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フランケンシュタイン

作者: ガンダム

高校時代、学校の近くに安い理髪店があり、気軽な気持ちで訪れてみた。店員が7名おり、顧客用の待機席が何席かあり、そこで順番を待つことになる。店員の中で、みるからにいかつい大男といった風体の男性が一人いた。あの人に当たらなければいいな、と内心思いながら、ちょっとした緊張感を持って待つ。数分後

「お待たせ致しました。」

と言って私を呼び出したのは、何とその大男であった。あたかもフランケンシュタインを思わせるその仕事ぶりも豪快ではあるが、お世辞にも丁寧とは言えなかった。特に会話する訳でもなく時は流れる。

(早く終わらないかな。)

という気分で、着々と切られていく髪の毛を、フランケンシュタインの手捌きを眺める。

「終了になります。ありがとうございました。」

フランケンシュタインはそう言うと、出口まで私を見送り次の客を迎えに行った。


二度目に来店した時、店内はそれほど混み合ってはいなかった。私の前に一人だけ客が待っており、店員に呼ばれる。次が私の番だ。と、一仕事終えたフランケンシュタインが再び私を呼びに来る。

「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」

(うわ、またこの人か。)

と思いながら、私は理髪用の椅子に着席する。

「髪型は・・・この前と同じでよろしいでしょうか。」

2回目ということで、さすがにフランケンシュタインも私のことを覚えたらしい。会話らしい会話をしたかどうかは覚えていない。とにかく早く時が流れてほしい。


三度目の来店の時はそれなりに混んでいた。安い理髪店だがジャンプーのサービスもあり学生に人気の店だった。サラリーマンにも受けが良かったのであろう。18時頃の来店であった為か、学生とサラリーマンとが混在しているようだった。その日もフランケンシュタインはいた。

「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」

にっこりと笑い、いつもの挨拶で出迎えてくれた。ここまで毎回だとまるで、このフランケンシュタインが私の専属の担当者のようである。そこには男性スタッフが4人、女性スタッフが3人いた。特に女性スタッフは女性客専門、とも思えない。しかし不思議とこのフランケンシュタインしか当たらなかった。

1/7×1/7×1/7=1/343=0.003の確率だ。

この男性はなぜ理容師になりたいと思ったのだろう。他に適職があるような気がする、と思うとおかしくもなってきた。


四度目の来店時も五度目も、そして六度目も相変わらずフランケンシュタインにブチ当たる。犬も歩けば棒に当たる、という諺ではないが、ここまで来ると店側の陰謀を感じる。

1/7×1/7×1/7×1/7×1/7×1/7=1/117649=0.0000085


七度目の来店の時、私は期待と興奮に包まれていた。今まで苦手意識を勝手に抱いていたフランケンシュタインに当たることを大いに期待する自分がいた。

1/7×1/7×1/7×1/7×1/7×1/7×1/7=1/823543

=0.00000121

正に0.0001%の奇跡に期待する。その日も何人かの客がいる。私はこの店に初めて訪れたあの日とは違った、また別の緊張感を持って待機した。自分の番が近づく。私は顔を下に伏せた。果たして、フランケンシュタインがいつもの挨拶で出迎えてくれるのだろうか。期待で胸が膨らむ。

「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」

私の前で女性の声がする。

「え?」

思わず顔を上げると、可愛らしい女性店員が目の前に立っていて笑顔を向けている。

フランケンシュタインは、というと、別の客対応をしている。私の求めているものとは違う答えに落胆しながら着席する。その後のことはよく覚えていない。

その後、その店に行った記憶はない。もしその時に奇跡が起これば、フランケンシュタインと友達になれていたかもしれない。

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