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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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70/100

070.令嬢は楽屋に向かう

 合唱の会場である屋外劇場は、武闘場とほぼ隣接した場所にある。というか、学園の設備として最初に造ったときにまとめて同じ場所に造ったらしいのだけれど。

 近くの屋台で、普段はできない軽食の買い食いをしてお腹を軽く膨らませてから私は、フォスと一緒に劇場の楽屋側入り口にやってきた。この後、フォスはダンス教室のために園舎に戻るのだけれど……ごめんなさいね、付き添わせて。


「ローズ、フォス!」

「まあ、ジェット様」


 『慰霊の碑』の横を通って入り口から入ったところで、ちょうど向こうからジェット様が来られた。おそらくは、ギャネット殿下に同行して先に入っておられたのだろう。


「おいでくださったのですか」

「もちろん。そろそろ来ると思ってたからね」


 ふふ、さすがジェット様だわ。私が来る時間にピッタリ合わせてここにおいでになるなんて、ほんとに。


「殿下も来ておられる。後で俺も、貴賓席で見学だ」

「貴賓席なんですのね……そう言えば、昔襲撃事件がありましたっけ」


 続けてのジェット様のお言葉に、そんなことがあったと思い起こす。楽屋側入り口の横にある『慰霊の碑』の碑文に、刻んであるのだ。

 まだ、スターティアッド家がガンドレイの帝位を担うようになってから時浅い頃。

 この学園に、今のギャネット殿下と同じように在籍しておられた皇子殿下のお生命を狙って反帝国派が襲撃してきた、という事件。殿下はお生命を落とされ、護衛や学生などにも多くの犠牲が出たというわ。もちろん、学生の多くが貴族の子弟であったために帝国にとっては大きなダメージを受けた、そうね。

 それから学園の警護はとてもとても厳重になり、学生や教師にも知らされていない護衛や防衛手段が存在しているのだそう。あまり詳しくは知らないけれど……そう言えば合宿で同じ班だったコーラル様は、隠密とかそういった方向に進みたい感じだったわね。


「そうそう。だから、ここだけは仕方ないことさ」

「殿下、面白くなさそうなお顔してらっしゃるでしょうね……」


 そんなこともあり、学園祭のようにボディチェックなどをするとは言え一般の方々がおいでになる行事の際には、どうしても殿下の警護は厳しくなる。ジェット様がこちらにおいでになれているのも、他の護衛の方々がおられるから。……ついでに、この入口付近の確認も任されているのでしょうね。

 などと考えつつ、楽屋前まで到着した。ジェット様に、肩をぽんと叩いていただく。


「しっかりな、ローズ」

「もちろんですわ。では、行ってまいります。フォスはダンス教室、頑張ってね」

「はい。ご武運を」

「戦ではないけれどね」


 フォスの言い方がちょっとおかしかったのに苦笑しながら私は手を振って、番をしてくださっている衛兵さんに学生証を見せて楽屋の中に入った。

 扉を閉めてからくるりと確認すると、ああ、シンジュ様がちょうどおられたわ。他の方々もそれぞれ、練習なり気持ちを落ち着けるなりしておられる。


「シンジュ様!」

「ローズ様、ああよかった」


 お名前を呼ぶと、微妙に沈んでおられたようなお顔がパッと晴れたわ。あ、もしかして私がいなくて不安だったとか……まさか、シンジュ様に限ってそう言うことはないわよね?


「知った顔がいたほうが安心できますから」

「ああ、確かに。とは言え一応、皆様とも顔合わせしておりますよね」

「そうですけど」


 ……あんまり、間違ってなかったみたい。まあ、上級生が多いしね。

 あちらの隅っこで大きく深呼吸されているのは中等部の方々で、職員の参加者の方は数名が目を閉じてリズムを取っておられたり、発声練習をしておられたり。男性の参加者は、別の楽屋で出番を待っているわ。


「そろそろ、お願いします」


 さあ、時間よ。

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