016.番外:転生令嬢はゲームスタートする
「テウリピア子爵の使いの者です。あなた様がたを、お迎えに上がりました」
その名前と言葉を聞いたときに私は、「よっしゃあ!」と胸の内で叫んじゃったわ。
これで私、ギャネット殿下のお妃になれるんだって分かったんだもの。
この私、セレスタ・スモトリ改めセレスタ・テウリピア。前世ではゲーム大好きの女子高生だったのが、うっかり事故に巻き込まれちゃって生まれ変わってきたのよね。いちいち前世の名前まで覚えてないわ。
気がついたらお父さんがいなくて苦労して私を育ててくれてるお母さんと二人暮らしだったけど、その状況と自分の名前、そしてガンドレイ帝国っていう国の名前で気がついたの。
「ゲーム世界転生、きたー!」
うん、まさか自分の身にそんなことが起きるなんて思ってもみなかった。でも間違いなくこの世界は、私が頑張ってクリアした『宝華世界のセレスタ』の世界!
そう、タイトルに名前が入っちゃってる私はゲームの主役なの。お父さんがいなかったのは、実は私がテウリピア子爵がお母さんに産ませた子供だったから。それに子爵が気づくのは、私が学校の高等部に入れる年齢になるちょっと前の話。
子爵の娘として引き取られた私が、スターティアッド学園の高等部に編入させてもらうことでゲームはスタート。いろんな学生だったり教師だったりと出会って、好きなキャラを攻略するっていうのが『宝華世界のセレスタ』の内容ね。
「ギャネット殿下……うん、いる。よっし」
これからクラスメートになる人とかの名前は調べようがないけれど、帝国皇帝の第二皇子であるギャネット殿下のことはよく知れ渡っているから私でも分かった。ちゃんと私より二つ上で、今は学園で勉学を頑張っているって。後々お兄さんである第一皇子の右腕として、帝国になくてはならない人になるんだよね。
ここまで知ってるってことはもちろん、ギャネット殿下は攻略できるキャラの一人。側近候補である黒髪のジェットさんも攻略キャラなんだけど、彼真面目っ子すぎるからなあ。ちょっとワイルドなギャネット殿下のほうが、私は前世の頃から好みだったんだ。
「そうすると、ライバル何とかしなくちゃなあ」
で、ギャネット殿下……とジェットさんを攻略するにあたってちょっと問題になるのがライバルキャラ。
『宝華世界のセレスタ』ではキャラを攻略する際、それぞれの対象ごとにライバルキャラが存在する。
ギャネット殿下、そしてジェットさんを攻略する場合のライバルキャラはローズクォリス・ハイランジャ侯爵令嬢。ジェットさんの婚約者って設定なので当然ジェットさんの場合は奪い合いになるわけなんだけど、ギャネット殿下のときも彼女が立ちはだかるのよね。
……ま、要はこちらのフラグ立てが不足してるとギャネット殿下がローズ嬢に惹かれちゃって、側近の婚約者を奪っちゃうというか……ローズ嬢が鞍替えしちゃうというか。冗談じゃないわよね。
「ま、大丈夫か! 既に攻略してるもんね、ゲームで」
うん、ここらへんは自信ある。ギャネット殿下は貴族貴族してる女の子はあんまり好みじゃなくて、だから平民っぽい私に惹かれてくれるっていう設定なんだから。フラグ立てが不足した時ローズ嬢に惹かれるのも、実はローズ嬢にもそう言うところがあるから、なんだよね!
「目指せ、ギャネット殿下のお妃様っ!」
さあ、明日から私もスターティアッド学園の生徒になる。荷物は既にお父さんが送ってくれてるそうだから、私は明日の朝にこのテウリピアの屋敷から馬車で学園入りする。編入式をして、そこでローズ嬢の校則違反に堂々と文句をつけてあげて、まずは第一フラグを立てなくちゃ。
頑張るぞー!




