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006.令嬢は食堂に向かう

 ひとまず午前中の授業を終え、昼食を取りに食堂へと向かう。グランもセレスタ嬢も、初級魔法の授業にはきちんとついて来られたようでそこは安心したわ。

 実家では使用人たちが準備してくれるのが常だったから、ここの食堂のようなセルフサービスというのはとても興味深かったわね。もう、だいぶ慣れたけれど。

 慣れたと言えば、視線かしら。別学年や新入生からこの額に向かってくる視線はいつものことだし、私にはフォスがいてくださってるから。


「それにしても、負けませんからって……何のことかしらね」

「ローズ様より良い婚約者を見つけよう、と頑張っているのではありませんか? 彼女はテウリピアの後継者になるわけですから」

「ああ」


 その途中、私とフォスの間で話題になったのはやはりというか、セレスタ嬢のことだった。なるほど、婚約者探しであれば納得はできる。

 私は次女で、そのこともありジェット様のところに輿入れすることが決まっているわ。けれど彼女は、自分のところへ婿を迎え入れなければならないでしょうね。そのためにこそ、テウリピア子爵は市井に住まっていた娘を家に迎え入れたのでしょうから。

 ちなみにフォスも跡継ぎではないので、いずれどこかに輿入れすることになる。内々に話は進んでいるらしいのだけれど、なかなか難しいと以前言っていたわね。彼女の場合、貴族だけでなく大商人などからも話が来ているようだから。

 まあ、フォスの話は置いておこう。今は、セレスタ嬢のことを話しているんだったわ。


「それなら頑張っていただきたいわね、いろいろと」

「ああいう方のようですから、お相手になる方も大変そうですけどね」

「相性のよろしい方も、おられるのではないかしら……」


 思わず二人でうーん、と考え込んでしまったわ。

 セレスタ嬢と相性の良さそうな方って……お年を召されて穏やかな気性になられた方か、彼女と同じように市井で育った方……かしら? そのどちらかで、かつテウリピア子爵の御眼鏡に適う方っておられるのかしら。

 まあ、失礼ながら人のお家のことだ。あまり気にかけないほうが良さそう……と思ったのは、食堂前で殿下とジェット様のお姿を目に止めたから。私にとっては、ジェット様のほうが重要事項ですもの。


「ローズクォテア、フォシルコア」

「殿下、ジェット様」


 殿下の方からお声をおかけくださったので、私も答える。と、殿下は軽く肩を揺すってお笑いになった。


「婚約者の名前を先に呼んでも、俺は不敬罪には問わないぞ?」

「いえ、そういうわけには参りません」

「そうですよ、殿下」


 罪に問われるかどうかはともかく、私もジェット様も殿下のことをまずお呼びするのが当然のことだと思っているわ。それもあって、二人揃って首を横に振ってしまった。フォスも、「まあ、そうですわねえ」と困ったように笑っているし。


「やれやれ。まあ、そういう真面目なところを俺は気に入ってるんだがな」

「恐れ入ります」

「この程度で恐れ入るな、ローズクォテア。いちいちそんなことを言っていたら、息をするにも俺に畏まらなきゃならなくなる」


 真面目なところを気に入っていただけてると言うのであれば、これは喜ばしいことだと思うの。私の印象が悪くなることで父や母、ジェット様の印象まで悪くなってしまっては困るものね。

 そんなことを考えていると、殿下がお話を続けられた。


「昼は……これからのようだな。一緒にどうだ」

「私どもは問題なく。ね、ローズ様」

「はい、もちろんです」


 平然とした顔で返したけれど、何故フォスが先に答えるのかしら? まあ、婚約者が未だにおられない殿下だから、あわよくばと考えるのは分かるけれど。ただ、男爵家だと難しいわよ、とは口にはしなかった。私たちにとっては、それは当たり前のことだから。


「それは良かった。な、ジェット」

「ええ。ローズとお昼を共にできる機会は、なかなかありませんから」


 ああもう、そんなことよりも昼食の時間にジェット様の笑顔を拝見できるなんて、そちらのほうが重要ごとだわ。

 中等部と高等部に離れていたときは、カリキュラムの時間の都合もあってほとんどお会いすることができませんでしたもの。

 失礼のないように、食事を取らなければね。

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