0.序章 チートな一家
「弾、あなたに大切な話があるの」
こんなことを母さんに言われたら誰でも「実は養子だった」とか「知佳(姉貴のことだ)が結婚する」とかだと思うだろう。 実際、俺もそう思った。
そしてその日の夜。
呼ばれた通りに部屋に入ると母さんも父さんも黒っぽい服に身を包み、帽子を被ったり杖を持ってたりしている。 姉貴はワインレッドの洋風なセーラー服を着ている。
スマホを立ち上げて日付を確認する。
11月1日、うん、ハロウィーンの仮装じゃなさそうだな。
なら、これはなんだ。
「ごめんね、弾。 今まで隠してて」
私たち人間界のモノじゃないの。
妖艶な笑みを浮かべながら母さんが言った。
予想の遥か斜め上な話だった。
確かに小さい頃から違和感を感じていた。
みんな傷の治りが異常に早いことや小学校に姉貴が通ってなかったこと、。
挙げだしたらきりがない。
だからって人間じゃないって思わないだろ!?
なんでも、母さんは魔界の王女らしい……って俺の爺さんは魔王なのか?
「ああ、確かにエマの母君である、イリア様は魔王だったな……」
魔王って女性なのか、しかもさらっと言っちゃうあたり父さんも高位だったのだろうか。
「レンさんは あちらでは『零下のシュルトン』の二つ名を持つ氷魔術の天才でしたの!!」
母さんが目をキラキラさせながら答える。
口調がいつもと違う。
なんというか育ちの良さげさがにじみ出ている。
「弾、私のことも忘れないで……」
姉貴があきれたようにこちらを見た。
「一応、魔界側の自己紹介をしとくね。 チィカ・シュルトン、王立学校の魔術科に在籍しているわ。これでも実技は学年トップ」
蛙の子は蛙なのかやっぱり頭がいいようだ。
そして、この俺はどんな魔力を持っているのだろうか。
父さんと同じように氷系でもいいし、対極の焔とかでも面白いかもしれない。
まだ知らなかった、自分の可能性に心が踊る。
そこに母さんが残念そうな顔をした。
「色々考えてるところに悪いわね、弾」
あなたは何の魔力を持たない、正真正銘の人間なのよ。
…………はい?
母さんは再度告げる。
「あなたは人間のよ」
はぁ………!!!?
俺の悲しみの叫びが家を揺らした