079.令嬢は令嬢と合流する
「ローズ様、セレスタ様!」
舞台袖まで来たところで、数名おられる中から聞き慣れた声で名を呼ばれたわ。ああよかった、彼女も無事だったようね。
「シンジュ様!」
「大丈夫でしたか!」
「ええ、何とか」
同行してくださっている殿下やジェット様たちに視線を投げると、シンジュ様はほっとしたように頷いてくださった。舞台や観客席を伺うと、そちらの皆様も大丈夫なようね。騎士団の方などが来られたのかしら。
「シンジュ様もご無事のようで」
「セラフィノ様が来てくださったんです!」
「まあ」
あら。
私にとってのジェット様のような、シンジュ様にとっての救世主。騎士団の一員であられるセラフィノ・ササーニカ様がおいでになったのであれば、確かにここは解放されたと思って間違いないだろう。
「もう、それはそれはかっこよくてわたくし、見惚れてしまいましたわ」
「セラフィノ殿であれば、致し方あるまいな」
両方の頬を手で抑えてふわふわと微笑むシンジュ様の表情に、ジェット様も苦笑を浮かべるしかないみたいね。
と、その視線が舞台への出口に向いた。そこから背の高い、がっしりした体格の殿方が入ってこられる。緑がかった短髪、少々骨ばったいかついお顔のその方が、シンジュ様の婚約者であらせられるセラフィノ様。数度、お顔を拝見したことがあるので存じているわ。
「シンジュ様、大丈夫で……ギャネット殿下!」
「おう、セラフィノ」
まあ、騎士である以上セラフィノ様の意識がまず殿下に向かうのは当然のことだわね。ルリーシアもそこは感心しているようで、「さすが父上の部下だな……」などと呟いているわ。
「婚約者殿の前で、張り切ったようだな」
「そ、それは……に、任務ですから」
「構わんさ。惚れた女に会えてやる気が出るなら、何の問題もない」
「は、恐縮であります」
殿下より頭半分ほど背の高いセラフィノ様だけど、殿下のほうが大きく見えるのは気のせいかしら。それとも、立場と態度の違いがそうさせるのかしら。……まあ、さすがは皇族と言ったところなのでしょうね。
と、殿下が私とセレスタ様のところにやってきて、二人の背中を押し出した。セラフィノ様の方に。
「ちょうどいい。この二人も頼まれてくれ」
「はい、お任せを。殿下は」
「騎士団が動いて俺が動かんとなると、父上がいい顔をしないからな。ジェットもいるし、大丈夫だ」
「自分もおります、殿下」
「そうだな。ルリーシアもいるか」
なるほど、セラフィノ様であれば私たちの身柄を預けるに問題ない、と考えられたわけね。シンジュ様も一緒だし、大丈夫だと思うわ。
「なるほど、承知いたしました。ではお二方とも、こちらへ」
「分かりました」
「は、はあい」
「わたくしも一緒におりますゆえ、殿下におかれましてはご安心を」
セレスタ様も頷いてくださったし、シンジュ様もお言葉をくださったし、もう大丈夫。ジェット様の足手まといにならずに済みそうね、ええ。




