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26品目 久々の地球食

強い日差しが照りつける頂枡市。

街中の気温系は38℃という猛烈な気温を示していた。


「よっと。」

そんな灼熱の大地に1人、降り立つ者がいた。


「6年ぶりに来たが、それほど変わらんな。」

男はそう呟きながら紫色の肉塊を貪る。

そしてそれを飲み込むと鼻に意識を集中させ風の匂いを嗅ぎ始める。


「宇宙人の匂いがする………狩るには不味すぎるが、利用価値のある匂いだ。」

男はそう言いながら再び肉塊に歯を立てた。


「ぐほぉ!!」

(メンド大丈夫?)

その頃、完人に吹き飛ばされたメンドはやっと地面に落下した。


「ってぇ……なんだったんだよアレは……」

メンドは腰を押さえながら立ち上がり辺りを見回す。


(暗い部屋だ……)

「あぁ、オレがおっこちたトコだけ光が刺してんな。」

メンド達が落ちたのは林沿いに立つ薄暗い小屋で周囲は物が散乱し全体的に薄汚れていた。

天井はぽっかりと穴が空き強い日差しが差し込んでいる状態だった。


「とりまココがどこか調べねぇと。外に出るぞ!」

メンドは歩くたびに埃の舞う室内を歩き始める。


すると突然

「うん?」

メンドは足元に違和感に微かな感触を感じる。


「なんだ?虫か?」

(どうしたの?)

「足が、なんか触られたような気がしてよ……」

メンドと右足に目を向けるとそこには誰かの手があった。


「ッ!!」

メンドは反射的にその場から後ろ向きに飛び机に体を置いて構えをとる。


「…………」

そしてメンドは目を凝らし先ほど自身がいた足元の手を探ろうと覗き込んだ。


「え!?アイツは……」

メンドは手に正体に思わず言葉が止まる。


「そうだよ……ボクだよ。」

そこには衣服や肌が全身埃で薄汚れていた串田焼也が体を横にして影に身を潜ませていた。


(よくわかんない内に吹き飛ばされて、目的達成っコト!?)

「よく分かんねぇけどラッキー!!棚から塩ラーメンだぜ!!」

(それを言うなら棚からぼたもちね……)

