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2品目 トッピングでファイティング

「何ボサッとしてんだよ?」

メンドは衝撃のあまり固まるデリッシュを指でつつく。


「わあっ!」

気を取り戻したデリッシュは声を上げる。


「あっ………あなた倒したのよね?アイツを………」

気を取り戻したデリッシュは目の前に倒れる暴漢を指差しながら確認をとる。


「見りゃ分かんだろ?大口叩いてた割にゃあ大した事無かったな。」

メンドは腕を組みながら言う。


「それにあなたどうして口調が変わってるの?」

「どういう意味だよ?」

目の前の相手の言葉にデリッシュは困惑する。


(わたしは確かにラーメンのチケットであの子を変身させた筈……だからラーメンのフードファイターがいるんだもの。)

だかデリッシュの記憶に目の前の戦士のような態度で大口を叩く裕太の姿は無かった。


(確かに変身したはずなのになんで?やはり変身した時に苦しんでたのが関係してる?)

「おいお前!パトカー近づいてきてるぞ!」

「え?」

思考するデリッシュの耳にもサイレン音が鳴り響く。


「こっち来て!」

「なんでだよ!」

デリッシュはメンドの手を引いて全力疾走する。


パトカー内の警官は困惑しながらも現場に向かっていた。

「本当なのか?あのコンビニ割と離れてるだろ?なんで強盗犯がここに………」

「ですが、確かに一般からの情報があったんです。ただ………ラーメンやイカ墨パスタに似た何かが取っ組みあってたとか訳の分からない情報も。」


警官達は半信半疑で現場に向かう。

「本当にいた…………」

暴漢は確かに情報通りの場所に倒れていた事に警官達は驚きを隠せなかった

「一体どういう風に書類書けばいいのやら……」

頭を抱えていると突然


「えぇ……いやオレは何を考える必要があるんだ?」

「ですよね?最初からここに倒れてましたよね?」

警官達の記憶が突如すり替わった。


「はぁ……はぁ……」

デリッシュとメンドは先程の場所から遠く離れた路地裏に身を移していた。

「おい?何でこんな所まで動く必要あんだよ?」

メンドは気だるそうに尋ねる。


「今のあなたの姿は一般人相手には目立ち過ぎるの!」

「赤髪のオメェがそれ言うか?」

「もっと目立つって事!」

デリッシュは喋りながら慌ててフードを被り髪の毛をしまう。


そして乱れた息を整えながらメンドに真っ直ぐ目を向ける。

「あなたは元になった人間が変身した事でそこにいるの。その人間の事ホントに知らない?」


するとメンドは無言で俯きながら腕を組みだす。

「あぁ………知らねぇ。」

「そんな………どういう事?」

(やはり別の人格になっている………?)


メンドは特に疑問を持つことも無く平然と応えていくがデリッシュの疑念は高まるばかりだった。

(つまり……変身した事で元のの人格が消える?でもあのブレスでそんな事に………?)


