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20品目 王族の生き残り

「ううぅ…………」

「おや?やっと目を覚ましたのかい?」

掛はベッドの方に近寄る。


「………ここは?」

裕太がまぶたを開けるとそこは見知らぬ空間が広がっていた。


「ごめんね〜この事務所そんな広い訳じゃないからさ〜。オレの部屋なんだよコレ。」

そう語る掛を見て裕太は直感的にココがF.F.Fの運営事務所であると事を察する。


「結構………普通の事務所の部屋って感じなんですね。」

裕太は内覧を眺め呟く。

掛用の机とデスクトップパソコンが用意されてどこにでもある事務所の一室のような雰囲気だった。


(いや、違う!)

裕太は棚に並んでいるに目を奪われる。

そこにはファイル等の資料類の隣に大量の調味料が隅から隅まで並べられていたのだ。

種類は多岐に渡りスーパーで買える日用的なしなからから外国語がびっしりと書かれた物、高級感あふれる箱に収められた物まで様々な調味料が置かれていた。

(これ全部掛さんの……?)


「でもねぇ、こんな普通じゃない稼業やっちゃんてんのよ。ギャップ萌えしない?」

「別にしないです…………」

「だよねぇ!!!」

カイロを大量に貼り付けたベストを羽織る掛の受け答えに裕太は苦笑する。


(素でこういう感じなんだ………やっぱ変だこの人。)

「あっそういえば!」

裕太はビルの状態を知ろうと声を上げるが掛に口を摘まれる。


「あぁ分かるよ。キミの知りたい事は大体。ハチミツ鍋焼きうどんを作るコツだろ?」

掛はそう語りしばらく裕太の顔色を伺う。

「…………すいません。余計な事言いました。結論から言うとビルは冷凍集団フローズンが消化した。」


「あの燃えてるビルを?」

裕太はにわかには信じられなかった。

「彼らの実力を舐めてもらっちゃあ困るよ。元々卓越した冷凍技を持ってはいたがオレを実験台にした事によって彼らはさらに成長したんだ。現にキミは健康に影響の無い冷凍保存をされてここまで運ばれたんだからね。」

