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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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026.令嬢は軽く回想する

「全くもう、ラズロは冗談じゃないですわ」


 翌日のお昼を、私はアレクセイとサンドラと一緒に食堂で取っている。もちろん、フォスも一緒よ。

 皆で日替わりの、今日はチーズハンバーグ定食なのだけれどアレクセイはデザートを追加、サンドラは自分用の香辛料を加えて食べている。……ほどほどにね。

 このチーズを載せたハンバーグ、とても美味しいのよね。学園を巣立った貴族たちの実家では、食事のメニューに加えられることが多いの。肉を余さず使うことができるから、厨房の方でも大歓迎みたいね。

 まあ、昼食のメニューはさておいて。


「あんなんだから、私の婚約者候補から早々に外れたっていうのに」

「悪いやつじゃないんだけどな……食事のたびに甘いの辛いの論争が起きたら、嫌だよね」

「シェフに、余計な味の注文付けそうですよね……」


 話題は結局ラズロのことになってしまっているわね。彼がサンドラの婚約者候補だったというのは中等部に入る直前の話だそうで、それがあの思い込みの激しさからサンドラがお断りした、ということのよう。お互い伯爵家だから、それでなんとかなったようね。

 確かに、辛いもの好きなのに「サンドラは甘いものが好きだから」という思い込みで食事を準備されたら困るわよね。一日三度、間食も入れたらそれ以上の回数。たまったものじゃないわよね、ええ。


「……ローズ様は、問題とか起きなかったのですか?」

「え?」


 不意にサンドラが、私を見てそんなことを尋ねてきた。唐突なので、何を聞かれているのかちょっと分からないわ。


「問題、と申しますと」

「これ、ですわ」


 とん、とサンドラが自分の額を指先で叩く。……つまり、私の角のことね。

 なるほど、確かに何か問題が起きてもおかしくないわよね。もともと額がちょっぴり出っ張っていたのが、中から赤い角が生えてきたんだもの。


「中等部に入られた頃にはもうありましたから、私たちは見慣れてるんですけど。でも、成長途上で生えてきたんですよね?」

「そういえばそっか。モンタニオ家の方から、何か言われなかったんですか?」


 サンドラと、そしてアレクセイも興味を持ったのか便乗してくる。ジェット様のご実家から当時言われたことを、きちんとお伝えしてみよう。


「諸手を上げて、喜ばれましたわね。なんと素晴らしい、我がモンタニオにもジェットにも相応しいではないかと」

『はい?』

「私もその反応でしたわ。心中お察しします、アレクセイ様、サンドラ様」


 ええ、そうだったわね。この声が届いたすぐ後にフォスにこんなことを言われた、と伝えたときと今の二人はまるで同じ反応よね。

 でも、喜ばれたのだから良かったわ、と思う。その理由も、お伝えしなくてはね。


「うちのご先祖様たる伝説の鬼神のこと、ご存知ですよね」

「はい」

「帝国創生物語にも、よく登場されますからね」


 私に角が生えても、結局あまり問題にならなかったその理由。ハイランジャ家の祖でありガンドレイ帝国創生の原動力となった伝説の鬼神、アダマス・ハイランジャ様。真か嘘か、その頭部には雄々しい角が生えていたとも伝わっているわ。

 その末裔である私、ローズクォテア・ハイランジャに小さな角が生えてきてしまったけれど、それはつまりアダマス様から延々と繋がるハイランジャの血の現れ、とモンタニオ家の方々は受け取ってくださったようなのよ。


「モンタニオ家は、隣接する王国との境を守る重要なお家柄ですわ。そこに輿入れする私が鬼神の末裔である、そのことがはっきりした素晴らしい証だと」

「ああつまり、モンタニオの血に伝説の鬼神の血が入って更に強化されると」

「まあ、そういうことですわね」


 サンドラに頷いて、チーズハンバーグを一口。ああ、このチーズのとろみが何とも言えず美味しいわ。モンタニオのお家にこのメニューは追加されるのかしら? 今度、ジェット様にお伺いしてみよう。


「……ちなみに、ジェット様はなんとおっしゃっておられました?」

「単純に、よく似合っているよ、と」


 『可愛い。よく似合ってるよ』そう、額に角が生えた私を見てジェット様はそうおっしゃった。だからこそ私は胸を張って、角を隠すこともなく生きているのよ。


「……あら?」


 ジェット様のおかげで今の私があるの、と思いながらふと顔を上げたら、双子は揃ってテーブルに顔をうずめておられた。まあ、食事中に行儀が悪いわよ?


「いやもう、ローズ様とジェット様が仲良しすぎて何よりだよ……」

「その分け前、私どもにもいただきたいですわ……」

「……お二方は学園に来てからですから、まだマシですわ……」


 おかしな方々ね。それとフォス、どうしてあなたまで突っ伏しているのかしら。

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