41品目 つまみ食いならぬさらい食い
「あんな警備員、前はいなかったっスよ…………」
近くの展望台から双眼鏡を用い英二は事務所周辺を覗いていた。
「あぁ、おそらく正面から行っては無理だろう。」
横にいた完人も手持ちの望遠鏡片手に答える。
「よかったぁ……前に学校に忍び込んだ時みたいに正面から行こうって言ったらどうしようかなって思いましたよ………でも正面から行かないとなると?」
「あの屋上から行くしかあるまい。」
「オーダー」
完人はパルフェクトに変身する。
「トッピング魔法!ふわふわフロート!」
わたあめのトッピングチケットをステッキに装填し魔法を発動させる。
するとパルフェクト達の目の前に人間以上のサイズの宙に浮かび上がるわたあめが出現した。
「よっと!」
パルフェクトはわたあめの上に飛びのる。
「筋斗雲みたいだ………」
空中のわたあめの見た目に思わず英二が呟く。
(そんな事を言ってる暇があったら、さっさと返信して乗れ!)
「はっはい!オーダー!」
英二もピッザァーに変身し、上に乗る。
「おっとっと、意外と立つのムズ……」
床面はわたあめな為とても柔らかくピッザァーは乗った瞬間僅かによろめいた。
「大丈夫ですか?では、出発しますよ〜!」
ステッキを事務所の方角へ向けるとわたあめは真っ直ぐと空へと進んでいった。
「アレは………」
事務所のウィンドウからはこちらに向かってみるみるも近づいてくるパルフェクト達の姿がくっきりと写っていた。
「パルフェクトだ………」
「もしかして舞味が戻ってきたのと関係が?」
職員達の間でどよめきが起こるが彼らの目には希望が灯り始めていた。
「何を突っ立っている?」
「わぁ!しょっ、所長!」
だが職員達の希望の灯火は不意に響く才牙の声によってかき消される。
「な、なんですかソレは…………」
腕を組む才牙の背後にはフィディッシュチケットから作り出した怪人が多数立っていた。
「アイツらに挨拶がわりだ。心配するなぁ……侵入する不届者はオレ自ら叩き潰してやろう………」
才牙は怪人達を従えは部屋を出る。
事務所の廊下は才牙を筆頭に怪人達が列を作り後に続く異様な光景が広がっていた。
「フッフッフ………そうだ。」
才牙は何かを思いつきとある部屋のドアを開ける。
部屋には『開発室』の看板が添えられていた。
「さすが菓子折博士の娘だ。ここまで出来るなんて予想外だったぞ?」
才牙は室内にあるとある物を見て目を見開く。
「…………」
対照的に舞味は目を俯かせ沈黙する。
「少し………つまみ食いをしても良いかな?」
才牙は机の中心にあるそのブツを手に取る。
それは多数のケーブルに繋がれていたフィディッシュブレスのような形をした腕輪だった。
「どうせあなたには何を言ったって無駄なんでしょ?」
震える声でやっと舞味が声を絞りだす。
「食える時には食うのが常識。それだけだ。」
「………大まかな機能は全て使える。あとは最終調整だけ。もう、出ていって……この部屋から出てって!」
舞味は恐怖から才牙を押し退け扉に鍵をかける。
そしてふと窓を見る。
「………え?」
窓には見慣れた2人のフードファイター達が写っていた。
「つまみ食いって………まさか!」
「降り立ちますよ、つかまって下さい!」
パルフェクトは手を伸ばす。
「は、はいぃぃっっ〜!!」
手を掴んだ瞬間わたあめが消え体ごとパルフェクトに腕をひっぱられる。
「よっと。」
「っだはあっ!!」
パルフェクトは事務所屋上の着地に成功するもののピッザァーは顔から屋上に激突する。
「くぅ〜フードファイター変身してなかったら死んでた………いやオレ死んでたわ……混乱してるぅ……」
(ピッザァー、パルフェクト!構えろ!)
完人の張り詰めた声で2人は即座に臨戦体制に入る。
屋上には瞬く間にフードファイターの怪物が多数出現していた。
「ブリの照り焼き、エビピラフ、豆腐ハンバーグにメロンシャーベット……めっちゃいるんだけど!」
「英二さん、よく原型分かりますね?わたしは見た目が怖すぎてそんなの考えらんないですよぉ…………」
そんな怪人達の中を掻き分け才牙が2人の前に姿を現す。
「やぁ、プレイヤーからの直談判は受け付けてないが?」
(白々しい事を言うな!今更オレ達が、プレイヤーと運営としての関係を保てると思うならば能天気にも程があるぞ!)
「吠えるくらいなら………実力で示せ。宇宙はそうやって回ってる……バーナード!」
待ち構えていたのか、バーナードは呼びかけられすぐ出現する。
「サシミモリを倒せる絶好の機会を与えてやったぞ?笑って終われるか泣いて終わるのかは、お前ら次第だ………」
才牙はそう言いながら背を向ける。
(どこへ向かうつもりだ!)
「仕事だよ…?所長は本来忙しいんだ…………あの掛を基準にしないでくれたまえ……」
「スプラッシュホイップ!」
パルフェクトが才牙に向けて攻撃を加えるが
「ハッ!」
バーナードがクリームを溶かし無効化した。
(そう。あの人の言う通りだ……宇宙は吠えるやつより実力のあるで回ってる…………出し惜しみはしない、食われる位なら!)
「オーダー!」
自分の立場や理解したバーナードは力任せにチケットをブレスにねじ込んだ。
「お前らさ、コレ運んできてくんない?オレ後から行く。」
その頃、フローズンは氷漬けの姉妹宇宙人を運んでいた。
「コールっちどこ行くの?」
「ナイショ。」
コールホールはそそくさと4人と別の道へと向かっていった。
「………………」
コールホールは人気のない高架下で携帯をブレスかざしアプリを起動させた。
昼間でありながら影により夜のように薄辛い場所で携帯の画面だけがコールホールの顔をぼうっと照らす。
彼はアプリ内の掲示板のスレッドを見ていた。
スレ名は『【速報】フードファイターの失踪、3日連続で起こる……これもうマジだろ』
(まさかとは思うけどね………)
掲示板にはコールホールが立っている高架下の画像が写っていた。
そして一つの書き込みに流れにコールホールは注目する。
『今気づいたんだが………被害場所って頂枡市のエリアって2日続けて近辺では起きてないんだよ
昨日の高架下って市の南部だけど、2日前のやつは真反対の方角で起きてる
さらに3日前は市の東側の海岸沿いで起きてるし
あと被害場所の近くって100メートル圏内で肉系の飲食店もしくは屋台がある場所なんだよな』
『マジやん』
『ガチでゾッとしたわ
これガチやろ』
『あーあ消されるわコイツ』
(という事は、次の場所は市の西部で肉系の飲食店が100メートル圏内…………ここしかない!)
コールホールは思い当たる場所に急行した。
そして2分後…………
「な………」
衝撃的な光景にコールホールは目を疑う。
「助けて!助けてぇ!!」
人間とは思えない程に大きな口に一体のフードファイターの下半身が完全に飲み込まれていた。
「ぎゃああ!」
その瞬間その口はさらに膨張しフードファイターを完全に飲み込んだ。
「ペッ!」
その化け物はしばらく咀嚼して何かを吐き出す。
出したのは紫色というこれまた人間離れした唾液で身体中にまとわりついた人間だった。
「豚の生姜焼き……並だな。」
その瞬間化け物──才牙の手にあるブレスが妖しく赤色に光った。
「なるほど、こうやって力を…………次はデザートだぁ……」
才牙はコールホールを見て舌なめずりをした。




