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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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059.令嬢は学園に戻る

 翌日、私たちはがたがたと揺れる馬車に乗って学園に戻ってきた。自分の荷物を自室まで持ち帰って、ふうと一息つくと思わずベッドに倒れ込む。


「ああ、疲れた……」

「合宿中もそうですけれど、行き帰りの馬車が長いですものね」


 フォスは私よりは元気みたいだけれど、それでも自分のベッドの端に腰を下ろしている。ああ、ベッドメイキングもリネンの洗濯も、自分でやる必要がまったくないこの寮に戻ってきたのがとても嬉しい。


「見慣れたお部屋が、とてもありがたく思えるわ」

「そうですね」

「お洗濯もお料理もやってもらえるから、本当にありがたいわ」

「おそらく、その感覚を忘れてはいけないということでこの合宿があるのでしょうね」

「そうねえ」


 庶民は、自分でお料理やお洗濯やお掃除をする。でも、私たちはそうじゃない、ことが多い。

 私の実家でも、今後嫁ぐことになるジェット様のお家でも、お洗濯やお料理やお掃除は使用人がやること。もちろん彼らにとってはそれが仕事なのだからいいのだろうけれど、あくまでも人がやっているのだからあまり無理をさせてはいけないよ、ということなのかしらね。

 使用人の方が家族より人数が多いのだから、無理をさせていたらどう反撃されるかわからない……わね。ええ、気をつけることにしよう。

 そんなことを考えていると、くう、とお腹が鳴った。人前であればはしたないけれど、ここには私とフォスしかいないし、大丈夫でしょう。


「ああ、お腹が空いたわ。……ここでの食事も久しぶりよね。と言っても三泊だけど」

「食事も良いんですが。明日からまた授業なんですから、荷物の片付けは早めにしてくださいね。ローズ様」

「……そうだった……」


 明日からは、普通に授業が再開される。お休みは今夜までで、スケジュールとしては結構厳しいんじゃないかしら。酷いわ、先生方。

 仕方がないので、ひとまず起き上がる。……荷物の片付けより先に、食事をとりたい気分ね。

 ここでは食事は頼めば出てくるけれど、合宿で自分たちで食材を集めたり切ったりしたのは、ちょっと楽しかったわ。まあ私の場合、ジェット様が一緒にいてくださったからなんだろうけれど。


「ローズ様。お顔が緩んでいらっしゃいますわよ」

「ほへっ」


 フォスに指摘されて、慌てて頬を抑える。あらいやだ、フォスしかいなくてよかったわね。


「ジェット様と同じ班だったから、幸せだったんですよね?」

「ええ、それはもちろん」


 そこは否定のしようがないわね。ジェット様と同じ班で、同じ食事を作って食べて、薪を集めたり水遊びをしたりして、とっても幸せだったんですもの。……確か今の高等部内に婚約者がいる者は私たちだけだから、他の方にはごめんあそばせ。

 ……他の班は、それぞれどうだったのかしら。とりあえず、目の前にいるフォスに伺ってみましょうか。


「そう言えば、フォスはどうだったの? サンドラやラズロと一緒だったんでしょう?」

「二人とも、意外におとなしかったですね。サンドラ様はアレクセイ様がおられませんでしたし、ラズロ殿はこの前のセレスタ嬢の一件以来静かなものですよ。先輩方もおられましたしね」

「そう。なら良かったわ」


 割とシンプルな感想をありがとう。

 確かにサンドラは、アレクセイがいないと言葉数がそこそこ減っておとなしくなるわね。普段はよく二人で行動しているから、調子が狂うのかしら。生まれたときから一緒にいる、双子の兄妹ですものね。あら、姉弟だったかしら?

 ラズロは……ああ、セレスタ嬢のお話があってからそうね。静かになったわね。これ以上問題を起こして、婚約者のトピア嬢でしたっけ。彼女に迷惑を掛ける訳にもいかないもの。そんなことになれば、ご実家にも何がしかのお沙汰が出るかも知れないし。

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