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4品目 アディショナルオーダーでフォームチェンジ!


灰色の高層ビルが軒を連ねる都心の中心街。

その中の一棟の誰も気づかぬ遥か頂上に這いつくばる人影があった。

「さぁてさて、この中にフードファイターは何人いるかな〜?」

そう語るのは黄色い髪の毛が特徴的な男だった。

男は這いつくばる体制のまま両指で輪っかを作り地上を覗き込む。


彼の視線の先には目的の為行き交う人々が絶え間なく映り込む。

男はそれを見てかすかに微笑むと起き上がりそのまめ胡座をかく。

 

「ポチッとな!」

男は『F.F.F』アプリを起動し『ランダムマッチ』を起動する。

「来るっかな?来るっかな?フッフフッフ〜ン!フードファイター来るっかな〜?」

男は口ずさみながら大の字で仰向けに寝転がる。


上空で吹きすさぶ風と照りつける紫外線を物ともせず男は笑顔を絶やさず待ち続ける。

 

「来た!」

男の携帯にマッチ成立を知らせる通知音が鳴った。


男は即座に起き上がり対戦相手を知らせる画面を見る

「来ました来ましたよぉ〜!まぁたオレの食い物にされる餌が〜!!」

彼の脳内は圧倒的な勝利への確信が占めていた。


「一度敗れれば次は無い……弱肉強食!()()F.F.Fはまさにオレの為にあるようなモノだぁ〜!」


男はそのままビルから飛び降りる。


麺屋烏川──

「メンド様、新メニューです!」

店主はメンドに一杯のラーメンを差し出す。

(店長……完全にメンドを崇めてるよ。)

裕太はその言葉をなんとか喉元で受け止める。


メンドの丼を持ち上げ手をかざす。

「なるほどな、塩のあっさり感を引き立たせる為に醤油以上にダシの濃さを抑え優しい口当たりにしたのか。最近は塩でもこってりとしたスープの塩ラーメンも多いからな。独自性を持たせるのは悪くない。」

「ありがとうございます!」

店主はメンドからの言葉を受け跪く。


「随分と工夫を凝らしたのが伺えるな。新メニューとして出しても問題無いだろうよ。」

「ありがどうございます!」

店主はメンドの言葉を聞いてすかさず厨房へ戻っていった。


(ねぇメンド?)

「なんだよ?」

メンドの脳内に裕太の内なる声が響く。


「もう終わった?なら変身解除して帰りたいんだけど……」

「終わったっちゃ終わったな。でもどうせ今日暇だろ?だったらこれからフードファイターをブッ飛ばすつもりだけどな。」

(え?)

するとメンドは裕太の携帯を取り出しブレスに携帯をかざす。


「コレを使えば戦いもラクになるって分かったからな。この『ランダムマッチ』ってのを使えば近くのフードファイターと戦えるんだよな?」

早速メンドはランダムマッチのボタンをタップする。


(ちょ勝手に!)

「早速来やがった。位置情報は……ココか。」

メンドは店を飛び出し相手の待つ場所へと走ろうと一歩を踏み出した瞬間


「いや待てよ?」

メンドは唐突に立ち止まり顎に手を当て始める。


「オレの姿だと目立って仕方ねぇから裕太お前がいけ。」

(はあぁぁぁーーー!?)

メンドは裕太の叫びを無視して変身解除した。


「ホント勝手過ぎるって!ついこの間リーフスを探す為にその姿で走り回ってた癖に……………」

裕太は走りながらメンドの振る舞いに不満を漏らす。


「はぁ?オレ様の話を2回もあしらった癖によく言うぜ!」

チケット状態のメンドは抗議する。


「そうだっけ?」

本当に身に覚えの無い裕太は首を傾げる。


(コイツゥ………!)

メンドは裕太に食ってかかりたい気持ちをぐっと堪える。


「てかいっつも近くにいたあの女はどこ行ったんだよ?」

「いっつも近くにいるとか人聞き悪いから!デリッシュって呼びなよ。確か朝からバイトとか言ってたような……」


「はくしっ!あっすいません!ご注文はお決まりでしょうか?」

(誰かがわたしの噂を?)

メンドがフードファイター探しに奔走していた頃デリッシュはバイトの真っ最中だった。


「この『ストロベリーアイスパンケーキ』を頂きたい。」

「かしこまりま………あなたは……」

デリッシュは客の顔を見て思わず手が止まる。


「どうした?注文が聞こえなかったのか?」

目の前にいたのは壁沢完人だった。


「いや……あなたはもしかして、前にコンビニで人を持ち上げていたおやつがどうとか言ってた……」

「なんだ?あの愚か者に私刑を与えていた姿を見ていたのか。まぁいい『ストロベリーアイスパンケーキ』を頼む。」

「かしこまりました………」

デリッシュは注文を伝えに席を離れる。


(フードファイターにも負けず劣らずな超人的な筋力………ある意味魅力的な力ね。絶好のチャンスが来た……!)

