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「はぁ」

 疲れた。

 この2日間本当に疲れた。

 何がって、新しい学校のことやらもそうだが、ともかく食事が辛い。

 なんで、食事に全力を出さなきゃいけないのか……。

 まだ普通のご飯を食べている方がコスパがいいくらいだ。


「で?この間は何やら様子が変だったけど、ホントに電話だったのか?」

「うん......。まぁ、その。そうなんだよね。向こうが変な事言ってきたから、つい言い返しちゃって」

「ふーん。そっか。まあ、いいけど。お前学校大丈夫か?久々だろ?」

「えっ⁉そっ......そうだね」

 林太郎の思いがけない魔球わだいに、思わず視線しせんを泳がせる。

 街路樹の隙間から校舎が見え、その手前にはまばらではあるが、同じ制服を着た人が何人か居た。

「……」

 ある者は自転車に乗り、ある者は何やら機嫌良さそうに歩き、ある者は何かを忘れたのか、大急ぎで引き返す。

「……」

 この間、あんな事があったから、周囲に対して異常な警戒心が......。


「なあ、聞いてるか?」

「⁉き......聞いてる聞いてる」

「でも、よかったよ。始まっていきなり休みがちだったから、てっきりアイツの事を気にしてるのかと思ったけど」

「?」

 わからないんだけど、誰の話してるの?なんて言ったら、薄情な奴だと思われそうだ。

 かと言って何も考えずに「はい、そうです」とも言えない。

「......いいや、それは別に、ね」

 誤魔化せたか……?

「......そっか」

 どうやら、誤魔化せたらしい。


 そして林太郎とのこの会話で、また新しい事がわかった。

 どうやら、同じクラス、いや同じ学年、いや同じ学校に少なくとも1人、関係の複雑な生徒が居る。

「何もわかってないだろ」と爆笑している右目おまえ、後で覚えてろよ。


「ん?何か言った?」

「いや、何にも言ってないよ」

 何やら右目がごちゃごちゃと何か言ってきてはいるが、今は無視。

 とりあえずは、目の前の問題を1つずつ解決していく事が大事だ。

 教室のメンバーをチェック、教科ごとの先生やご近所さん。

 そうだ、この際だからバイトも始めよう。

 もし何かあった時に、手元にお金があれば、後々役に立つ筈だ。


「そういえば、石上は自分の教室がどこかわかるか?」

「あぁ、うん。それは大丈夫だよ」

 そこら辺の話は、この間の夜に会ったアイツから大体聞いた。

 確か......そうだ。ほり健太けんただ。

 アイツ曰く、私はアイツと同じクラスでアイツの1つ前の席だと。

 これさえわかれば、どうとでもなる。

 今更だけど、この前は変な所を見られたから、少しだけ気まずいな。


「じゃ......じゃあ、また後でね」

「おう、またな」

 林太郎は日直の仕事があると言って、先に自分の教室へと向かって行った。


「あいつの色は白いから、もう少し気軽に接しても大丈夫だな」

 右目に浮かび上がるこの赤い紋様。

 これが、右目こいつの力の1つ。

 これによって、今のアタシは石上ほんにんにとって、その相手が信頼のある人か、そうでないかがわかる。


 色なしは普通。

 近寄らなければ、基本的には大丈夫な相手。

 わかりやすく言えば他人みたいなもので、過半数はこれに該当する。


 そして、次に白。

 これは、林太郎のように石川ほんにんがある程度心を許して話せる人物にのみ、さっきのように白いオーラが見える。


 最後に黒。

 これは白の逆で、石川ほんにんが関わること自体に強い抵抗がある人物にのみ見られる。


 ただ、この色に関してはあくまで指標しひょうの1つでしかなく、相手が白だから良い奴で、黒だから悪い奴という訳でもない。

 まあ、それでも参考程度には役に立つだろう。


 例えばそう。

「さっきから少し後ろをただついてきてる。あの女みたいなやつは要注意だな」

 廊下の角を曲がると同時にさりげなく、視界の端に入れた。

 その女の色は黒。

 見ただけでは、どんな相手かはわからない。

 けれど、わざわざこんなコソコソと付きまとってくる辺り、少し特殊が何かがあるのかもしれないが、少し鬱陶しい。

 今は中身が違うせいもあり、少々肉体の性能が良くなっている。

 そのせいで、人の視線が余計に気になる。


 ともかく、人間関係に関しては無理に深入りしたくない。

「ひとまず無視だな」

 気づいてないフリをして、そのまま自分の教室に向かう。

 学校には早めに来たという事もあり、まだ校内の人数は少ない。

 とりあえずは、視界に入った人全員の色を見ていく。


「.........」

 無色じゃなくて、やっぱり何か色が欲しい。

 こうも全員が無色だと、本当に合ってるのか気になってしまう。

「おい、めっちゃ見られてるぞ」

 所々でヒソヒソと、何かを話しながらこちらを見てくる。

 右目こいつはさっきから疑うだのなんだの言ってきているが、疑いたくなる気持ちくらい察してほしい。

 確かに、頼まれたモノを集める代わりに色々要求したが、初っ端からこんな感じだと先が思いやられるぞ。

「はぁ……」

 まあでも、今は疑っても仕方がない。

 そもそも頼れるものが全くない今、こんなペテンまがいでもないよりマシだ。

 だから、ここは素直に......素直...に.........。

 ひとまず、おとなしく席に座ろう。

 幸い、教室にはあの堀健太が先に来ていたから、自分の席の位置はすぐにわかった。


「あっ、石上さん。おはよう」

「お、おはよう」

 そんな何気ない挨拶をかわし、自分の席に座る。



 しばらくすると、徐々に教室の人数も増え、賑やかになってきた。

 今のところ、黒も居なければ、白も居ない。

 個人的には、一番ありがたい。


「......ケホッ」

 後ろには堀健太。

 左右の席には誰も座っていない。

 そして前の席も。

 ホームルーム開始の時刻までにはもう少し時間があるが、まさか休みか?

「でさ、今日の朝ね。ちょっ⁉何急に横から入ってくんのよ」

「......すみません、通ります」

 別に急ぐほどの時間でもないはずだが、女子2人組の間を無理矢理突破し、私の横に座った。

「ちょっ......最悪!」

「マジであんなのと席が近いとか嫌なんですけど......てか今私らの間通る必要あった?」

 時間ギリギリで入ってきた女子2人組と、その横から体をねじ込むように通り過ぎていった男。


「.........マジか」

 残りの席はちょうど3。

 そして人数も3。

 隣の席には、横から無理矢理入ったあの男。

 前の席には、ちょっと偉そう中央で最初に喋った茶髪。

 雰囲気からするとこっちの方が若干立場は上か。

 そして、もう1人は少し右に。


「全員白だけど、これ本当にあってるんだよな?」

 けれど、これに限っては嘘であってほしいと思ったが、右目こいつが見た瞬間に少し笑った辺り、これに限っては本当なのだろう。



「ケホッ......」


 最悪だ。



読んでいただきありがとうございます。

次回の更新は未定です。

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