083.番外:転生令嬢はゲームとの差異に困る
結局、その後はあっという間に終わっちゃったんだよねえ。うんまあ、貴族のご令嬢が戦闘に出るとか、そんなの訓練もしてないのに無理だし? 専門家がでてきてくれただけマシだと思いましょ、うん。
「うわあ、ほんとに派手派手ー」
「煙の色が、ついてしまったんですね……」
終わってすぐ、皆で職員室を見に行ったらもうすごかった。虹色レインボーにラメだのパールだの、いろいろキラキラ入ってるって感じに一面染まってたもん。ローズ様もさすがにあれは感心してたわねー。
というかこれ、お医者さんが作ったやつだよね? 確かゲーム……あ、ゲームでも医者というよりマッドサイエンティストの方が近かった。いや、さすがにレインボーな煙は出してなかった気がするけど。
「……あの、ゲートミア先生が学園に来た理由ってもしかして……」
「俺や兄上と一緒に別荘で休暇をとっていたときにな、ちょっと襲撃食らって」
ローズ様と殿下の会話に、こっそり聞き耳を立てる。そのへんのエピソードは、殿下ルートが進むとスチル付きで出てきてたかな。
第一皇子と殿下がこないだ行ったのとは別の別荘にいたときに、反帝国派が襲ってきたんだよね。あの時は、近衛兵にスパイがいたなんて無茶な設定だったかな。いや、皇帝陛下とかの近くに置くんだから色々調べるだろって。
それで、ゲームだと味方にだいぶ被害が出たんだっけか。殿下も怪我して、それでも何とか助かって今学園にいるお医者さんに助けてもらったんだよって。それで大変だったんですね、ってセレスタが言って殿下が気遣いは無用だ、みたいなツンデレエピソード。
「医師なんで様々な薬品を扱うこともあるんだが……医療に使うもんじゃないようなやつも混じっていてな……」
「でしょうね」
だよねえ。こんなキラキラ派手派手カラーリングできるお薬、お医者さんが扱うようなものじゃないと思う。
医者と科学者って、ジャンル一緒なんだろうか? いや、私そこまで頭よくないからわかんないけど。
「セレスタ様。そろそろ退散いたしましょう? お掃除が入るようですから」
「あ、はーい」
ローズ様に呼ばれて、とりあえずここを離れることにする。まあ、制服にこの色がついたりしたら大変だもんなあ。洗うのは私じゃないけどさ。
というより、それより知りたいことあるしね。
「でも結局、今回の黒幕とか分かったんですかあ?」
「いや、まだだ。ただ、職員の誰かが手引きしたのではないかとは言われているな」
「わざわざ職員室まで来ましたもんねえ」
殿下が教えてくれた話に、うんっと納得する。園舎の中でも結構奥まったところにあるんだよね、職員室。学生の個人データとか扱ってるからだろうけどさ……貴族の子供に騎士の子供に貴族や皇帝と取引してる商人とか鍛冶屋さんとか、だもんね。情報持ってかれたらやばいやばい。
前の世界みたいに速攻で情報があっちこっちに行っちゃう世界じゃないけどさ、それでもやばいくらいは私にだって分かるから。……スマホとかなくて家に連絡するのが手紙ってのがめんどくさいんだよね、私字が下手だし、この世界シャーペンやボールペンじゃなくてペン先をインク壺に突っ込んで着けて書くやつだから書きにくくて。
「全員の身上を再調査するらしいが……案外、逃げてるかもしれんな」
「そう言うのに限って、偽名とかかもしれないですねえ」
「確かにな。……詳しいな?」
う、何か殿下に睨まれてしまいましたあ。そっか、この世界テレビもないからサスペンスドラマとか見ないだろうし。
「家でそういうお話読んだり、小さい頃は偽名とか当たり前の世界だったので」
「まあまあ殿下。セレスタ様も苦労しておられるみたいですから」
そうよ、最初っから貴族だ皇子様だなんてことなかったんだから大変だったのよ、セレスタ・テウリピアは!
くっそう、なんで学園祭イベント出たのに殿下との仲進んでないんだか!
負けないぞー!




