星祭り
あの出来事は夢なのか幻なのか、今でも分からない。
その日は天気も良かったので、公園のベンチで昼食を食べていました。
そこに子供の頃からの友人の田中が偶然通りがかり、ベンチに座り積もる話をしていました。すると田中は「おまえ来週うちの田舎へ遊びに来ないか」と云うのです。これはまた何か企んでいると思いましたが「お前の田舎に何があるんだ」と聞くと、田中は「毎年ある星祭りだよ。街中の若者が湖に集まり・・・」ねっしんに話すので、私もその話を聞いているうちに楽しそうだなと思いました。
その後、田中は私のスマホに田舎までの行き方を送信してきました。
まだ行くとは言っていなかったが、好奇心もあって行ってみることにしました。
田中の田舎へは電車で3時間ほどの山奥にありました。駅を出るとこんな山奥に開けた場所があるとは思えないほど、街は広々としていました。
街の商店街を歩いていて気づいたことがある。商店は開いているが人気がない。全く住民と出会わないのだ、どこか不気味にすら感じる。それから街の中をしばらく歩いていると、杖を突いた老婆を見つけました。老婆に街の人を観かけない理由を聞くと「今日は星祭りの日だから、街中の人が皆で祭りの準備をしに行っているのさ」なるほど、にしても店を開けっぱなしで出かけるなんて不用心だと思いました。そして、祭りの会場はどこなのか聞いてみると。私が降り立った駅の反対側にある、中央公園の大きな湖が会場だと教えていただきました。
私は来た道を戻り、駅の反対側にある中央公園へ行きました。公演の案内板で湖の場所を確認して湖の方へ歩いて行きました。しかし、湖は背の高い葦原に覆われていて湖畔に辿り着くことが出来ません。仕方ないので少し小高い丘のような場所に行き、湖を眺めてみることにしました。丘の頂上に辿り着く頃にはすっかりと日も暮れて、空に月も出ていました。丘の上に座り湖を眺めていると、下の方から私を呼ぶ声が聞こえてきましたので下に降りて行くと、田中が手を振って私の方へ近づいて来ました。田中は「おぉ来てくれたのか。これから星祭りが始まるからお前も来いよ」そう言うと田中は着ていた衣服を全て脱ぎ、素っ裸になって湖に入って行きました。私は唖然として立ち尽くしていると、葦原の中から男女問わず素っ裸の人たちが次々出て来ました。
すると、皆さん湖の中に入って行きました。ええええ!星祭りじゃないの、これじゃ裸祭りだよ。月灯りに照らされた湖の中から何やら光るものが、次々空へと飛んで行くではありませんか。
あれは・・・いいたい何だろう、そう思い目を凝らして良く見て見ると、なななんと人ではありませんか。しかもお尻が蛍のように光っています。
その光は群れとなり夜空に輝いていました。星祭りってもしかして、この街の住民たちが星になる祭りなのか?呆れた私は丘の芝生の上に寝ころんで、その光景を眺めていました。
私の顔を何かが舐めているように感じました。目を開けると辺りは明るくなっていて、犬を連れた少年が「おじさん、こんな所で寝ていると風邪をひくよ」と云うのです。そうか私はいつのまにか寝ていたことに気付きました。
起き上がり辺りを見回すと、目の前にあった湖も葦原もありません。少年にここは何処かと聞くと、駅の裏にある公園墓地だと云うのです。
私は狐に摘ままれた気がして、早々に駅に向かい家路につきました。
それから数ヶ月した夜、街で偶然またもや田中と出くわしました。私はあの時の事を説明してもらおうと「おぃ!田中、お前の田舎はどうなっているんだ」と問いただすと、田中は「どうにもこうにも、なんくるないさ」そう言って話をはぐらかすと、またしてもズボンとパンツを脱ぎ捨てました。
田中は上半身スーツにネクタイ姿で下半身すっぽんぽんのまま、お尻を突きだすと何とまあ、お尻が光りだして田中の体が宙に浮いていました。
開いた口がふさがらない私を見て「あははは、それじゃまた逢おうな」と言って夜空へ光の尾を引いて飛んで行きました。