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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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98/100

098.令嬢は学園長と挨拶する

 そんなこんなで、舞踏会は始まったわ。とはいってもまずは立食パーティ形式で、学園長がお出でになってから楽団が踊るための曲を奏でる形になるの。


「……このカナッペはなかなか美味しいですね」

「フォス、どれだけ食べてるの……」

「まあまあ。ほら、ローズも一つ食べてみればいいさ」

「あ、ありがとうございます、ジェット様……」


 ……まあ、こんな感じで軽食を楽しむグループあり、面識のある方とお話するグループあり。

 面識のない方に突貫される、勇気のある方もおられるわ。ほら。


「こんにちは!」

「まあまあ、お元気なお嬢さんね」


 セレスタ嬢、その方はあなたと同じ子爵家よ……ま、いいか。テウリピア子爵の一人娘、ということで彼女の人となりを知りたい方も多いでしょうし。良い出会いがあるといいわね、セレスタ嬢。

 カナッペとプチケーキをいくつか頂いていたところで、楽団が音楽を奏でた。そうして、司会役である教師の一人が声を張り上げる。


「サフィレア学園長のご入場です」


 その名に、自然と拍手が鳴り響く。扉が開き、入ってこられた学園長は……当然と言うか、ギャネット殿下にエスコートされる形だったわね。


「あ」


 音楽に交じるように聞こえたのは、ぽかんと大きな口を開けたままのセレスタ嬢の声かしら。まあまあ、事前にお誘いがなかったのであれば致し方のないことよね。


「やっぱり、そうなりますわよね」

「一番無難だと思うぞ。他の誰とご一緒するよりも」

「確かに……この魚卵は美味しいですね」


 私やジェット様の感想を、フォスもカナッペを手にしながら頷いてくれる。ところでそれ、いくつ目かしら。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。我が学園から旅立つ者たちとの夕べを、ゆっくりお楽しみくださいませね」


 学園長の簡素なご挨拶が終わるとともに、ゆったりとした音楽が始まる。三々五々、中央の開けた場所で踊る方々が出てきたわ。……私はソフトドリンクを飲み終わってないから、その後ね。

 と思っていたのだけれど。


「ジェット!」

「ジェット殿」

「学園長、ギャネット殿下」


 わあ、学園長とギャネット殿下がお揃いでおいでいらしたわ。フォスともども、礼をして迎える。


「ふふ、やはりローズクォテア嬢とご一緒なのね」

「もちろんです。大切な婚約者ですから」

「知ってる知ってる」


 あの、どうして私のことが話題になるのかしら? ジェット様、大切な婚約者とおっしゃってくださったのは嬉しいですけれどその、ちょっと照れます。

 ドリンクを飲み終えてしまわないうちに、学園長が私を話題にした理由みたいなものをおっしゃった。


「ギャネットも見習ってくれないかしら。伯母としては、可愛い甥っ子にはよい伴侶をとっとと見つけてほしいのだけれど」

「ギャネット殿下のことですから、そのうち良い方を見つけてこられますよ」

「そうですよ、伯母上。そこまで俺は趣味が悪いわけではないので」

「どうかしら? エマルドの血を引いているわけだし」

「……」


 エマルド。ほとんど表に出されることのない、皇帝陛下の御名。陛下の姉上であられる学園長は、その御名を平然と口にされる。

 ……ところで今のおっしゃり方、まるで皇帝陛下が女性の趣味がちょっと……な風に伺えるのですけれど、気のせいかしら?

 ああいけない、失礼すぎるわ。考えなかったことにしよう。ええ。学園長は笑って許してくださるだろうし、ギャネット殿下もそうだと思うけれど……その他におられる貴族の方々が口を滑らせることだってあるかもしれないものね。


「まあ、たとえ平民の子を迎え入れるとしても、良い方なら私は歓迎するわよ。エマルドに口を利くくらいはしてあげるから、しっかり探しなさい。ジェット、チェックよろしくね」

「俺ですか!」

「ギャネットの側に仕えてくれるのでしょう? だったら当然、そう言うこともやらないと。ギャネットの后とは、ローズクォテア嬢もお付き合いすることになるのよ」

「……た、確かに」


 わあ、ジェット様に向けて振られた話だと思っていたら、私にまで飛び火してきたわ。

 でもまあ、たしかにそうよね……ギャネット殿下の奥方様とは、私もきちんとお付き合いしなくてはならないもの。ジェット様の配偶者であり、侯爵家の血を引く者として。

 ……後二年、この学園長のもとで頑張って勉強しないと。が、頑張りましょう私。ところでフォス、そのローストビーフは美味しいかしら?

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