自身の胸に手を当てながら掛は力強く語る。


「そうなんだ…………あとビルの中に宇宙人が!」

「あぁ知ってる。でも犯人らしき宇宙人は姿を消したらしい。消火だけに消化試合だねぇ…………ハイ、これも余計な一言でしたね。」


「………あとメンドは?それにブレスも無いんですけど………」

裕太は自身の空になった左手をさすりながら尋ねる。

「ブレスとチケットは舞味の研究室にあるはずだが……おや、帰ってきたのかな?」


掛が窓を開けると4つの影が空から舞い降りてきた。


「どうもー!帰ってまいりましたー!」

キーンアイがいの一番に窓から室内に入っていき残りも続く。


「あっ裕太くんだっけ?起きたんだ!」

「冷凍保存成功だネ。」

冷凍集団フローズンは裕太の様子を確認すると長椅子に一斉に座り込み変身解除する。


「えぇ!?何コレ!?」

裕太はその光景に目を見張る。

裕太の目の前には人間離れした容姿の4人が揃っていた。



「掛さん、もしかして冷凍集団フローズンってエイリアンの人もいるですか?」

「うん。自己紹介しちゃおっか!」

「「「「はい!」」」」

掛の言葉に4人は元気よく返事する。


「こんちは!キーンアイこと欠下優吾(かけしたゆうご)!」

「フライズンとフローズンって似てるよね?フライズンこと混島智明(まじまともあき)です!」

「アイスは好き!ソフトクリームは大大大好き!ツイスターレイことジュリブ星人のサブソフトだよ〜!」

「お気に入りの棒アイスはガリガリ君!バーロッドこと同じくジュリブ星人のカシバ!」


「ジュリブ星人?」

「惑星ジュリブは特にF.F.Fが人気の星でね。エイリアン枠は20人くらいいるだけど、その内12人はジュリブ星人なんだよ。」

裕太は改めてサブソフトとカシバの顔を見る。


2人ともトラの様な顔をしているものの肌の色は紺碧を思わせる真っ青な毛で覆われていた。瞳孔はサブソフトは赤色、カシバは黄色だった。


「前もエイリアン枠のフードファイターと戦った事ありますけど、なんか話してる感じは普通なんですね?」

「うん。楽しんでくれたて何よりだよ。ってだいぶ話が逸れたな……」

掛は椅子に座り直す。


「アイツは見つかったのか?」

掛の問いかけにキーンアイは首を横に振った。


「いや、全然です。まだ行方くらましてます。」

「だからホールコールが今探してます。」

「あっだから5人組なのに4人なんだ……」


「掛さん、アイツらって………」

裕太は呟くと掛は顔を険しくする。


「そうだなぁ。楽しいF.F.F運営を掲げた矢先にコレだもんな。まぁ宇宙は広い!宇宙人をスポンサーに運営始めた時点で、ある程度は覚悟はしていたのだけども。6年間は音沙汰なしでやれたのも奇跡みたいなモンだよなぁ……」

掛は天井を見上げる。


「やっぱ地球は狙われてるんですね。」

「うむ。残念ながら。」

掛は立ち上がると部屋に飾ってあるF.F.Fのポスターに手をかざす。


「やはりわたしにとってフードファイターはあくまでゲーム。あくまで娯楽。あくまで……美味しい物としてありたいんだけど。」


「でもボクらはフローズンの活動楽しくやってますよ?」

「ホント?ホントのホントに!嬉しいなぁ〜!!」

掛は顔をくしゃりと歪ませ4人に笑いかける。


(掛さん……ホントに嬉しいんだろうな…………)

裕太に掛の笑顔と声がはまるで本心の底からの喜びであると感じた。


「何すんだよ!!ベタベタ触んじゃねぇよ!」

「あぁ〜待って〜!!」

部屋の外が途端に騒がしくなる。


「その声まさかメンド?」

裕太はドアを開け声のする方に駆け出していく。


するとそこには

「ねぇいいじゃ〜ん?へぇ〜ココこうなってんだぁ………」

「やめろ!あっ裕太!ちょうどいいや!この女を引っ剥がしてくれ!オレがやると万が一ケガすっかもしんねぇからさ!」

舞味に覆い被されているメンドの姿があった。


「えっえっ、どういう???てかメンド、なんで人型に!?」

「この女がパソコンカタカタやってたら人型になったんだよ、その瞬間コレだぜ!こんなんならチケット状態の方がマシだぁー!!!」


「てかメンドって側から見たらこんな感じなんだ………」

普段は見ないメンドの外観を裕太はまじまじと見る。



「オイ見るのは助けてからにしやがれ!」

「なんか、見た目的に仮◯ライダーとか戦◯モノとみたいな感じなんだな………」

「何冷静に見てんだよ!助けてくれよ!」

メンドは冷静にじぶんの姿を眺める裕太を叱責する。


「意外とカッコいいんだね。メンドって。」

裕太は一言感想を残す。


「ハァァァ〜〜????意外とじゃねえよ!超カッコいいだろうが!オレ様を前にして意外となんて使うんじゃねぇ!いい性格してやがるぜホントに!!さっさと剥がせー!」

メンドは叫ぶ。


「いい感じにやってるなぁ〜バーナードぉ?」

「また脳内に…………」

バーナードと呼ばれた自信の脳内に語りかけるランザン星人の男に返事する。


「いきなりいい感じってなんだ。どっちの話だ?あの液体の売れ行きの事か?それとも子守の方か?」

バーナードと呼ばれた人物は表情を変える事なく尋ねる。


「どっちもだよ。」

ランザン星人の男は笑いながら言う。

「言いたい事はそれだけか。こっちは生憎ヒマじゃないんだ。わかったらとっとと出ていきやがれクソ野郎。」


「そうかそうか。そりゃそうだよな。だってお前つい先日はあのビルを内面には火を通さず外面だけキレーイに燃やすなんて芸当をやってのけたんだろ?そんな遊びをやれる余裕がある。野暮な事聞いちまったよ。」

