛の家は菓子折邸程では無いにしろ大きな建物であった。


「初めてだな。何気に奴の家を尋ねるのは。」

完人はインターホンを押す。


しばらく待っているとドアが開かれる。

「完人、お前なんでここに……」

ドアを開けた掛の顔はややくたびれていたが完人は敢えて触れずに話を進める。

「所長をやめたと新所長を名乗る女が言っていた。こっちは何も聞いていない。話を聞かせてもらおうか?」

「まぁ……それは、とりあえず上がんなよ。」


リビングに連れてこられた完人はそこで信じられないものを目撃する。


「そいつは!?」

「あぁ……あの現場から拾ってきたんだ。微かに息があったからさ。」

完人が目を見張ったもの。

それはリビングのど真ん中に不自然に備え付けられたベッドで眠る才牙の顔であった。


完人はましまじと寝息を立てるその人物の表情に着目する。

体は痩せ細り、髪の色も黒に戻っていたがまさしく自分達が目標として敢然と立ち向かった最恐の敵そのものであった。

「オレは才牙がまた日常を過ごせる様になるまでしばらく所長の座から降りるつもりだ。もちろん、運営には尽力するがな。」

「そ、そんな………お前正気か?」

完人は掛を見る。


(これは……深掘りして良いものなだろうか。)

どこか幸せそうな笑みを浮かべる掛にかける言葉を選んでいると突然


「タスケテクレェエエ!!コロサナイデクレエエッ!!」

突如ベッドから飛び起きた才牙が暴れだす。

見るもの全てを拒絶する様な目に大量の涙を撒き散らしながら叫び出す。

「大丈夫!大丈夫だから……落ち着いて……落ち着いて…」

まるで赤子をあやす母親のように優しい声で語りかけながら掛は才牙を抱きしめる。


「うぅむ…………これは……」

その光景に完人は物申したい思いをぐっと喉元で堪え目を背けた。

「見ていられないな。色々な意味で。」

小声でそう呟いたのち


「すまない、近況が知れたので失礼する。」

完人はこの空気から早く解放されたかった。

部屋を出ようとしたその時


「才牙さぁん?生きてるなら生きてるって言ってくださいよぉ!!」

「誰だ!?」

完人は気配と共に振り向く。


「お前は……」

完人達の目の前に現れたのは長い唾の帽子にロングチョッキを羽織る長身の男。

丸サングラスから覗く目は才牙を捉えていた。


「オレ?オレはグトン。えーと…侵略宇宙人って言ったら分かるかな?」

グトンは首を曲げ完人の方を向く。

「残党か。才牙に皆殺されたものかと思っていたが。なんの用だ?」

完人が目的を尋ねる。


「才牙さんの細胞を奪いにきました。宇宙中でも才牙さんのおかし細棒は才牙だけのオンリーワンなのよねぇ〜」

「やめろ!もう才牙は違う、おとなしくじっとさせるのが彼にとっての救いなんだ!」

「いやいや……ちょっとチクっとするだけですよ…」

才牙を抱きしめる掛にグトンが近づこうとした瞬間


「フン!」

完人が腕振り上げ背後からグトンを殴り飛ばす。


「ってえ!馬鹿力ヤバ!!」

グトンは倒れなら背中をおさえる。


「ここで散れ!オーダー!」

即座にパルフェクトに変身し、剣を振り下ろす。

その瞬間


「ホイットな!」

「な!?」

「へぇ?」

グトンは2つの光の壁を作り出す。


そこから漏れ出す光にパルフェクトと掛は吸い込まれてしまった。

「あーあ、非力なモンだからつい戦わず異世界送っちったわ。やらかしたー。」

グトンは棒読みで才牙に近づき注射器を突き刺す。


「マジでチクっとするだけなのに大袈裟過ぎるんよなぁ。」

掛達に対する愚痴を吐きながら血液を採取する。


「さぁて、こっから焼肉食って二郎系平らげて、スパ銭で一っ風呂かましてそのままマッサージ寝落ちして、晩飯回転寿司がマストっしょ!」

そう言いながら彼は室内から姿を消した。


その頃

「ぐあああっ!!裕太、大丈夫か!?」

(なんとか!?ううっわあああ!!)

メンドと裕太は次元の狭間に抜け出せずにいた。


「ど、どうすりゃ……!ハッ!」

メンドはめぐるましく変わる視界の中で今までに見たことのない一筋の光を発見する。


「よし!」

メンドはもがきながら必死に光の方へ近づこうと手足をばたつかせる。


「おうおう行ける行ける!あの光が近づいてやがるぜ!」

もがけばもがくほど光が目の前に迫っていた。

メンドは死にもの狂いで手を振り回す。


そして

「掴んだー!」

その瞬間メンド達の目の前が白く染まり


「……うん?」

裕太は目を覚まし周囲を見渡した。


「どこ…………?」

辺り一面が黄土色の砂が支配する乾燥地帯の様相であった。


「え?砂漠?」

裕太は立ち上がり再び周囲を見渡しどの方位にも砂だけが見える事を確認する。


「ええーーーっ!!!」

裕太は1人、みちのちの砂漠の真ん中で叫ぶのだった。

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