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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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067.令嬢は一日目を楽しむ

 そんなこんなで準備もすっかり完了し、今日から三日間の学園祭が始まる。

 首都の民や旅行者なども、荷物と身体検査をすれば学園内に入ることができるのよね。これを目当てに旅行してくる方もおられるそうだし。


「いらっしゃいませー! 可愛らしいカップ、いかがですかあ!」

「丈夫さが取り柄の鍋、お安くしますよ!」


 門を入ってから学園舎までの道すがらには、屋台の形での模擬店が色々並んでいる。普段よりも華やかに彩られた構内には既に、ご近所の方とかどう見ても違う領地からおいでになった方とかが歩き回っておられるわ。門で客人のチェックをしておられる衛兵さん、警戒のためとは言えご苦労さまね。


「まいどありがとうございまーす! よろしかったらまたどうぞー!」


 あら、あのフリルの多いエプロンを着けて愛想を振りまいておられるのはセレスタ嬢ね。とても可愛らしくて、ちょっぴり嫉妬しちゃうかも。やっぱり、笑顔の方が可愛らしいと思うわよ。


「模擬店とはいえ、かなり本物に近いのではありませんか? ……あまり、お店をよく知りませんけれど」


 並んで歩いているフォスが、模擬店を見回しながら感想を述べる。たしかに、私たちはお店というものにはあまり縁がないし……特に、こういった屋台形式のものは学園に来てから初めて目にしたものね。


「まあ、レキ様にしろグランにしろ、本物の商人の息子がやってますしね。卒業した先輩方の残されたマニュアルなどもあるらしいですわよ」

「そう言えば、合唱の楽譜にも色々書き込みがございますよね」

「歌い方のコツなどは、よく参考にさせていただいていますわね」


 これが、スターティアッド学園という一つの組織に所属することで得られるメリットの一つ、ね。先輩からの技術継承。

 模擬店にマニュアルがあるらしいのは知らなかったけれど、私のような何の取り柄もない者が参加するために用意される楽譜。もちろん新しいものも入るそうなのだけれど、古典的なものや昔から人気のある歌などは古い楽譜がそのまま使われる。そこには、歌い方のコツやさりげない息継ぎのタイミングなどちょっとしたことが書き込んであって、それを私たちは利用させてもらっている。

 ということは、合奏用の楽譜や模擬戦闘などにもそういったものが残されて代々伝わっているのでしょうね。私たちは、その辺りはよく知らないけれど。

 ……そうだ、模擬戦闘。ラズロが今日、出番だったはずだわね。


「私どもの出番は午後からですし、模擬戦闘でも見てみましょうか」

「ああ、ラズロが前座でしたっけ」


 だからフォスに声をかけたら、そうズバリと返されてしまったわ。ええまあ、そうなのだけれどね。


「仕方ないですわ。実力が実力ですし」

「本人も分かっていますからいいんですけどね……」

「婚約者様にいいところをお見せしたい、というのは分かりますもの」


 ということは、トピア嬢が中等部からいそいそと遊びに来られているかもね。出番は明日だけれど、ルリーシアも顔を出しているかしら。ちょっと急いで行ったほうがいいかもしれないわね、これは。


「じゃあ、ローズ様。急ぎましょうか」

「そうね、フォス」


 互いに笑って、私たちは足を早めた。若い殿方のグループを追い越しちゃったくらい、気が逸ってね。

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