表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/100

099.令嬢は踊る

「それじゃ、他にも挨拶しなきゃいけないから。二人はゆっくりしてらっしゃいね」

「はい。ありがとうございます、学園長」

「ローズクォテアも、一曲くらいは踊っていけよ」

「もちろんですわ、ギャネット殿下」


 音楽が鳴り響く中、そうおっしゃった二人とは別れる。そうね、皇族だもの。いろいろな方々とご挨拶をしなければならないのは大変だと思うけれど、仕方のないことよね。

 フォスは相変わらず、食事に邁進しているわ。……そろそろ一度、お皿を置いたほうが良くないかしら? 近くの方々が、目を丸くして見物していらっしゃるわよ。


「フォセルコアはよく食べるな」

「ちょっと恥ずかしいですわ……太らなければいいのですけれど」

「気をつけていると思いたいね」


 ジェット様はそうおっしゃってくださったけれど、ドレスの試着のときのことを考えると私としてはあんまり気をつけているとは思えないわね。大丈夫かしら?

 ……私が考えても、致し方のないことね。きっと。


「さて」


 ふっと、ジェット様が私からほんの少し、距離を取られた。え、と思った私の目の前で彼は、胸に手を当ててわずかに頭を下げる。


「ローズクォテア。私と踊っていただけますか」

「はい、喜んで」


 すいと差し出された手を取らない選択肢が、私にあるわけがなかったわ。




 ジェット様のリードがとてもスムーズなおかげで、私は恥をかかずに済んでいるわ。一応、それなりに踊ることはできるのだけどね……ジェット様の妻となるならば、もっとうまくならなくちゃ。


「む、むずかしいですねっ」

「初めてにしては、なかなか上手いと思うが」


 あら、聞き覚えのある声が音楽をかき分けて聞こえてきたわ。ジェット様共々そちらに視線を向けて、ちょっと驚いた。


「セレスタ様と……」

「レキ?」


 どういう組み合わせなのかしら。レキ様、上手くセレスタ嬢に合わせて踊っているように見受けられるのだけれど、そんなに器用でいらしたのね。


「まあ、どちらかから声をかけて、相手に受けてもらっただけだと思うが」

「そうですわね……セレスタ様は、ギャネット殿下にご執心でしたし」

「ああ……」


 セレスタ嬢の方から声をかけたのかしら、それともレキ様からかしら。まあ、どちらにしても一度のダンスのお相手を見つけることができてよかったわ、と私は思うのよ。

 よく見ればフォスも、さすがに食事を終わらせてどこかの殿方と踊っているし。ギャネット殿下は学園長のパートナーを務めておられるから、セレスタ嬢もフォスもお相手になりに行くのははばかられたのね、きっと。


「まあ、なるようになるだろうさ」

「そうですわね。私たちも、ギャネット殿下も、セレスタ様も」


 ジェット様と顔を見合わせて、笑い合う。ジェット様は学園を出ていかれるけれど、私は後二年この学園の生徒として過ごす。

 その二年を、普通の学生として過ごす事ができるかしら。また、面倒なことがおこらないといいけれど。

 ああでも、終わりよければ全て良しとは言うものね。きっと、大丈夫よね。学園の外では、ジェット様が待っていてくださるし。

 きっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