脳に直接語りかける人物は先日の真っ赤に燃えるビルを思い浮かべながら語る。


「お前………暇じゃないっつったろ。話聞いてんのかよ。」

バーナードの額に青筋が浮かび上がる。


「まぁまぁ、そうカッカすんなって。ちゃんとやれて無かったらぶっ殺そうかと思ってたからさ。」

「相変わらずお前はすぐそれだな。『ぶっ殺す』二言目にはその言葉が出てくる。クソ野郎だぜ。」

バーナードは思わずため息を吐く。


「ハッハッハ。まぁいいじゃあねぇか。あのチビ共はどうなんだ。」

「ハルムとシルラの事か?アイツらもなんだかんだ色々やってるよ。計画達成に必要な地球人も残りわずかだ。ただメンドとかいうフードファイターに何故か対抗心燃やしてるっぽいしな。」


「へへぇ?そりゃまたなんでよぉ?」

ランザン星人の男は身をよじり出す。


「端的に言えばアイツらの勘違いだ。メンドとかいう奴が思ってた以上の手練れでな。少し脅してやろうと思って一撃当ててやったんだよ。」


──

「アイツがメンド……」

バーナードは街灯の上に立ち2人組と戦うメンドを焔が燃え上がる窓際から覗き込む。


「挨拶くらいはしてやるか。」

そう言いながらバーナードが右手を上げると火球が出現する。


「よっ!」

バーナードはそれを外壁に向けて投げつける。

火球はバーナードの手を離れた瞬間その場で一瞬光り輝いたかと思えば瞬時にビルの外壁に到達していた。

そして高熱の火球が触れた瞬間壁はボロボロと灰の様に崩れ去り周囲は黒く焼け焦げそのまま一直線にメンドの肩をかすめ、突き抜けていった。


「はーちゃん危ない!」

「わっ!」

火球はシルラの手によって弾き飛ばされ壁に右方向に向かい煙となって虚空へと消える。


「背後から誰かが撃ちやがった!」

メンドは火球の存在を察知しており途方に暮れる裕太に状況を説明する。


(ほう、気づいてるのか…………)

バーナードは空いた穴から映るメンドの顔を一瞥しその場から離れた。


───


「思ってた以上にやれると感じた。かといってスールプ、手ェ抜き過ぎじゃねぇか?」

「あぁ、スールプならメンドとその仲間のフードファイターのパルフェクトとピッザァーの3人で倒したんだ。」

「そりゃ初耳だぞ?聴かせろ。」

バーナードは情報を催促する。


「まぁ待て。落ち着けって。パルフェクトって奴はかなり強い。フォークント以上スールプ未満って所だな。ピッザァーの方はメンドとパルフェクトに比べりゃ強さは数段劣るが、この世に彷徨う幽霊だから姿を消したりと神出鬼没かもなぁ。」

