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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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68/100

068.令嬢は武闘を見物する

 騎士見習いや志望者たちが修行する場所は、構内でもそれなりに広く場所を取られた武道舎である。学園祭などで公開されることもあるためか、屋根のついた道場と屋根がなく観客席が設えられた武闘場が併設されているのよね。

 で、当然というか模擬戦闘は武闘場で行われるわ。悪天候のときは道場に移動するそうだけれど、今までそういったことはほとんどなかったようね。


「まだ、お客人は少ないですね」

「客人がたも、今日は前座って分かっていますでしょうから。本命は明日ですわ、きっと」

「そうね」


 少ないとはいえ、観客席は六割ほどが埋まっている。あくまでも学園での修業の場であるから、例えば帝城そばのコロシアムのように数千、数万人が入るような容量はない。それでも数百人が見に来ているのだから、すごいわよね。


「戦闘者、前へ!」


 おそらくはここで修行している騎士候補生たちの師匠に当たるであろう、がっしりした体格の壮年の殿方が声を張り上げる。彼の呼び声に応じて、青年が二人歩み出てきた。


「ラズロ・ネメシール! クレイス・ソリダット!」

「あら」


 名前を聞いて、気がついた。二人とも練習用の軽装鎧と軽い兜を着けているから顔が見えにくかったのだけれど、ちょうどラズロの出番だったのね。

 それに、お相手。クレイス、確か合宿のときにギャネット殿下がそのお名前を口にされたことがあるわ。


「ご存知で?」

「合宿のときにセレスタ嬢と同じ班、だった方かと。お顔ははっきり見ておりませんが」

「……それはそれは」


 フォス、その言い方は……多分、クレイス様にご苦労さまと言いたい感じよね。セレスタ嬢が同じ班というだけで、別班だった私たちより大変だったろうことは想像に難くないもの。


「はじめ!」

「はあっ!」

「たあっ!」


 殿方の掛け声と同時に、二人が駆け寄って剣をぶつけ合う。模擬だから木で作られた剣なのだけれど、それでも当たったらきっと痛いわよね。


「……ふむ。ソリダットの方が、なかなかじゃないか?」

「ネメシールも、まだ初心者らしいがあの気合はいいと思うぞ」


 がしがしとぶつかる木剣の音を背景に、周囲の観客からそういったお声が聞こえてくる。前座に出てくる方々の中から騎士として育てたい者を探す、スカウトとして来ておられる方のようね。中にはあまり戦闘には興味がないように仲間内でお話されている方々もいらっしゃるのだけれど……何のために、闘技場に来られたのかしら?

 前座だとこんな感じだけれど、明日の本命戦は違う。手っ取り早く言えば、ギャンブルの対象になっているのだ。……まあ、この国では合法ギャンブルの一つに闘技場があるのだからその延長線上、なのだけれど。


「……ローズ様、明日はどうなさいますの?」


 ラズロが押され気味になってきている武闘場から目を離し、フォスが尋ねてきた。明日、私が見たいのはルリーシアの戦闘くらいだしなあ。


「ルリーシア一本かしらね。賭ける気はないけれど」

「倍率よくないですしね」


 そう言う理由で私は、ギャンブルには手を出さない。ルリーシアが勝って格好良く勝ち名乗りを上げるのを見たいだけ、ね。卒業して騎士団に入団してからが見ものだわ。


「わああっ!」

「そこまで! 勝者、クレイス・ソリダット!」


 もっとも、そのルリーシアに直接指導を受けたとは言え、ほんの一、二ヶ月ではどうしようもなかったわね。ラズロ。

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