表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/100

015.令嬢は誘いを受ける

「さて。ジェット」


 退室するイアンたちを見送って、殿下がこちらを振り向かれた。ああ、このままジェット様と一緒に、お戻りになられるのね。少し名残惜しいけれど、同じ学園の中にいるのだからジェット様とはいつでも会えるのだから。


「は」

「今日はもう、大した用事もない。ローズと共に、カフェにでも行ってみたらどうだ?」

「え」


 あら? ちょっと予測が外れたわ。というか、殿下のお側でセレスタ嬢が「それは私と殿下ー!」とか喚いていらっしゃるけれど、いいのかしら。

 セレスタ嬢はともかく、これはつまり、ジェット様と校内デートのお許しが出た、ということなのかしら。ああ、この学園はその性質上恋愛禁止、なんてことはないし、休憩時間や休日等は生徒同士でデートをしていることもよくあるけれど。

 確かに殿下には、ジェット様以外にもお付きの方がおられるし忍びの者が常に付き従っている、とも言われるけれど。


「よろしいのですか?」

編入生(へんなの)が来て、大変だろうしな。ジェット、しっかり労ってやれ」

「は、ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えたく」

「そうしろそうしろ」


 はっはっは、とお気楽な笑い声をあげられて殿下は、じゃあなと手を振りながら道場を去っていかれる。それに釣られるようにフォスとシトラも、「それでは、私も失礼いたしますね」「私もここで。それではごゆっくり」と退室していってしまった。あら、もしかして気を使ってくれたのかしら。


「あ、殿下、待ってくださーい! どうして人に勧めて、自分は行かないんですかー!」


 そうして殿下の後を、セレスタ嬢が元気に追いかけていかれる。……殿下のおっしゃった『へんなの』って、失礼ながらまず間違いなく彼女のことよね? 少なくとも、皇帝家の周辺には殿下をあんな感じで追いかけていく者はいそうにないし。


「……テウリピア子爵令嬢、だったよな? 彼女」

「はい、そのはずなのですが」


 どうやらジェット様も同じようなことを考えていらしたらしく、セレスタ嬢について私に問うてこられた。ええと、一度子爵ご自身においで頂ければ確認できそうなのですが……まあ、学園に編入できたのですから身分については大丈夫、でしょう。多分。


「まあ、彼女のことは後で考えることといたしましょう。ジェット様」

「ん、そうだな」


 ジェット様にそうご提案申し上げたのだけれど、正直なことを言えば後になってすら考えるのをやめたいわ。まだ、今日から一緒に授業を受けることになったばかりなのに。

 ……授業中はそれなりにおとなしかったから、まだいいのかしら?

 そこまで考えて、思考を打ち切る。いつまで考えていても、セレスタ嬢の言動が変更するわけではないものね。


「ところでカフェって、さっき彼女が言っていたカフェのことか?」


 ふと、ジェット様がそんなことをおっしゃった。

 今年度から構内に出店したカフェのスイーツが美味しいというのは本当の話で、だからセレスタ嬢が殿下をお誘いしたのもおかしくはない。……殿下の好みをご存知でなければ、の話だけれど。


「今年からできたんだっけな」

「ええ、軽食も取れるそうですわ。それと、確かケーキセットが人気とかで」


 ケーキセットは一度食べてみたい、と思っていたのだけれど、店の雰囲気などでカップルが多いのだそう。……それなら私だって、ジェット様にご一緒いただきたいなあとは思っていたのよ。

 ただ、ジェット様は甘いものはあまりお好きでないから、お誘いするのもちょっとね。


「俺は甘いものはそれほどでもないが、ローズは好きだったな。じゃあ、行くか」

「はい!」


 それでも、ジェット様が手を差し出しながらそうおっしゃってくださったのだから。私としては、首を横に振るなんてことはしないわね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