061.令嬢は級友を語る
何とか昼食の時間を迎え、食堂に入ると殿下とジェット様にお会いできたわ。フォスを含めて四人、日替わりの煮魚定食を手に席につく。
「昨夜は早めに寝たなあ。二人はどうだった?」
「私も昨夜はすぐに寝てしまいまして、荷物の片付けが終わっていませんの」
「それは早めにやらないとな」
殿下のご質問に、ひとまず私が答える。本当に、早くあれを片付けてしまわないと寮のお部屋が狭くて仕方ないわ。
視線を向けられて、今度はフォスが答える番ね。
「私は荷物を片付けてから寝ましたが、よく眠れましたよ」
「さすがはフォシルコアだな。その辺りはしっかりしている」
「殿下、あなたも盛大に荷物が残っていますよ」
「分かってるよ。帰ったらやるから」
ジェット様からツッコミを入れられて、殿下の視線が天井の方に向けられたわ。盛大に、ということはまるっきり片付けられていない、ということかしら。
……私、人様のことは言えないわね、私も。相手が殿下でないとしても、ええ。
そんなことを考えながら煮魚の身を口に運ぶ。濃いめの味付けがああ、学園に戻ってきたのねと感じさせるわね。
「例のうるさいやつはどうした」
「うるさい……って、セレスタ様のことですか」
殿下のお伺いに、問い返してしまってから軽く口に手を当てた。……だって、うるさい方で即座にセレスタ嬢を思い出した、ってことだもの。実際にうるさいのだけれど、ご本人はいらっしゃらないわよね?
口ごもってしまった私の代わりに、フォスがサラリと答えてくれたわ。顔色を一つも変えずに、セレスタ嬢の授業中の様子を。
「授業中に居眠りしかけては、必死に目を開いておりました。今頃、どこかで昼寝しておられるのではないかと思われますが」
「……頑張って起きていただけ、レキよりマシか」
その報告を聞いて、殿下が小さくため息を付いた。レキ様よりマシということは、もしかして。
「レキの奴、今朝寝坊して遅刻したんだよな」
「さすがにたるんでいると怒られていましたな。その後も授業中に寝ていましたし」
ああ、確かにセレスタ嬢はレキ様よりその、ほんの少しマシだったわね。授業に遅刻はしなかったし、授業は何とか起きて聞いていらしたもの。
「最上級生がそれでは、私ども下級生に示しがつかないのでは?」
「ま、レキはいつもあんな感じだしな。学園を出て家に戻ってからが勝負のような気がするが……まあ、家は継がないんだが」
「商売ごとにはいまいち向いていない性格、とも言えますな」
そうだ、レキ様のご実家は確かサンフラウ商会だったっけ。グランもウィスタル商会の子息なのだからある意味条件は同じなのだけれど、先輩には失礼ながらグランのほうが幾分しっかりしていて商人の後継者には相応しい、と思うわね。
レキ様は姉上がおられるとかでお家を継がれないとは伺ったことがあるし……それぞれのお家の事情にまで、首を突っ込む気はないけれど。