「フードファイターはあくまで人間が食べ物の力を借りているに過ぎないはず。何故かブレスが使えない私と同じくあの人物は特殊なのかもしれない………」

「ったく。さっきから何をゴチャゴチャ言ってんだよ。」

考えを張り巡らせるデリッシュを横目にメンドはその場から立ち去ろうとした瞬間


「リーフスライサー!!」

上空から何者かが遠距離攻撃を仕掛けてくる。


「うおっと!」

「きゃっ!」

メンドはデリッシュを抱き抱え咄嗟に攻撃を避けた。


「ボーッとしてたら危ねぇぞ!」

「あなた……意外と優しいのね?」

「おいおいおい?お二人さんよぉ、ノロけてる場合か?」

話し合う2人に攻撃を加えた存在が声をかける。


「「ノロけてない!」」

2人は同時に声を出す。


「ハッハッハッ、まあいい。オレはお前と同じフードファイター。レタスサラダのリーフスだ。」

体の大部分がレタスで覆われ一部にトマトがあしらわれたもう1人のフードファイターが地面に降り立つ。


「いい度胸じゃねえか。一発かましてやるぜ!」

「ちょっと待って!あなたについての話がまだ」

「うるせぇ!」

メンドはデリッシュの言葉を無視し飛び出す。


「一気に終わらせてやるぜ!メンヤァ!!」

勢いのまま拳を振るう。


一方相手は

「トッピング」

と唱えながらチケットをブレスに差し込む。


「へへ、あっさりと終わったな。」

メンドは攻撃を当てて意気揚々と呟く。


「コレのどこが?」

「何!?」

彼の放った拳は相手の胸を直撃していたが手応えは全く無かった。


「てか、見た目が変わってるぞ!」

「フフフ、サラダにドレッシングは付き物でしょう?」

リーフスの体にはまるで胡麻ドレッシングの様な物がかかっていた。


「鎧のつもりか?こんなの!」

「フフフフ………」

メンドはひたすら蹴りや突きを繰り出すが相手は腕を組んで鼻で笑っていた。


「ハァ……ハァ……お前を……ガラにしてやる!」

疲労の蓄積により醤油ラーメンの拳はキレが無くなっていた。

「そろそろ終わりにするかぁ。」

胡麻ドレサラダは拳を受け止めると


「セサミ・リキッド!」

胡麻ドレの光線を発射しメンドを押し出す。


「ぐあああっ!!」

吹き飛ばされたメンドは地面に倒れると同時に裕太の姿に戻る。


「戻った!?ねぇ!しっかりして!」

デリッシュは即座に駆け寄る。


「オレの勝利だな。あばよ!」

そう呟きながらリーフスはその場から離れブレスからチケットを引き抜き変身解除する。


「さてさてランクは………」

解除して出てきた若い男はそう呟きながら自身の携帯にブレスをかざす。


すると携帯の画面に

『F.F.F』

という文字共に何かのランキングが表示される。


「892位……たった一つだけ?やはり雑魚狩りもここらが潮時か……」

男はため息混じりに呟く。


「えーっと………まぁ、なんとなくわかったような……わからないような………」

デリッシュからコレまでの話を聞いた裕太は混乱していた。


「そうね………確かに訳が分からないわよね。」

デリッシュは説明を交えつつ裕太の手当を行っていた。


「てかどっと疲れた………」

