024.番外:転生令嬢はストーリーを進める
うーん。
何か、変なふうになってるなあ。
前世でやったゲームと、設定が違う部分がある。アップデートでもされたのかな?
ローズクォリス侯爵令嬢なんか、そうだよね。ゲームでは自分が上位貴族の令嬢だからって偉そうにしてて、だから普段から校則違反の装飾品を付けてる。ゲームしててムカついたから、よく覚えてるよ。
だのに、ゲームと同じようにその装飾品剥ぎ取ろうとしたら痛い、だって。よく見たら、おでこから生えてるし。
角生えてるなんて私、聞いてないんですけど! あーもー絶対データアップデートされてる、参ったなあ。
とは言え、基本的な攻略ルートが変化してないことを祈りつつ頑張ってみることにする。要は、ギャネット殿下の目がローズ嬢に行かないように頑張ればいいんだもんね。
「ラズロさん、相談に乗ってください」
「え、俺?」
ゲームの主役として外見が可愛らしい自覚はあるから、ちょっと上目遣いでうるうるしてお願いしてみたらあっさりラズロさんは引っかかってくれた。うんまあ、一応攻略対象の一人ではあるけど、こんなにチョロくていいのかな?
といっても、別に私は逆ハーやりたいわけじゃないし。あくまでも、ギャネット殿下を攻略するためにはラズロさんの協力が必要というか。中等部に婚約者がいるそうだけど、別にこの人を攻略するわけじゃないからいいよね。
「ローズ様は、ジェット様とものすごく仲が良いよ。その関係で、殿下ともお話しする機会が多いかなあ」
「そうですね。……殿下もかっこいいから、まさか目移りとかしないですよね?」
「それはないない。幼い頃からの婚約者同士で、ローズ様が学園を卒業されたらすぐに輿入れなんじゃないかって言われてるし」
こしいれ……ええと、多分結婚のことよね。でも、このあたりの話はゲームまんま。そこから私がフラグ立てとかミスると、何でかローズ嬢がギャネット殿下とフラグ立てちゃうのよね。ジェットさんと一緒に私、というかゲームのセレスタが凹むスチルなんて回収したくなかったわ、ええ。
「そうか。セレスタ、君はギャネット殿下のことがよほど好きなんだね」
「そうなんです。ごめんなさいね、こんなこと言っちゃって。相談できる人、他に思いつかなくてえ」
「気にしなくていいよ。君の力になれるんなら」
うん。ラズロさんははっきり言ってあげれば分かってくれるキャラだから、これで大丈夫……だと思う。何かゲームと違うところもあるみたいだから、もうちょっと慎重に行かないとね。
「ありがとうございます。今後も頼りにしちゃっていいかしら?」
「もちろん!」
とはいえ、やっぱりチョロすぎないかな? 私が言うのも何だけどさ、ラズロさんのお家と婚約者、後継者と結婚相手は考えたほうがいいと思う。
……というのもこのラズロさん、攻略キャラなんだけどさ。うっかりフラグ立てミスすると、ヤンデレルートに入っちゃうんだよね……。はっきりしっかり言えば分かってはくれるんだけど、ちょっと間違えると思い込んだら一直線になるっていうか。
「大丈夫だよね……」
「ん? 任せてくれよ!」
ええと、私何か間違えてしまった気がするなあ。大丈夫かしら、これ。
ゲームだと、もっと先でイベントがあるのよね。ローズ嬢が殿下に乗り換えかかってるあたりで、私と殿下が仲がいいからって嫉妬して、私を階段から落とそうとするの。それをラズロさんが見咎めて、糾弾する……んだけど、痛そうだからやだなあ。
そんなイベント、起きないに越したことはないよね。ゲームとは違うけど、ローズ嬢にはこのままジェットさんと仲良しこよしでいてもらえると私、すっごく助かると思うんだ。そこらへん、シナリオアップデートされてたらいいんだけどなあ。
よし、そろそろ教室に戻ろう。まさかここで、自分で階段から落っこちるなんて思わなかったけど、さすがにこれでイベントフラグはないでしょ。ねえ?




