55品目 至極の一杯
「ふぅ………出来ましたよ!メンド様!」
店主の額に巻かれた黒いタオルは普段以上に汗ばんでいた。
醤油スープのむせかえるような匂いを醸し出す煙に包まれる至極の一杯が10並んでいた。
「よくやったな……しっかり休め。」
(これで少しでも元気づけてやるぜ!)
そして数分後。
速達で送られた一杯を見た掛は
「コレは………ジュルリ……」
「あっオメェ今無意識にヨダレを啜ったな!ほらほら、まずお前から食いやがれ!」
「え?まぁお言葉に甘えて…」
メンドに勧められ掛はラーメンを啜る。
(あんま食欲はないがな………)
「うん!?」
そう言いながら一口入れた瞬間は流れるように次にスープを流し込む。
そしてチャーシューをかじり
「うま……」
と小さく呟き再び麺を啜る。
「へへへ……麺屋烏川withメンド特製極上醤油だ!そんじょそこいらの一杯とおんなじだと思うなよ?」
メンドの声を耳に入らず掛は黙々と食べ進める。
そして
「アレ……スープ全部飲んじゃった……」
掛はまさかドンブリの中身を空にするつもりがなく白い面が映るドンブリを見てやや驚く。
「美味かったよな?」
メンドは美味いこと前提で質問する。
「うん……なんというか、一瞬だった。もう食べ始めたら止まらない、凄いラーメンだったぞ!ありがとうメンド!」
「へへ、いいって事よ!早く裕太やデリッシュ達にも食わしてやれ!今麺屋烏川の店主に追加を作ってもらってるトコだ。ここにいる食いたい奴らにゃ好きなだけ食わしてやるぜ!」
そして10分経たないうちに
「ひゃー店主大変だろうな……裕太がいればオレも手伝えたんだけどよぉ……」
屋敷内は香ばしい香りで溢れかえてっていた。
苦難の連続で憔悴しきった職員の心を掴み過ぎてしまったのだ。
「メ、メンド………」
机にあるメンドのチケットに目を合わせず震えた声で裕太はメンドに声をかける。
「なんだよ裕太?おかわりならちょっと待ってろよ?」
メンドは普段と変わらない声色で応じた。
「もう一度……こんなオレと戦ってくれるかな?一度投げ出した……オレと…」
「…………」
裕太はメンドの沈黙に確信を得た。
「そうだよね……ごめん…オレは………もう……」
裕太は顔を俯き大粒の涙を堪えきれなかった。
「……へへ…」
「え?」
突然、メンドの小さな笑い声が響き裕太は顔を上げる。
「ハハハ!!一度投げ捨てたフィディッシュブレス付けて戦う気満々のクセになーにしけた事言ってんだよこの野郎!笑わせんじゃねぇよー!」
メンドはおかしさに笑いを隠せなかった。
彼がブレスをつけて覚悟を決めているのにも関わらずなぜこのような質問を自分に投げかけたのか分からなかったのだ。
「もう一杯食っとけ。食わないともたねぇぞ。あっでもちゃんと噛めよ!」
「………分かった!」
裕太の目の前に大盛りのドンブリが置かれる。
「……いただきます!」
「面白ぇなぁ!そんな叫ぶかよ?」
一心不乱にラーメンに食いつく裕太を見てメンドは笑っていた。
「サンキュー裕太、お前はいい性格のやつだ。これくらいの男なのは会った時から分かってんだよ!」
「ごちそうさまでした……行こうメンド!」
「っしゃ!」
裕太はチケットを手に取りブレスに差し込む。
「オーダー!」
コガシショウユフォームのメンドに変身し菓子折邸を飛び出した。
「……デリッシュもラーメン食べたかな?」
「こんな美味ぇラーメン食わねえねえだろ!」
「ちょっとさっきから自信過剰過ぎない?」
「これぐらい当然だっつの!」
2人はくだらない掛け合いをしながら決戦の場へと向かうのだった。