裕太は何気なくポケットから携帯を取り出すと


「ああああああーーーっ!!!!遅れるぅ!!」

携帯の時間を見て仰天する。


「行かなきゃ!あっあれ!?自転車無い!あっなんでぇ!なんでぇ!!」

裕太はデリッシュを跳ね除け一目散に走り出す。


「ちょっと待って!」

デリッシュは走る裕太を追いかける。


「ありがとうございました!」

店主は会計を終わらせた客を礼と言葉を交え見送っていた。


「裕太君珍しくおっそいなぁ〜。」

顔を上げた店主は腕時計に目をやり呟いていると


「ヤバいヤバい遅れるぅ〜!!」

「ちょっと待ってよ!説明しなさいって!」

「うん………?」

外の騒がしさに店主は首を傾げた。


店の外にでると

「あっ店長!すいませんすぐに着替えてきまーす!」

「着替えるってなんの話?ねぇ待ってって!うん?なんだか……良い香りが………」


「裕太君おそ……」

「あぁ今日は色々あり過ぎてバイトの日って事完全に忘れてた!早よ着替えないと!」

裕太は店主に目もくれず独り言を捲し立てながら控え室に向かった。


「行っちゃったな…………んで、おたくどなた?」

店主は風のように行ってしまった裕太を見送ると目の前にいるデリッシュに視線を向ける。


「えっえぇと………わたしは……その…」

デリッシュが言葉に詰まっていると店内に誰かのお腹の音が響き渡る。


「今の音もしかして?」

「いや……これは!あの………」

店主の目の前にはお腹をおさえながら頬を赤らめ視線を逸らすデリッシュの姿があった。

「フフッ……」

その姿を見て店主は思わず笑ってしまった。



「よし着替え完了!行かなきゃ………」

その頃裕太は一瞬で着替えを終わらせ店主のもと向かおうとしていた。


「おいお前?」

「え?」

裕太は不意に謎の声に呼びかけられる。


「だからお前だよ!」

声と共に裕太の来ていたブレザーの胸ポケットから一枚の札が飛び出す。


「あの………今それどころじゃないから!」

裕太は謎の声を軽くあしらうと札をズボンにしまいそのまま向かっていった。


「アイツ……!このメンド様相手に良い性格してやがるぜ…………」

声の正体であるメンドは衝撃を受ける。


「すいません店長!遅くなっちゃって!」

「いやいいよ裕太君、いつもより遅いくらいで別に遅刻はしてないんだから。それにお客さん連れてきてくれたしね。」

店長は厨房で作業をしながら答える。


「お客さん………あぁ。」

裕太は店の一席を見て納得する。


「いや、そのわたしは別に今はお腹空いてなくて……でもまともに取り合ってくれないの!」

デリッシュは遠慮がちで席に座っていた。


「あんなに大きい音出してるのにお腹空いてないだなんて冗談はよそうよ〜はいお待ち!『麺屋鳥川』の烏川醤油!」

そう言いながら店主はデリッシュの前に一杯のラーメンを運ぶ。


「うかわ……しょうゆ……?分かんないけど、思わずよだれが……!」

透き通った黄金色の醤油スープに浮かぶストレート麺と湯気と共に漂う鶏ガラ醤油の香りに、デリッシュは惹き込まれていく。


「いただきます。」

(ホントに宇宙人だとしたら、箸使えるんだ。)