焼也の姿を確認したメンドと裕太の緊張は解れ、メンドは即座に近寄る。


「にしても、なんでこんなとこにいんだよ?」

メンドがそう言葉を口にした瞬間


「危ないっ!」

メンドは何かを察知し咄嗟に焼也の上に覆い被さる。

そして間髪入れずメンド達の耳元に激しい破裂音らしき物が鳴り何かの破片がポロポロとこぼれ落ちる。


「お前らは!」

メンドが振り向くとそこには一切の気配を見せずシルムとハルラが出現していた。


「お前許さない……はーちゃんを傷つけたお前だけは!」

シルムは頭に青筋を立てながら怒号を飛ばし、戦闘形態へと変化する。

「シルム落ち着いて!」

ハルラも慌てて戦闘形態になり後を追う。


「はああっ!!」

シルムが強く念じると小屋内に散乱する様々な物体が浮かび上がりメンド目掛けて向かってくる。


「一体なんの話だよ!」

メンドはシルムの話に思い当たる事が無く困惑しながらも次々と迫り来る物体を弾き飛ばしていく。


「黙れぇぇ!!」

シルムは小屋に置いてあった大きな机を念じて宙に浮かび上げるとその机は勢いよくメンドに向かって飛んでいった。


「うおっっ!!」

メンドは持ち上げて跳ね返そうとしたが勢いに負けそのまま壁に激突してしまう。


「いてて……なんとか焼也だけでも……」

メンドは背中を抑えながら土煙の中を掻い潜り焼也の姿を探る。


「アイツはドコ?アイツはぁぁ……」

「落ち着いて。」

興奮の収まらないシルムの肩にハルラが手を置く。


「でもしーちゃんアイツが!」

「私は大丈夫。だから落ち着いて。」

ハルラはシルムの手を握ったその時


「勝手にちょこまか動きやがって。」

その声と共に周囲の気温が著しく上昇する。


「バーナードさん、なんでココが?」

ハルラはバーナードが自分たちの場所を見つけると思わず声が上擦る。


「うるせぇ。今はフードファイターを殺すよりあの液体を作る方を優先だ、行くぞ。」

バーナードは2人を無理やり抱き抱えるとその場で飛び立ち、屋根を突き破りそのまま空の彼方へと消えていった。


F.F.F運営事務所──

突如所長室のドアが開かれる。

「はいどう……も……」

掛の軽快な返事は一瞬にしてかき消され部屋一帯に重圧がのしかかり沈黙が場を支配する。


「…………なんでお前が。」

困惑の表情の掛が沈黙を断ち切ったと同時に扉が扉が閉まる。

掛にはこの一瞬がとてつもなく長く感じた。


「随分と腑抜けた顔だな。まぁ、6年前と同じか。」

掛の視線の先にいた男はそう言いながら紫色の肉塊を齧る。


「ここが事務所か……」

男は首を回し周囲を眺める。

青みがかった銀色の髪は揺れ、薄い金色の虹彩を持ったつり目は部屋の細部をまじまじと見つめ、高く尖った鼻はより一層部屋の情報を嗅ぎ取ろうと嗅覚が活発に動いていた。


「…………」

掛は椅子に座りながら彼の肌や衣服から発せられる地球のものではない異臭に目を細めながらも彼の様子をじっと観察する。


「すごい匂いだ。」

男は調味料が所狭しと並べられた棚を見つめる。

「これだけの調味料がそろっていれば空間は直に悪臭に晒されるというのに。あの棚は奇跡のバランスで一つ一つの香りが上手い具合に混じり合っている。す」


「その席に座ってるって事はお前がフードファイターの管理をしているのか?偉くなったモンだなぁ?」

男はそう言いながら肉塊を全て口に放り込み顎を上下させつつ備え付けの椅子に勝手に座る。


「……!」

掛は椅子を注視し僅かに身構える。


「そういうお前は変わってないな。髪の色と目の色は随分と地球人離れしちまってるけど、その悪食っぷりで丸わかりだ。どうせその見た目だって、宇宙生物の食い過ぎで変な物質が体に回ってそうなったんだろ。」

「あぁ、そうだな。確か宇宙人を喰った時だ。」

「宇宙人……お前まさか……」

掛は男の顔を見る。


「別に構わんだろう?言っとくがオレは地球人だ。地球人が宇宙人を殺してはいけないなんて法律、この星のどこの国にもありゃしない。別に問題はねぇよ。」

「そういう問題じゃないだろ………」

掛は拳を握りしめながら呟く。


「掛?何やってんのってキャッ!」

舞味は部屋に入るなり男の姿を見て声を上げる。


「ほう?お前、菓子折博士の娘か。」

男は椅子に腰掛けながら首だけを傾け舞味を見やる。

「開発担当?あぁ確かにアンタは父親に似て優秀だったもんな。6年の内に随分と垢抜けたな。俗に言う『艶っぽい』って奴かぁ?まぁ、今更地球人の雌なんて見たところで何も思わんが。」

「な、なんで貴方がここに?」

舞味は男の言葉を無視し後退りながら尋ねる。


「オレがここにいる理由なんて一つしか無いだろ。」

「また堅太みたいにフードファイターで地球を守るっていうのか?馬鹿げた事はやめろ、才牙。」

才牙と呼ばれた男が言い切る前に掛が静止するかのように言葉を重ねる。


才牙は掛の方に振り向き八重歯をちらつかせながら微笑う。

「確かにアイツの考えてる事は馬鹿だ。だがしかし掛、お前も人の事を言えんぞ。いや寧ろお前は大馬鹿だな。」

そして立ち上がり掛の机に詰め寄る。


「じゃあお前は!」

掛は感情を抑えきれず立ち上がる。


「お前は……フードファイターで何するってんだ……?」

「喰う。星をな。」

「へ?」

才牙の回答に掛は呆気に取られた。


「フードファイターの力で他の星に攻め込んで、その星を喰らい尽くし、地球がこの宇宙で頂点に立つんだ。」

「一体何言ってんだ?全く意味がわからないぞ!」

掛の才牙へ対する怒りの感情は全て荒唐無稽な主張への困惑へと変化していた。


「知らないのか?フードファイターは元々星間侵略用の兵器として開発された。宇宙で発信されているコンテンツ全てはゲームを盛り上げるための興行というのは表向きの理由。新たな兵器を求める戦いに飢えた権力者へのプロモーションが真の目的だ。なんだその顔?」

掛の顔は完全に怒りで紅潮しきっていた。


「デタラメを言うな!あくまでF.F.Fはゲーム!楽しむための物だ。血で血を争うための道具なんかじゃ無い!」

掛の言葉に才牙は笑みを浮かべる。


「宇宙人に対する混乱を防ぐためという名目で地球人の記憶を勝手に消したり明らかに最悪の場合死に至る規模の戦いを行うよう誘導したり、お前らはこの星の人間に多大な迷惑をかけている自覚はあるのか?」

「そ、それは……」

才牙は掛の肩に手を置く。

掛は振り解こうとしたが体が強張り動けなかった。


「それでいてF.F.Fを楽しむための物だと?なるほど、6年前お前なんかが運営所長が選ばれた理由がよーく分かったよ。このゲームの歪さに気づかず与えられた指名を楽しみながら全うするだもんな。これ以上に打ってつけの人材はいねぇよ。」