「なるほど、だいたい分かった。」

「おっそう言えばお前オレの話にここまで耳を傾けたのは初じゃないか?フッフッフ〜サンキュー相棒?」

ランザン星人の男はバーナードが素直に話を聞き入れたのでわざとらしく笑いながら語りかける。


「誰が相棒だクソが。」

バーナードは心底冷えた声で一蹴する。


「そうかいそうかい。でも厄介なのに目をつけたもんだぜ。なんだってメンドは惑星ショークの王女とつるんでるからな。」

「!?」

バーナードは男の一言に言葉を失う。


「どうした?おーいもしもしー?聞こえてるかー?」

「……………」

ランザン星人の男は何度も呼びかけるがまるで時が止まったかのように硬直し絶句しきっていた。


「あぁ……ヘッヘッへ、家族のことが恋しくなったのかぁ?ボノケーノ王弟殿」

「黙れっ!」

「うおおっ!!」

バーナードの怒号で周囲の空気がビリビリと震え脳波越しの男でさえ思わず仰け反った。


「名前はデリッシュだったかな?お前の実のねえ…」

「黙れ!」

「あっそっかぁ………オレがぶっ殺されることになりそうだからこの位にしとくわ………」

バーナードに語りかける脳波はそのままフェードアウトしていった。


「……………チッ、」

バーナードはポケットから古びたペンダント取り出しそれを見て舌打ちする。

そして振り向き何かから逃れるかのように早歩きでその場を去った。


F.F.F運営事務所──

「ったく。オレの研究ならオレの知らねぇ所で勝手にやってろ!」

チケット状態に戻ったメンドは舞味への怒りがおさまっていなかった。



「聞いてくれよ裕太!大体さっきもオレを人型にしたかと思えばすぐベタベタ触ってきたんだよ!酷い目に遭ったぜ全く……」

「へぇそうなんだそりゃ大変だねぇ……」

裕太はチケットを握りながらひたすら相槌をうっていた。


「いやぁそれはごめんねぇ〜?やっぱさぁ、我慢出来ねぇっすわ。」

舞味はウインクしながら舌の先端を出して謝る。


「コイツゥ………」

「まぁまぁメンド落ち着いて!」

裕太はポケットにメンドを仕舞い込んでいると携帯に着信がくる。


「デリッシュからだ。もしもし?ん?とにかく早く来てくれ!?すいませんオレデリッシュに呼ばれてて。行っていいですかね?」

「残念だけど……いいよ!」

裕太はあわてて事務所を後にする。


「外から見る分には本当に普通のビルだな……」

裕太は事務所の外観を見て呟く。


そして裕太はデリッシュに呼ばれた場所へと急行した。

「デリッシュ、一体何が!!え、待って……ココって……」

裕太がたどり着いたのは普通のスーパーだった。


「あっ裕太!こっちこっち!」

買い物カゴを二つ持つデリッシュが手招きする。


「ハイコレ!」

裕太は向かうなり買い物カゴを手渡される。

「え?」

「話は後!ついてきて!」

デリッシュは早足で店内に入る。


「なんか……みんな殺気立ってるな……」

裕太は周りの客も同じく早足で同じ方向に向かってる事に気づく。

一方向に進んでいく客の視線には皆焦燥感が漂っていた。


「今日はここのスーパー大安売りの日なの。肉類全品半額なのよ。」

「え?もしかして、オレがここにいるのって……」

裕太は状況を察した。


「うわぁ…………」

裕太は精肉コーナーの盛況ぶりに思わず声が出る。


「行くわよ!」

「えぇちょ!?」

裕太はデリッシュに手を引かれ人だかりの中に入っていく。


それから数分後。

「ありがとう裕太!いつもの倍買えたわ!これを冷凍保存すればしばらくは肉に困らない…………」

「ハァ……ハァ………死ぬかと思った………」

裕太は人混みに疲れ切っていたがデリッシュは爽やかな笑みを浮かべる。


「病み上がりにはキツイな………」

裕太は座り込んだベンチから動けなかった。


「病み上がり?なんの事?」

「オレが説明してやるよ。」

メンドは新たな侵略宇宙人と戦っていた事を話す。


「え!?じゃあ裕太はさっきまであの燃えてたビルで…………ごめんなさいそんな状態で呼んで!」

デリッシュは裕太に謝罪する。


「いや大丈夫。デリッシュの為に戦うって決めたからさ、これくらいは覚悟してたよ。むしろ惑星ショークの事ばかりだったデリッシュが安売りセールの事とかも考えられる位には余裕が出来ててよかったなって思う。」

「そうなの……ありがとう。」

裕太の言葉にデリッシュは感激する。

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