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31品目 シメは辛くも甘い

「…………」

バーナードは目の前の状況に思考が追いつかなかった。


「コガシショウユフォームの力、見せてやろうか?」

黒い姿のメンドは拳を突き合わせじりじりとバーナードとの距離を詰めていく。


「……チッ、ああああ!!」

バーナードは舌打ちをすると立ち上がる。


「燃やして死なねぇなら、拳でカタをつけてやる。」

バーナードも拳を握り締め構えを取る。

「そうこなくっちゃ。」

メンドは静かに笑みを浮かべ足を止めながら構えを取る。


(メンド、ここで負けたら後がないの、分かってるよね?)

裕太は声が震えるのをなんとか抑えながらつぶやく。


「心配すんな…………あっさり倒してやるよ。」

メンドは低く重い声で宣言する。


「くっちゃっべってる場合か!」

先制攻撃に出たのはバーナードだった。


「フン!」

バーナードの右ストレートをメンドは手のひらで掴み受け止める。


「!」

バーナードは良からぬ気配を感じとり距離を取ろうとするが

(振り解けない……!)

自身の右手を掴むメンドの左手はまるで一体化したかのようにその場から離れることは無かった。


「クソッ!」

バーナードは左手から火球を足元に放つ。

凸凹の床に落下した火球は光を放ちながら爆発しさらに体育館の床を抉り取る。


「おおっと!」

メンドも流石に手を離し衝撃から身を防ぐ体制に移る。

「………っぶねぇ。」

バーナードもメンドから距離を離した。


「足元に火球を放って否が応でも離れる状況を作ったのか、危なっかしい事しやがって。」

(それだけ本気だよ、相手も。多分デリッシュと繋がってるって事を言ってしまった以上生きて返すつもりは無いんだと思う。)

「だろうな。べつにそうじゃなくても負ける気はねぇよ。」

バーナードの自他共に顧みない戦法にもメンドは一切怯む事なく相手の出方を伺っていた。


(アイツの手………なんなんだ。)

バーナードはメンドに触れた時の感触を思い出す。

(さっきまでとはまるで違う………)

「まだ終わらんぞぉ!」

冷静に現在のメンドの状態を分析しながらもバーナードは反撃に出る。


バーナードは秒速以上に早く腕を振り下ろし足を振り上げメンドに攻撃を加えていく。

(こうやられちゃ隙がねぇな………)

メンドも的確に攻撃を防ぐがバーナードの猛攻に反撃のタイミングを掴めずにいた。


(コイツ、鈍い!)

バーナードはメンドの動きが鈍足になっている事を読み取る。

(その上好きあらばにやけ突きを繰り出そうとしてきやがる……下半身が最低限しか動いてない………)

バーナードはコガシショウユフォームの戦闘特性を完全に見切ってしまった。


(でも……)

「どうした?そんな柔なの通じねぇぞ?麺だって柔らかすぎも良く無いんだぜ!」

(さっきと比べて明らかに打たれ強い、根本的に痛みに強くなっている………!)

防御力が上がったことによりバーナードは決定打を叩き込もうにも上手くいかなった。


「はぁぁ!!」

バーナードは再び全身から熱波を発する。

「もう効かないぜ!」

メンドは言葉通り吹き飛ばされる事なく熱波をものともせずその場に居座り続けた。


「もらった!」

そし手メンドは熱波を放つことによって生まれた数秒を見切り突きを加える。

「うぅっ!!」

だが当たる寸前バーナードはそれを宙返りしながらかわした。


「また外したか………どうも動きが遅い!」

(でも、オレ的にはイケそうな気するよ!)


(確かにあの地球人の言う通りだ。あの突きを()()()()()()()()()オレは敗ける。)

バーナードは額の汗を拭う。

それがメンドに対し自分が持つ緊張感によるものなのか、はたまた連続攻撃の疲労の蓄積によるものなのか自分でも検討がつかない程に、彼の戦いへの集中はピークに達していた。



(逆に言えば、あの突きを喰らわなけりゃ負けない。)

「負けてたまるかぁ〜!!」

バーナードは再度攻撃を加えようと足を踏み込んだ瞬間だった。


「うっ」

バーナードは自身の体の異変に気づいた頃には視界は地面のみ映らなくなっていた。


抉れた地面の段差につまずき転倒したのであった。

(なんで、こんなのに…………)

そこでバーナードは気づく。

現在の自分はもはや、戦える状態でない事に。


「もらった!!」

メンドの意気揚々な声に苛立つ暇もなく彼の視界は捻り曲がり、暗転する。


「新技!ラッシュショウユ!」

メンドの渾身の一撃は二連撃、三連撃と繋がりバーナードを手玉のように宙に浮かび上がらせる。


腕が突き出される度に周囲の空気が震え音を鳴り響かせ焦がし醤油の香ばしい香りと共に辺りをメンド一色に塗り替えていく。


「ッ!ッ!!」

メンドのペースに押され意識を失うバーナードの脳内には再び最愛の姉の姿が映し出される。

(………走馬灯か?)

消え入りそうになる意識の中でめぐるましく流れていくのは惑星ショークの王宮での生活だった。


優しさで自身を包み込む母、威厳を放ち自身を導く父、そして自分より勉学は出来なくともいつも自分のそばで親身になってくれた姉のデリッシュ。

現在の自分とはかけ離れた暖かい日常が彼の頭の中を何周も駆け巡る。


(姉上………どうすれば………)

バーナード──ボノケーノの頭にはデリッシュが王に即位する事を告げられた日の記憶が移る。


───

「なんでわたしが?弟の方が、わたしなんかより立派な国王に!」

デリッシュの言葉に優しく現国王の父親が語りかける。

「血筋で見ればお前が王位継承権第1位なのは自分自身でよく分かっている筈だろう。」

「でも……」

「王の器というものは、勉強や鍛錬の不出来で決まるということではない。下手に継承権を無視すれば、後世で騒乱の種にもつながる。なぁに心配ない。デリッシュもボノケーノも、同じ齢の私に比べればよっぽど優秀だ。」


そこからその時の自身の複雑な感情を闘士として燃やし、バーナードを名乗り始め現在に至るまでの記憶が映し出される

(何が…したかったんだ………オレは………!)

やがて記憶の波が幕を閉じようとしたその時


(やっぱりダメだ!)

とてつもなく巨大に裕太の声が響き渡った。


「裕太!覚悟決めただろ?二言はねぇぞ!」

裕太はメンドの拳を自身の手で押さえた。

(ダメだよ………殺せないし、殺しちゃダメだよ!せっかく家族が全員死んだと思ってたデリッシュの肉親が見たかったんだよ!このまま、せっかく近くにいるのに、もったいないってオレは思う……ごめん!)

裕太は絞り出すように言葉を紡ぐ。


「…………まぁお前はそういう奴だよな。デリッシュとどう落とし前付けるか、考えようぜ。」

メンドは怒ることもなくブレスからチケットを引き抜いた。


そして裕太は倒れるバーナードに歩み寄る。

「ボノケーノ、あなたの姉さんは………デリッシュはスーパーの特売に本気になれる位元気だから。心配しないで。」

そう、優しく語りかけるのだった。

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