裕太の内心露知らず。

デリッシュは箸でスープ滴る麺を掬い上げ即座に口に運ぶ。


「はぁ…………おいしい。」

感嘆の息と共にデリッシュは一筋の涙を頬に流していた。


「えっ泣いてる!?」

「ちょっと店長何入れたんすか?」

「いやいつも通りのを……」

裕太と店主はその光景に困惑する。


「あっさりながらも味わい深いスープに細麺が随まで絡み合う……」

デリッシュは目を輝かせながら感想を語り、その後は噛み締めるようにラーメンを啜っていた。


「おい、そのラーメンオレにみせてみろ。」

「え?またこの声だぁ!」

裕太がメンドの声を聞いた瞬間体の自由を奪れる。


「なんで、体が勝手に………『オーダー!』」

自身の意思に関係なく裕太はフィディッシュブレスにフィディッシュチケットを差し込む。

「っしゃぁ!メンド様再び参上!」


「裕太くん!?」

裕太の変化に店主は仰天する。


「デリッシュだっけか?ちょっと借りる。」

「えっ待って!わたしのラーメン!」

メンドはデリッシュの持つラーメンを取り上げるとラーメンの器に手をかざす。


「ほぅ……悪くねぇが、オレがあっさりアレンジしてやるぜ!」

そう言いながらメンドは厨房に立ち入ると調理を開始する。


「ちょっとウチの厨房を何を!」

正気に戻った店主はメンドを引き剥がそうとする。


「まぁ見てな。悪いようにしねぇよ。醤油ラーメンが作る醤油ラーメンだ。驚くなよぉ!」

メンドは手際良く材料を切り刻みスープの鍋にさらに具材を投入していく。


「確かにアンタの作ったスープはコク深くて悪くねぇ。だけどあの麺に合わせるならもう少しあっさり目でも良いくらいだ。」

「なっ何をさっきから……!」

「まぁ飲めよ。」

メンドは新しくなったスープを一口店主に飲ませる。


「これは…………確かに。アンタの言う通りだ。単体では物足りないかもしれないが、細麺に合わせるにしてはややくど過ぎたのかもしれない………」

店主はメンドの指摘に関心する。


「あとアンタはスープと麺に拘ってるらしいが、この店の真骨頂はチャーシューだな。」

「チャーシュー?」

店主はその一言に目を見開く。


「前までのスープで煮込んだこのチャーシュー、意外に肉厚で食べ応えがある。チャーシュー単体で出しても売れると思うぜ……うん?」

メンドは自身の言葉で何かに気づく。


「そうかチャーシュー単体………アリかもしれない!裕太君?なのか分からないが、ありがとう!」

メンドの指摘に1人はしゃぐ店主を横にメンドは先ほどの戦いを思い返す。


(そういやあのサラダ野郎、トッピングとかやってたな……ラーメン……トッピング……そうか!)

「コイツでこのラーメンいや、オレ自身も強くなれる!」

メンドは箸で摘んだチャーシューを掲げた瞬間。


「おっ?」

チャーシューは光り輝き一枚のフィディッシュチケットへと変化した。


「なるほど。そうと決まれば話は早いぜ!あのサラダ野郎にリベンジだ!」

メンドはチケットを持って店を飛び出す。


「メンド…………」

デリッシュはその様子を静かに見守っていた。


「どこだサラダ野郎!出てこい!」

夕日の沈む街をメンドはひた走る。


「イカ墨パスタならいるぜ!」

「うおおっ!」

メンドは突如出現したスクィンクのゲソに体を縛り上げられる。


「お前倒した筈じゃ!」

メンドは必死にもがく。


「ダーハハハ!ホントに一発で終わったと思ってたのかぁ?スキル『おかわり』の効果で復活したに決まってんだろ?」

「スキル?なんの話だよ!」

「うるせぇ!」

スクィンクはゲソを振り回しメンドを空高く投げとばす。


「ぐああっ!!」

メンドは遠く離れた廃工場に落下した。


「ハッハッハ!スキルの存在も知らねえモグリが!これで終わりだぁ!!」

スクィンクのゲソが容赦なく襲いかかる。


「へへ………ガラになんのはお前の方だ!」

メンドは叫びながら立ち上がる。

そして先程のチケットを構えた。



「トッピング!」

メンドはフィディッシュブレスのもう一つのスリットに「チャーシュー」のチケットを差し込む。


「おおすげぇ!」

メンドの手にチャーシュー型の円盤が出現する。


「これの名前はチャースラッシャーだ!切り裂けぇ!」

メンドは早速チャーシュー型の円盤──チャースラッシャーをゲソに向かって投げ込む。


円盤をは回転しながらゲソを次々と切り刻んでいった。

「なんだこれぇ!」

ゲソを失ったスクィンクは黒い弾を発射する。


「効かねぇよ。」

チャーシュー状の円盤で黒い弾は全て受け止められていた。


「そんな………ウソだろ!?ここでやられちまったらもう………!」

「随分と焦ってんなぁ?つまり替え玉は無いんだな。」


「そっそんな事ぉ!」

ヤケクソになったスクィンクは黒い弾を連射する。


「チャースラッシャー!」

メンドの掛け声と共に新たにチャーシュー状の円盤が2枚出現しメンドは両手にそれを抱え黒い弾を受け止める。


「あっさり倒してやるぜぇ!」

メンドはそのまま間合いを詰めていくと


「ショウウラァッ!!」

円盤を横にしてそのままスクィンクの体に押し当てる。


「グキャアアアアッ!!!」

2枚の円盤の高速回転を受けスクィンクは戦闘不能に陥る。


「ぐはぁ……」

倒れたスクィンクは変身解除すると腕からブレスが消えチケットがメンドの元に飛んで行った。


「なんだよこれ?貰っていいのか?まぁいいや、次はサラダ野郎………」

メンドが振り向いた瞬間


「えっ!?」

変身解除し裕太の姿に戻った。


「ちょっと待って!ここどこ!?ホントに

何処ぉ!?」

裕太は日の落ちた廃工場で1人叫ぶのだった。

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