「黙れ!」

掛は才牙の胸ぐらを掴む。


「ほいっと」

「うわあああ!!」

才牙は動じることなく掛の腕を引っ張り上げ机から引き摺り出す。


「オラ!」

「ごほぉ!」

そして机に乗り上げた掛の顔に膝蹴りを当てそのまま床に放り投げる。


「一度もオレに腕っぷしで勝てた事のない癖に。」

才牙は一瞥すると掛が座っていた椅子に腰掛ける。


「や、やめろ……」

叫ぶ掛の鼻はとめどなく血が流れていた。


「掛、大丈夫なの!?」

舞味はすかさず掛の元に駆け寄る。


「才牙、アンタふざけるのも大概にして!」

舞味は立ち上がり彼の頬に手を伸ばす。


「あぐっ!」

才牙は飛んできた手を口で受け止めそのまま噛み付く。


「いたぁい!!」

舞味は涙目で即座に手を引っ込めて自身の手の甲を見る。

「なにこれ……人間の歯じゃない。」

そこにはまるでカミソリで剃刀で削いだかのような切り傷が無数に出来ており鮮血がとめどなく流れていた。


「あぁ、色々な物を喰らう内に鍛えられた。人間の歯じゃ噛めないものばかりなんでな。」

「舞味、手が……」

掛は勢いよく起き上がりながら舞味の手を抑える。


「一旦撤退だ!」

掛はそう言いながら自身の真下の床に手を置く。


「なんだ?」

その瞬間掛達の姿がその場から一瞬で消えた。


「ほう……事務所を捨てたか。まぁどっちにしろお前らの席は無いんだがな。」

才牙は1人きりになった部屋で携帯を取り出す。


「グトン、オレだ。」

才牙はグトンに電話をかける。

「はーい、何か用か?」

グトンは変わらず気の抜けた返事で応じる。


「あの液体は準備できてるのか?」

「まぁ、言われた量はね。早くやりましょうや。こっちもおちおち遊んでられなくなってきててね。」

「確かにな。いつものお前らならこの程度の星、とっくに治めてしまってるもんな。」

才牙はそう言いながら椅子から立ち上がり、窓から刺す光に目を向ける。


「えぇえぇ、わざわざフードファイターを利用してちまちまやってるから、進行が遅い遅い。まぁ、アンタとの取引のためさ。上手い事回してくよ。」

「あぁ、だからあの液体をさっさと寄越せ。F.F.Fのアイテムとして売り出す。」

「わっかりましたぁ〜」

才牙はグトンからの電話を切ると部屋の窓を開け足をかけ身を乗り出す。


「よっ!」

そして体に勢いをつけ空中に飛び出し壁を蹴る。


「ここまで近かったなら電話する必要もなかったのかもな。」

才牙は屋上に降り立ち、大きなアタッシュケースを片手に向こう側に立つグトンへ話しかける。


「確かに。」

人間の姿に化けたグトンは深々と被られた帽子から僅かに視線をのぞかせる。

「そもそも人の脳内に直接語りかけれる癖に何故オレにはしない?」


「前も言ったでしょう?アンタの脳内を除くのは血生臭過ぎてムリだって。」

「ふぅん………まぁ好きにしろ。」


そう言いながら2人はゆっくりと歩み寄る。


「ではこれを。」

グトンはアタッシュケースを手渡す。


「よし……」

才牙がアタッシュケースを開けると中には緑色の液体が詰められた大量の瓶が納められていた。


「見てろ。ゲームの道具が完全な兵器となる瞬間だ。」

才牙はそう言いながら一枚のフィディッシュチケットを取り出しながら瓶を一つ取り出し開栓する。


そしてチケットに一滴液体を垂らした。

「え?それって、人に飲ませるもので……」


「いいから見てろ。」

才牙はそのチケットを屋上の床に投げる。


その瞬間チケット全体に液体が染み込んでいき黒い煙が立ち昇る。

やがて煙は人間の背丈ほどの大きさあたりで止まり程なくして煙が晴れ、中から何かが飛び出す。


「おっと!」

才牙は飛び出した者の攻撃を受け止め羽交締めにする。


「これは……フードファイター?」

「グギャアアア!!アアッ!!」

グトンの目の前には液体を飲んで暴走した状態に限りなく近いフードファイターの姿があった。


「そんな使い方が……これを売り出すと?」

「こんなただ暴れるだけのケダモノ売り物になるもんか。」

「へ?」

その瞬間才牙は大きく口を開け


「いただきまぁす!」

フードファイターの頭部を噛みちぎった。


「ヒェッ!!」

彼の思いがけない行動にグトンは思わず後ずさる。


「ギャアア!!アッアアアッ!!」

叫ぶフードファイターの頭部からは茶色い液体がとめどなく溢れ出る。


「こんな化け物同然の見た目じゃ分からなかったが、この味からしてきんぴらごぼうか。地球最初の食事は肉を食いたかったが、まぁいい。オレの胃の中に入れ!」

そしね才牙はフードファイターを地面に押し倒すと体を引きちぎり口に入れるというのを何度も繰り返す。



そして最後に残った腕を口に放り込みひとしきり噛み締める。

「すげぇモン見ちまった………」

空いた口が塞がらずにいたグトンに目をくれず大きな嚥下音を立て最後の一口を終わらせた才牙は

「ごちそうさま。」

と一言呟く。


「売り出す兵器はオレ自身……その為にあらゆるフードファイターを食べオレの力とする。完全な力を得たオレが全て食い尽くし、やがて宇宙の食物連鎖の頂点に立つのだぁ!!」

才牙はひとしきり叫んだ。

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