デリッシュは心中で完人に狙いを定める。


「全く……あの日の件で声をかけられたのはコレで3度目だ。煩わしいことこの上ない……すまない追加注文で、紅茶を貰おうか。」

完人はデリッシュを呼び止め紅茶を頼む。


「かしこまりました。紅茶ですね。あとすいません………」

デリッシュは完人にやや近づき


「この後11時から会いましょう……」

声をひそめて誘いの言葉をかける。


「何…………?」

完人は眉をひそめながらデリッシュの顔を見る。


「むっ無理にとは」

「好きにしろ。さっさと注文を取り付けたらどうなんだアルバイト。」

「はっはい………」

デリッシュは言われた通り2つのメニューの注文を伝えた。


(やはり独特ね………地球に来てからはや3日でもあの男が異質なのは分かるわ……)

デリッシュが完人の事を考えていると


「ここかぁ!」

「え!?この声は……」

デリッシュの耳に聞き馴染みのある豪快な声が響く。


「ここにいんだろ?オレと戦うフードファイターが!」

「メンド!?」

メンドは扉を叩き店内に入り込む。


「フフフ………その通りですよ。」

デリッシュの背後からメンドの声に呼応するように立ち上がる人間が1人いた。

「え?まさか!」

デリッシュが振り向くと背後の男はブレスとチケットを構えていた。


「フフフ……変身した状態で来るだなんて。やる気に溢れる新人フードファイターは見ていて面白いですよ。そんなやる気だけの新人を叩き潰すのさらに面白い!オーダー!」

男がチケットをブレスにセットした瞬間


「消えたッ!?」

デリッシュの視界から男が消え去る。

そして2秒後


「いや、あそこだ!」

完人がとある方向を指差す。


「クソッ、離せぇ!」

「フフフ、アスパラガスのベーコンがすぐ取れたら萎えるでしょう?だから離しませんよ!」

「お前はアレか!アスパラガスのベーコン巻きのフードファイターか!」

「その通り!ワタシの名は、スクロールパラガス!」

ベーコンに巻かれるメンドを嘲笑するフードファイターの姿があった。


「トッピング!」

メンドはそのベーコンを切り裂く。


「ほほう、トッピング能力を扱えているとは……」

「次はお前がこうなる番だ!」

チャースラッシャーを片手にメンドは突っ込んでいく。


「あのブレス………先日の不可解な光景と同じ」

「そんな、バイト先にフードファイターがいたなん……」

「「え?」」

2人はそれぞれの言葉に驚き顔を向き合わせる。


「知っているのか………?」

「まさかあなたも……?」

2人が顔を合わせる中メンドの戦いは続く。


「チャースラッシャー5枚載せ!」

メンドは5枚の円盤を一斉に投げ込む。


「ベーコンガード!」

相手はベーコンの壁で次々と防いでいき

「巻き取り……カウンター巻き!」

チャーシューを巻き取り投げ返す。


「クソッ!肉を肉で巻いてんじゃねぇ!」

「でも美味しいでしょう?アスパランス!」

スクロールパラガスはアスパラガスの槍を突き刺すメンドに突き刺す。


「おおっと!!」

メンドは間一髪で避ける。


「攻守一体のバランスが良いな……正直言って強ぇ!」

「当然でしょう。現在ランク712位と過去最高を達成したばかりのワタシに勝てる訳!フフフ!!」

スクロールパラガスは勝ちを確信し高笑いする。


「クソッ……オレも何か……そうだ塩!」

メンドは先程の塩ラーメンを思い出す。


すると目の前が光り輝きだし

「これは……塩ラーメンのフィディッシュチケットか?」

メンドは2枚のチケットを受け取る。


「なっ……目の前でチケットが生成?」

スクロールパラガスの笑いが止まる。


「よくわかんねぇけど行くぜ!」

メンドはチケットを構える。

そして

「アディショナル」

と唱え醤油ラーメンのチケットを抜き塩ラーメンのチケットを差し込む。


その瞬間メンドの体が青い光に包まれその出立ちが変化する。

「なんだそれは!お前のような995位の低ランク帯の奴が、フォームチェンジなんて!」

メンドの変化にスクロールパラガスは思わずたじろぐ。

 

「フォームチェンジ?なるほどな……つまりさっきのは言うなればショウユフォームで今のはシオフォームって訳か。」

メンドの体にはショウユフォームの時についていた鎧が取り外され塩ラーメンのスープを思わせる薄黄色のローブとマントが付けられていた。


「じゃあお前を。さらにあっさり倒してやるよ……」

そう言い残しメンドはその場から姿を消す。


「なっ……アスパランス!」

スクロールパラガスは慌ててアスパランスを出し両手で構える。

「どこだ………どこにいったんだ……?」

スクロールパラガスは目を凝らし周囲を見渡すがメンドの姿を一向に捉えられずにいた。


「そこか!」

スクロールは僅かに風で地面の草木が揺らいだ方にアスパラ

ンスを叩きつける。


「こっちだよ!」

「ぐあっ!」

メンドは背後から肘打ちを喰らわせる。


「……………節穴だな。」

メンドは腕を組み悠々とした態度で言う。


「黙れぇ!」

激昂したスクロールパラガスはアスパランスを握る手に力が入る。

そして怒りそのままにメンドに襲いかかる。


「遅ぇよ!」

「がぁ!」

またもや一撃も与える事なくスクロールパラガスは攻撃を受け倒れる。


「よっと!」

メンドは目に止まらぬ速さで相手から距離を置いた。

 


攻撃はメンドに当たるが鎧が攻撃を受け流していく。

「塩の流れについて来られるかよ!」

メンドは間合いに入ると両足を伸ばして飛び蹴りを喰らわせスクロールパラガスを空高く吹き飛ばす。


「トッピング!」

メンドはもう一枚のチケットをセットするとローブに野菜が彩られる。

「おぉ………確かに塩ラーメンに野菜は最適だな!」


そしてメンドは飛び上がり

「ソルトスマッシュ!」

ローブをひるがえし相手に当てて叩きつける。


「ぐはあ……!」

スクロールパラガスは倒れ変身解除する。

腕からブレスが消えて彼の持っていたチケットがメンドの元に渡る。


「っしゃ!2連勝!」

メンドは腕を突き上げる。


「ほぇ〜あのランク帯でアディショナルを使えるなんて〜!なかなか面白い子が入ってきたんだな〜!」

その様子を別のフードファイターが遠くから眺めていた。

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