39品目 人は食わない
頂枡市の南西。
木々が生い茂る小高い丘の頂上に素朴な雰囲気を感じさせる邸宅が建てられていた。
住居全体を取り囲む拡張高いフェンスに設けられた門には「菓子折」の表札が備えられていた。
洋風な雰囲気を感じさせる巨大なリビングに1人
「よし………あと少しだ………」
広場とした空間を持て余しながら作業に全神経を集中させる舞味がいた。
「ここに置いておくぞ。」
背後から音もなく静かに部屋に立ち入った掛はコンビニの袋を取り出しながら作業に没頭する舞味の横に並べていく。
「…………」
掛は彼女の真剣な眼差しを一瞥するとすぐさま部屋の片付けを行う。
彼女の周りにはお菓子やカップラーメン、弁当や惣菜のトレイや袋、容器が無造作に散らばっていた。
掛は邪魔にならないよう足音を最小限に抑えそういったゴミを拾い集める。
「コイツ…………これが好きなのか。」
掛は片付けを進める中で特定のお菓子の袋が多く捨てられていることに気づく。
(また買っといてやるか。)
掛は脳内にそのお菓子のことを片隅に置きながらゴミ袋に集めていく。
(こんなもんか……)
掛が全てのゴミを拾い集めた瞬間
「出来たーーーっ!!!」
突如として鳴り響く叫び声に掛は思わず腰を抜かす。
「ん?」
舞味は掛が倒れる際の物音に思わず振り向く。
「え?いたの?」
舞味の目の前にはゴミ袋を抱えながらピクピクと痙攣している掛の姿があった。
「ごめん驚かして……」
舞味は掛に近寄ると
「うっうぅ…………」
白目を剥きながらおちょぼ口の表情を微動だにしない掛の顔が映り込む。
(驚いてんのかよコイツ………)
舞味は思わずため息を吐く。
「………でも出来た!」
舞味は左手に挟まれた2つのチケットを見て目を輝かせる。
「裕太君と完人君の因子から作ったフードファイターの力を極限まで引き出すチケットと、デリッシュちゃんの因子から作ったフードファイターの力を減退させるチケット!これさえあれば才牙なんてけちょんけちょんよ!」
「オレの力を舐めてもらっては困るな。」
不意に耳元で囁く声が聞こえたが、舞味は悲鳴を上げる間もなくその場から姿を消した。
F.F.F運営事務所──
「やはりあの博士の娘というだけの事はあるんだな。良いもの作ってくれた。」
才牙は値踏みするかのような視線で拉致した舞味を見つめる。
舞味は手足をロープで拘束されていた。
「だが今のオレの食事には…………いらなぁい。」
そう言いながら才牙は職員に2枚のチケットを押し付ける。
職員は舞味に対する申し訳なさを視線で送りながらそそくさとその場を去っていく。
「アナタ………ほんっとふざけてる。久々に事務所を見てみたけど、なんでこんなにあちこち傷だらけなの?さっきアナタがチケットを渡した子の表情見た?最低ね。最低最悪の所長だわ!」
舞味は恐怖していたがそれ以上に才牙への怒りが上回っていた。
「あんなメチャクチャな配布や強さインフレを促すようななんてしたら、後から収拾がつかなく事分からない?目先の盛り上がりばかりで、長期的な目線が一切ない!その上誰も彼も、アナタの下で働いてる人間は皆涙を堪えてる!何が狙いか知らないけど、コレ以上F.F.Fを………父さんの想いに泥を塗らないで!」
全身鳥肌をたて冷や汗を流しながらも怒りと不満を吐き出し職員達の叫びを代弁した。
「……………うーん……」
「……は……………?」
舞味は才牙の弁当に心拍数が上がり始める。
(意味がわからない………なんなの?)
彼女には今の才牙の全てが不可解でしかなかった。
才牙は先ほどまでの鋭い目つきから一転、口元が僅かに開きやや首を傾げていた。
そしね大きな目を一際大きさせて腕を組み挟める。
彼が話を聞いていたのかいなかったのか。
どちらとも取れない反応に舞味は言葉を失う。
「なんだ……………怒る方も起きんから意味もなく呆けてみただけでこのザマか。」
突如出てきた彼の言い分は舞味をより一層恐怖させた。
そして才牙は立ち上がる。
「もう止まる気はない。腹が減っているんだ。」
そして突如舞味の髪を引っ張り上げ壁に叩きつける。
「今からいうものを即座に作れ!出なかったらお前を喰う!」
「はぁ……はぁ……」
才牙への恐怖が限界へと達した舞味は涙が止まらず過呼吸になる。
「オレは地球人いや、その星で文明を築いている生物の肉は嫌いだ。不味いからな。そしてオレは不味いものを喰うことが世界で1番嫌だ。そんなオレがお前を喰うことを選択肢に入れているんだ?意味が分かるな?」
才牙の意味不明な言い分の理解の有無に関わらず舞味はとにかく首を縦に振った。
「オレを不機嫌にさせるなよ……?ここの職員が可愛いなら尚更な………開発担当!」
そして突然怒鳴りながら舞味の髪を離す。
また一つ、所長室の壁に傷が増えた瞬間であった。




