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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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50/100

050.令嬢はアンズを手に取る

 焼けた肉を、ジェット様がそれぞれトングで拾い上げて皿に移してくださった。既に下味をつけてくださってるそうなので、火が通ればそのまま食べてよいのだとか。


「もしかしてセレスタ嬢、目の前で獲物を解体されたのではありませんか?」

「食肉にするまでが任務、でしたから」


 コーラル様の問いを、ジェット様は……多分肯定されたのよね。捕らえた獲物を解体して食肉にしてそれぞれの班に持ち帰る、というのが獣の罠を見に行った者たちの任務だったのだから。


「殿下はお前の役割だろう、せめて目を離さずしっかり見ておけ、と」

『うわあ』


 ジェット様のお言葉に、彼以外の全員が少々はしたない声を上げた。私も込みで、よ。

 セレスタ嬢、今お肉をちゃんと食せているかしら? 見たものを思い出して食べられないでいるのではないかしら?

 まあ、私はそういうところを見ていたわけではないから、彼女の気持ちはまったくわからないけれどね。


「イアンは分かっていると思うが、しっかり焼いて食べるように。体調を崩すといけないからな」

「はーい。もちろん、分かってるっすよー」


 男同士のせいか、ジェット様とイアンの会話は少し気安い感じに思えるわね。まあ、辺境伯の嫡男と帝国でも著名な鍛冶師の跡継ぎだもの、今から深くお付き合いをしていても問題はないわ。テッセン工房で造られた剣をジェット様が手にされたところ、私は見てみたいもの。

 と、取ってきたグミとアンズを洗って、アンズは手頃な大きさに切って。これで良いのかしらと思いながら、皿に乗せてテーブルに差し出した。


「あ、ジェット様、皆様も。グミとアンズですが、よろしければ」

「主にローズ様が見つけてくださったのですよ。感謝しますわ」


 ネフライラ様がお言葉を付け加えてくださったのだけれど、実の丁寧な扱い方を教えてくださったのはネフライラ様なのに。

 でも、他の方々はそういうことを気にせずにそれぞれ摘んでくださった。このアンズは酸味の少ない種類らしくて、普通に食べて美味しいのだそうよ。

 皆が食べているのを見ていると、ジェット様がこちらに視線を向けておられることに気づいた。相変わらず、肉に火を通しておられるわ。


「……すまない、ローズ」

「あら。いかがなさいました?」

「アンズを食べたいのだが、手が汚れていてな」


 そうおっしゃるジェット様の手を見ると、確かに肉汁などで汚れていらっしゃるわね。これでは、アンズを取って食べても肉の味が混じってしまうわ。

 それならば、私が取って差し上げるのが最善策ね、ええ。


「分かりましたわ」


 手頃なサイズのアンズを一つフォークに突き刺して、それをジェット様の口元まで持っていく。「あーん」と声をかけると、ジェット様も呼応してくださって「あーん」とお口を開いてくださった。


「どうぞ」

「ん。……ん、酸味がきつくなくて食べやすいな。ありがとう」

「どういたしまして」


 ジェット様のお顔がほころんだので、私は嬉しくて少しだけ笑った。……ええと、それで皆様、どうして私たちの方をじっと見ているのかしら?


「あの……何ですの?」

「いやー。やっぱり婚約者同士、仲が良いなあと思いまして。羨ましいっす」

「ああ、それはありますわね」


 魚を焼き上げたイアンが楽しそうに答えてくれて、ネフライラ様はほんわりした笑顔で私とジェット様を見比べておられる。

 ……人前であーん、はちょっと駄目だったかしら。


「同衾はいけませんが、お食事の際に仲良くされるのは問題ないと思いますよ。私から見ても微笑ましいですね」

「まあ」


 コーラル様まで、何をおっしゃっているのかしら。同衾はきちんと輿入れしてからよ。

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