29品目 冷える一撃
「……さてと、まずは所長としての大きな仕事を始めるとするか。」
事務所に戻った才牙は一つの配信を開始した。
「オレはF.F.Fの新たな所長、立木才牙。これからF.F.Fの運営を取り仕切って行こうと思う。よろしく。」
所長室のデスクを写すライブ中継のカメラの前で才牙は腰掛けながら自己紹介をする。
唐突に告げられた事実により視聴者であるフードファイター達は混乱に陥る。
『また所長変わるん?』
『サ終だけはやめてくれどんな形であれ続いてくれ』
『ユーザーを運営都合で振り回し過ぎだろ』
『ここ最近はホンマ迷走やば過ぎ』
『まーたルール変わるんか?一度参加したら簡単にやめられないゲームって事わかってないんかな?』
『F.F.Fは好きだけどF.F.Fの運営は嫌い』
『てか新所長地味にイケメンじゃね?』
『新所長名前と髪色が相まってV系のバンドマンにしか見えんwwwwwww』
『新所長ってハーフ?なんか髪の色が凄いけど』
『新所長、話に集中できないタイプのイケメンだ』
コメントは運営に対する批判や不安、才牙の容姿に対する物が占められていた。
「ちなみに前所長の垂尾掛は失踪してしまってな。いつ我々の前に姿を表すのかは、オレにも分からない。勿論捜索はしている。心配しないでくれたまえ。」
『失踪!?』
『失踪ってマ?』
『F.F.Fアプリの投稿が1週間滞ってると思ったら失踪で草枯れた』
『意味分からん人やったけど運営は上手かったから素直に悲しい』
『失踪は突然過ぎて草疲れたんかな?』
『ストレスか?』
『正直運営所長としてのムーブは完璧に近かったろあの意味不明な投稿を除いて』
掛の失踪を告げられたコメント欄は掛がいなくなったことに対する悲しみの声に包まれる。
「彼はF.F.Fを興行する人材として立派だった。突然の事で混乱させて申し訳ない。少しでも彼に倣い円滑かつユーザーが楽しめるF.F.Fを作り上げていく。その為に、全フードファイター諸君が強く、楽しくあれるイベントを継続的に行っていくつもりだ。詳細については随時発表する。今日はここまでだ。」
才牙は礼で配信を締めくくる。
「こんなものか。どこまで食いごたえのあるフードファイターが誕生するだろうか………」
恐怖におののく職員達をよそに才牙は深い笑いを浮かべる。
「おい英二!あの配信見たか!?」
配信終了後、完人は英二に即座に電話をかけた。
「はい完人さん!勿論見ましたよ。掛さんが失踪って、どういう事なんでしょうか?」
掛と密接に近づいていた完人と英二は失踪の2文字に大きく注目していた。
「分からん、フローズンの皆にも連絡するぞ!一旦、カフェテリアNAGAREに集合するとな!」
「わかりました!」
2人は一旦通話を切る。
「とりあえず凍真に連絡するか………もしもし?アレ出ない?」
その頃凍真は
「なかなか手強いな……マカロニサラダのフードファイター、ロニック!」
「おーい、隠れてないで出てこいよ!」
マカロニサラダのフードファイターに苦戦を強いられていた。
「コイツを倒せばプラチナランクの160位台まで一気に上がれる!こんなチャンス、逃してたまるか!」
河原にいたコールホールは岩と岩に隠れ反撃のチャンスを狙っていた。
「こないなら誘き出すまで!マヨアシッドスメル!」
ロニックはマヨネーズ特有の酸味臭を周囲にばら撒く。
(臭い!マヨネーズを使った料理のフードファイターは皆コレを使うから厄介なんだよなぁ……!)
コールホールは両手で顔を覆う。
(でもここで動いたら奴に場所が勘付かれる!かといってこの匂いの中にずっといたら間違いなく倒れる!かくなる上は……川の水を利用して!)
コールホールはまず空に向かって手を伸ばした。
「おお?」
ロニックは自身の右手側から冷気が漂うのを感じ取る。
「ふふふ……バカか。」
ロニックとコールホールは人の背丈以上の大きさのある岩石のそれぞれ左右に位置していた。
ロニックは岩石の向こう側に大きな氷の柱がある事を確認する。
「何をしようが無駄だ!マカロッドチューブ!」
ロニックはマカロニ型の槍•マカロッドの空洞部分にマヨネーズを詰め込み光線のように発射した。
氷の柱はマヨネーズの水圧に負けていとも簡単に折れてしまう。
「ぐああああ!!」
間髪入れずにコールホールの叫び声が辺りにこだまする。
「トドメと行こうか。」
岩石の裏側に向かおうとしたその時
「フローズン•コール!」
その掛け声と共にロニックの足元が氷に包まれる。
「なんだこりうごぉ!!」
その瞬間、ロニックは頭に冷たいかつ大きな衝撃が加わる。
「うっうぅ………」
ロニックはそのまま変身解除してしまった。
「まさかこんな単純な作戦で勝つとは………意外にも試してみる物なんだな。」
コールホールは呟く。
─────
(かくなる上は……川の水を利用して!)
コールホールは空は向かって手を伸ばし冷気で氷を生み出す。
(ここに刺してと。)
出来上がった氷の棒を地面に突き刺しその氷にさらに冷気を当て棒を太く長く伸ばしていく。
(んで、ここからバレないように………)
コールホールは氷の柱を作っていきながらもう片方の手を自身の目の前を流れる川の水へ伸ばし冷気を当てていく。
(これだけ川の近くなら即座に凍らせると川の流れる音が止まってすぐに分かってしまう………少しずつ、でも着実に川の温度を下げる……!)
すぐに川の水が凍ってしまわないよう優しく冷気を当て一歩氷の柱には急速に冷気を当てていた。
「何をしようが無駄だ!マカロッドチューブ!」
その瞬間、氷の柱が崩れさる。
(今だ!)
「ぐああああ!!」
嘘の叫び声を上げながらコールホールは川の元へ急いで近づき水面を指でつつく。
(上手く行った!)
コールホールが川の水に触れた瞬間水は一瞬で凍って一本の氷の道となった。
コールホールはその上にのり滑りながら岩石の横を通り過ぎロニックの元までやってくる。
「フローズン•コール!」
────
「我ながら器用だけど………疲れた!」
コールホールは川に飛び込んだ。
「……ふぅ、涼しい。このまま休憩しよう。」
割れた氷と上流から流れ続ける水と混ざりあいシャーベット状になった水面を身体中に浴びながらコールホールは一息つく。
「過冷却水を作ることになるなんて………あの頃シャーベットを作った時以来だな。」
そう呟きながらF.F.Fアプリの順位表を見る。
コールホールの名前の横に159位の数字が書かれていた。
「連勝ボーナスに下剋上、上がって当然だよな。…………千春、もう少し待ってて。復讐を果たすまで後少しだから。」
コールホールがそういった瞬間着信がなる。
「…………英二?なんだ?」
コールホールは電話を出るや否や川から飛び起きた。




