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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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066.令嬢は設営を手伝う

 学園祭に向けて、構内では様々な準備が始まっている。私のように合唱に参加するものは歌を覚え、グランやルリーシアは模擬戦闘のために自身の技量を鍛え、イアンは鍛冶作業に精を出している。

 そうして、出し物や模擬店のブースを設営するのも学生の役割なので、もちろん参加する。とはいえ、力仕事はできないからフォスと一緒に内装のお手伝いとか、机や椅子を運んだりとかそのくらいなのだけれど。


「お手伝い、ありがとうございます」

「まあ、力仕事は得意なやつが請け負うべきだからな」

「ジェット様はともかく、しれっと殿下が混じっていらっしゃるのには驚きましたが」

「卒業するまでは俺も一人の学生だぞ」


 ……そんな感じで今、重い花瓶をジェット様と殿下に手伝っていただいて運んでいる。

 台車があるから動かすのは苦ではないのだけれど、「何だか謂れがあるらしくて壊すなよ」とはこれの運搬を頼んできた教師の一言だったので、正直助かったわ。お二人がいてくだされば、しっかり支えることもできるものね。結構、ガタガタ揺れるのよ。


「あら、ローズ様」


 不意に、名前を呼ばれた。聞いたことがある声なので顔をそちらに向けると、ああ、合宿で同じ班になったネフライラ様だわ。手にお持ちなのは楽譜のようだから、合唱なり合奏なりに参加されるのかもね。


「ネフライラ様」

「おう、ネフライラ」

「殿下、ご自身の作業もなさってくださいね。ローズ様は、発表会場の設営ですの?」

「はい」

「頑張ってくださいましね。わたくしは練習がございますので、これで」

「お疲れさまです」


 さり気なく殿下がご自身の作業をサボっておられることを匂わせつつ、ネフライラ様は軽く頭を下げて去っていかれた。それを見送っていると、ジェット様が教えてくださる。


「ネフライラは、吹奏楽の演奏に参加するんだ。チェロの担当だよ」

「ああ、なるほど」

「楽器の演奏がおできになるのですね。羨ましいわ……」


 さらっと聞こえたわよ、フォス。たしかに楽器が演奏できれば、こういうイベントとかで皇族方のお目に止まることも多くなるけれど。

 それを言ったら、私も楽器はできないのだけど。だから、合唱に参加させてもらっているのだから。


「終わったら、私たちも合唱の練習ですわよ。フォス」

「そうですね、ローズ様。せいぜい、歌を頑張るとしましょう」


 故に二人でこんなことを言い合っていたら、ギャネット殿下が目を丸くされた。……皇子殿下は本当に良いお顔立ちをされているから、こんな表情でも悪く見えないのよね。もちろん、ジェット様のほうがかっこいいのだけれど!


「それなら、こちらは俺たちに任せろ。何でお前たちに会場設営をやらせるんだ」

「高等部の学園祭は初参加ですから、少しでも雰囲気を味わいたかったんです。そう、私が申し出ました」


 ただ、殿下のおっしゃることにちょっと勘違いがあったので、失礼ながら申し上げる。少しくらいならお手伝いだってできるもの、と思ったがゆえの行動なのだけれど、ジェット様が私の肩を軽く叩いてくださった。


「ローズもフォスも、そう言うことは気にしなくていいんだぞ」

「そうだな。三年もあるんだから、やりたくなくても裏方なんぞこれからいくらでも味わえる。それに」


 ジェット様と殿下はそんなことをおっしゃってくださって、それから。


「ローズクォテアはどうしても目立つからな」

「生まれ持ったものですから、致し方ありませんわ」


 額の角をとん、と指先で突っつかれた。あらちょっとフォス、不機嫌にならないでよ。私のせいじゃないわ。

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