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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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064.令嬢は役割を考える

 夏休みが終わり、私や皆は揃って学園に戻ってきた。中等部に在籍しているときから、この時期になるととても楽しみなイベントが待ち受けているのよね。


「学園祭かあ」

「あまり、お祭りには縁がありませんし。毎年この時期が楽しみですね」


 領地の収穫祭などもあるけれど、あまり参加したことはない。あちこちで一斉にやるから、全部回れないもの。うちは基本、名代とちょっとしたお祝いを出しておしまいというところかしら。どこかに領主が顔を出すと、自分のところには来ないのかってクレームが来たりするらしいし。

 そういうこともあって、学園祭は楽しみなのよ。在籍している学生は、いくつか行われるイベントのどれかに参加することになっている……とはいっても各自専門が違うから、毎年ほぼ固定なのだけれどね。


「ルリーシアはどうなさるの? やっぱり、中等部のときと同じように模擬戦闘をなさるのかしら」

「はい。父も来るようで、修行の成果を見せるのには良い機会なので」


 騎士を目指して訓練している者たちは、武道場で模擬戦闘をしてみせる。ルリーシアのような女性が入ることは珍しいので、中等部時代から人気イベントの一つになっているわ。首都に住まう平民の女の子たちの間で、ルリーシアの人気が上がっているとか何とか。確かに、女性としてもかっこいいけれどね。

 で、私は彼女のように剣を振るえないし、料理もできないのでどうしても、やることは限られる。


「私は今年も合唱ですわね。ベタですけれど、毎年好評ですし」

「わたくしもですわ。イアンやルリーシアのように、特技があるわけではありませんものねえ」


 シンジュ様と顔を見合わせて苦笑する。古い時代から伝わる歌や吟遊詩人などが作る新作など、様々な歌を披露する場が設けられるの。

 ……まあ、あまり特技をもたない私たちのような者が何とか参加できるイベント、として置いていただいているのだけれど、子供には意外と人気みたいね。歌唱隊の衣装が天使のようで綺麗とか、そういうことみたいだけれど。

 他には。


「フォスはダンス教室でしたっけ」

「ええ。小さいお子様がたに大人気なんですよ。それに、ダンスの基本を軽くでも抑えておくと、成長してから踊る機会ができたときにやりやすいという話も伺いますからね」


 地味に子どもたちと打ち解けやすいのがフォス。彼女は、先輩方と共に子どもたちや平民たちに一日ダンス教室を開くことになっているわ。収穫祭などでも踊ることはあるから、基本を覚えるとそういったところで人気が出るみたい。

 まあ、そういった感じでだいたい誰がどこに参加するかは決まっているようなものだけれど、そう言えば編入生のお二人はどうするのかしらね?

 セレスタ嬢は今おられないけれど、グランがいるわね。学園祭のことは聞いていると思うから、尋ねてみましょうか。


「そういえば、グランは学園祭、どうなさいますの?」

「俺ですか?」


 尋ねてみると彼はご自身の顔を指差してから、さらっと答えてくださったわ。


「商売なら親がやってるのを横で見てたりするんで、模擬店かなと思います」

「なるほど。模擬店はいつも手が足りない、と伺っておりますから、きっと助かると思いますわ」


 大商人のご子息ですものね。お店でのやり取りなども見たことがあるのね、きっと。

 ただ、彼は今年が初参加だから少し要領がわからないところもあるようね。


「問題は何売るか、ですけれどね。軽食などはカフェや食堂がやるんでしょう?」

「んじゃ、間違いなく俺らの作った装飾品や調理器具なんかっすね。人気あるんすよ」


 そこへ、ちょうどイアンが口を挟んできてくれた。ルリーシアと同じく、手に技術を持つ者なのでやることは決まっている……というか、前の学園祭が終わってからすぐに次の準備を始めているそうだから。


「調理器具?」

「銅や鉄で、鍋とかやかん作るんす。学生が修行の一環で作ってるんで、ちょっぴりお安めに提供してるんすよ」

「なるほど、首都の民に売るわけだな。任せとけ」


 あ、グランったら目をキラキラさせて胸を叩いたわ。商人の血が騒ぐ、というやつなのかしらね。

 グランがお商売なさってるところ、ちょっと見てみたい気がするわ。ええ。

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