35話 幼女の風貌
学校忙しいです
それは、コーヒーをちょうど飲み終えた後。
リビングのドアの向こうから、その子は出てきた。
「――おー、似合ってるじゃん!」
思わず声が出てしまった、
少女がお風呂に入っていた時にどうやら明智さんが来たらしく、少女は華やかな服装でリビングへ戻ってきた。ボクの目の前にいるその少女はさっきまで見ていた少女とはまるで別人のように変化している。
明智さんは昔自分が着ていた服を懐かしむような表情で少女を眺めている。おそらく、今日まで捨てずに家に置いてきたくらい大切な服をこの子にあげるかどうかはかなり迷っただろう。でもこうして持ってきてくれて、そして今のこの子がいる。本当に明智さんには感謝だ。
シゲ盛くんは何故かずっと頭をさすっている。何か頭に当たったのだろうか。
「ふふふーん……ふーん!」
どうやら少女も嬉しそうだ。服をヒラヒラさせながらニコニコしている。
公園では髪も服もボロボロだった少女は、お風呂に入るととても可愛いロリっ子に変身していた、と表現すれば良いのだろうか。
桜と蒼のグラデーションの長い髪を下げ、純白の白いワンピースに身を包んでいる。こちらを見つめる紫眼はとても大きく、そしてとても純粋だ。
どれくらい可愛いのかと言うと、シゲ盛くんが只今鼻血を出しているレベルということだ。
「あと2着はここに置いとくね。この服がこんなに似合ってるんだから、残りの2着もきっと似合うと思う」
本当に明智さんはどこまでも完璧だ。残りの2着の服をササッと畳みながらシゲ盛くんの顔にティッシュケースを押し付けている。隅々まで注意が回っていて、なおかつ手際がいい。まるでメイドさんのようだ。
「――んあ、もぉこんぁじかぁじゃねぇか!」
鼻にティッシュを詰めているせいでナ行とンが言えないシゲ盛くんがスマホを見て驚いている。うん、主格が長い。
ボクもつられてスマホを見る。21時40分、もうこんな時間か、全然気づかなかった。シゲ盛くんが慌てているのは、確か前に言っていた『魔獣狩り』に遅れてしまうからだろうか。毎日あのナイフを振って魔獣を退治するらしい。本当に毎日お疲れ様だ。
「まぅだぁー、てぃっしゅけーすかりるぞぉ」
「――いや、ちょっと待って」
だが明智さんが、ティッシュケースの箱を持って部屋を出ようとしていたシゲ盛くんの腕を掴んだ。明智さんを見ると、シゲ盛くんの腕を片手で掴みながらスマホを見ている。
「おいぃ、どぉ……したんだ?」
シゲ盛くんの鼻から勢いよくティッシュが抜けた。少女は「おぉぉぉ!」と言って目を大きく開いて落ちたティッシュをじっと見ている。
シゲ盛くんはそのティッシュを拾い、テレビの横にあるゴミ箱にスリーポイントシュートを決めた。
しばらくすると、明智さんがスマホをポケットにしまった。
「うん、来たわね」
そう言いながら、明智さんは玄関の方へ歩いていった。
――ピンポーン
その後に鳴ったインターホンの音と同時に入ってきたその老人は、どこか貫禄があり、ニコニコとしていた。
てか、誰この人……?
短くてすまん、その代わり頻度だけは上げたいです




